ビジネスインパクト分析(BIA)とは?分析方法やBCPとの関係を紹介

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

ビジネスインパクト分析(BIA)とは、緊急事態で業務が停止した際、事業にもたらす影響の度合いを検討する方法です。この記事では、その分析方法や重要なポイントについて解説します。事業継続計画(BCP)との関係にも注目しましょう。

ビジネスインパクト分析(BIA)とは

はじめに、ビジネスインパクト分析(BIA)の概要を説明します。これは、地震や台風などの災害が業務に与える影響を分析する方法として用いられます。基礎知識に加え、目的や分析手法も確認しましょう。

ビジネスインパクト分析(BIA)の基礎知識

BIAは「Business Impact  Analysis」の略で、日本語では「ビジネスインパクト分析」と訳されます。災害など不測の事態によって業務やシステムが停止した場合に、会社の事業に与える影響度を評価することを指します。

具体的な分析の対象は、各業務の優先順位や、業務に必要な資源の量です。BIAの結果から業務に優先順位をつけ、中核となる事業に経営資源を集中させ、復旧させるという流れを踏みます。

ビジネスインパクト分析(BIA)の目的

BIAの最終的な目的は、事業継続計画(BCP)の策定に役立てることです。BCPとは、緊急事態が発生した際に事業を復旧させ、継続するための計画です。

BIAの実践を通じて、業務の優先順位や必要な資源が把握できれば、BCPを策定する際の参考にできます。つまり、BIAとは緊急時に必要なデータを集計する分析の手段です。分析結果をBCP策定に活用すると理想的でしょう。

ビジネスインパクト分析(BIA)の考え方

BIAを用いた分析には、「評価基準」と「時間軸」の概念が存在します。

「評価基準」では、従業員の安全や会社イメージの維持など、複数の基準からリスクが業務にもたらす影響を評価します。それをもとに、影響力が大きく優先順位の高い業務を見出し、対策を練る分析方法がBIAです。

一方の「時間軸」には、それぞれ別の基準である最大許容停止時間と目標復旧時間、この2つが内包されています。「時間軸」の詳しい内容は後述します。

ビジネスインパクト分析(BIA)の方法

BIAの具体的な実践方法を紹介します。自社事業に影響を与えうるリスクの選定から、事業を止めないための施策まで、4つに分けて解説します。各段階で重要なポイントを参考にしてください。

リスクの洗い出し

起こりうるリスクをすべて洗い出す作業から始めましょう。

業務の停止を引き起こす要因としては、災害だけでなく、感染症やサイバー攻撃も想定されます。事業所が置かれている環境を踏まえて、とくに発生確率が高く脅威となりそうなリスクを選定しましょう。

また、業務に対するリスクか環境面におけるリスクかの分類が重要です。これは、従業員や社内システムへの影響、近隣の道路やライフラインへの影響などに応じて、対応策が変わるためです。

中核事業の選定

自社の中核となる事業を選定します。

中核事業とは、緊急時において復旧の優先順位がもっとも高い事業です。緊急時に各業務が停止した場合を想定し、事業にもたらす影響の大きさを分析します。業務停止の影響がもっとも大きい事業を中核事業として復旧を最優先させる前提で対策します。

また、中核事業の選定に際しては、取引先や顧客などのステークホルダーに与える影響も考慮しましょう。事業とステークホルダーの関係を踏まえて判断すると、自社の中核事業が分かりやすくなります。

中核事業に必要な構成業務の把握

中核事業の推進に欠かせない業務を把握しましょう。

中核事業を進める際には複数の工程が存在し、とりわけ重要な役割を担う業務が存在します。その重要な業務を列挙して、緊急事態時に業務が停止した場合、講じる代替策を事前に用意します。

とくに設備の点検業務や取引先との連絡業務は、緊急時に不可欠な業務です。

事業継続のための施策

事業継続のための施策を立案しましょう。

中核事業に対して必要な資源を供給できれば、一時的に事業が止まったとしても、復旧や継続を果たせます。資源は下記の4種類に分類できます。

  • 業務遂行に必要な人的資源
  • 原材料や機械装置などの物的資源
  • 復旧や事業継続に用いる資金
  • 業務マニュアルやデータなどの情報資源

加えて、BCPに沿って事業継続の施策を実施すると効果が増すでしょう。

ビジネスインパクト分析の時間軸

この章では、BIAで用いられる「時間軸」の概要を解説します。BIAは評価基準と時間軸という2つの概念を持ちます。時間軸では、最大許容停止時間(MTPD)と目標復旧時間(RTO)の設定や活用が重要です。

BIAの「時間軸」

BIAにおける「時間軸」の概念は、業務停止の復旧を計画するうえで欠かせない存在です。

復旧にかかる時間の予測が重要で、時間軸を意識したBIAに欠かせません。取引先や顧客などのステークホルダーに対して、災害復旧の目処を伝えられれば、企業としての信頼を保つことができるでしょう。

BCPにも時間軸に沿った計画や施策を盛り込むとより効果的です。

MTPD|最大許容停止時間

ここからは、「時間軸」の細かな内容を解説します。

まず、最大許容停止時間(MTPD)です。MTPDとは、緊急時に業務が停止した際、企業が業務停止を許容できる限度の時間です。重要な業務のMTPDは短く設定し、優先順位の低い業務では長めに設定しましょう。

また、顧客と取引先の都合や、社会的な役割の大きさが、MTPDの設定基準にあたります。自社の都合だけでなく、周囲に与える影響も踏まえたMTPDの設定が欠かせません。

RTO|目標復旧時間

次に、目標復旧時間(RTO)です。RTOとは、業務停止から復旧に要する時間の目標を表す数値です。

復旧までの許容限度を表す前述のMTPDよりも、短い時間を設定するという特徴があります。RTOを設定する際は秒、分、時間から週間まで、時間の単位で設定します。

また、MTPDと同様に、こちらもステークホルダーの意向を踏まえた目標設定が求められるでしょう。RTOの数値が各業務で明確に定まっていれば、BCPの策定が容易になります。

BCPに活かせるBIAのポイント

BIAは、事業継続計画(BCP)の策定に役立てられます。BCPの策定にBIAを活用する際、ポイントとなるのは7点です。下記の内容を参考にし、BCPを策定しましょう。

BCPにMTPDとRTOを組み込む

最大許容停止時間(MTPD)と目標復旧時間(RTO)をBCPに組み込めば効果的です。BCPは事業継続を目的とした計画であり、業務停止の許容時間や復旧までの目標時間は重要で役立つデータです。

各業務のMTPDとRTOを算出すれば、それぞれの優先順位や必要な資源が把握できます。得られたデータをBCPに盛り込むことで、業務停止から復旧までの具体的な見通しを事前に立てられます。

優先事項を決める

優先事項を明確にすれば、緊急時でもスムーズな初動が可能です。

とくに災害発生時は、設備破損や連絡の遮断などさまざまな問題が起こり、限られた資源しか使用できない状況に置かれます。事業の中心を担う業務が数多く存在するなかで、最優先となる重要業務をあらかじめ特定すれば、復旧作業に集中して取り組めるでしょう。

なお、優先させる業務の特定には、取引先や顧客への影響を踏まえた分析が必要です。

災害時の状況を数値で評価する

災害時に生じる影響を数値で表して評価する方法もおすすめです。

定量的な評価は印象に残りやすく、複数の物事を順位づけする際に向いています。具体的には、業務停止を通じて喪失するであろう売上額や、復旧作業に要する費用などが挙げられます。会社の経営数値を想定すると分かりやすいでしょう。数値での順位づけを実践すると、各業務の優先度を策定する際の参考にできます。

また、予算や備蓄の必要量も明確化でき、BCP策定の手助けとして利用が可能です。

リスク評価と代替手段を検討する

業務停止によるリスク評価と代替手段の検討は、有効な分析手法として利用できます。

業務停止のリスクについては、取引先や顧客の視点に立ったうえでの検討が重要です。たとえば、原材料の生産や納品が停止した際は、取引先で生じる不都合を想像してみましょう。

また、停止した業務の代替案を事前に策定していれば、リスクを軽減させられるでしょう。緊急時に不足が想定される資源をBIAで定めれば、代替案の策定に役立ちます。

拠点の耐震性と管理状況を確認する

緊急時に備え、事業所の耐震性や管理状況などを点検しましょう。金庫や設備など事業運営上の資源は、多くの場合、事務所や工場の建物内で保管されます。倒壊による破損のリスクを踏まえると、建物の耐震性は重要です。

同時に、電気やガスなどのインフラが停止した際、業務が受ける影響についても分析しましょう。代替手段がなく通常の電気やガス供給だけに頼っている場合、緊急時に業務が滞り、事業停止につながる危険性があります。このような事業所管理の見直しは、防災対策に直結するでしょう。

復旧時間の目標を設定する

RTOを用いた分析で復旧時間の目標が定まると、BCPの策定に役立ちます。各業務に対してBIAを実施する際には、「時間軸」の視点からRTOを算出しましょう。

緊急時に業務が停止すると、取引先への納品や支払いに遅延が生じるかもしれません。これは企業間の契約や信頼にかかわる問題であるため、RTOは可能な限り早い時間での設定がおすすめです。

RTOの具体的な時間を決めたら、目標達成に必要な事業所環境や業務体制を検討しましょう。

復旧リソースを算出する

復旧に必要なリソース(資源)の量をあらかじめ計算しておきましょう。

緊急時には限られたリソースで業務の復旧を目指すため、優先度の高い業務に対し、適切な資源を投入しなければなりません。人的資源、物的資源、資金など特徴の異なるリソースを分配する方法や、新たに調達する方法まで考慮すると、適切なBCPの策定が可能です。

リソースが足りない場合は、さらなる代替手段を用意しておくと素早い復旧が期待できます。日頃から事業所内のリソース量や在庫数を管理しておきましょう。

ビジネスインパクト分析でリスクに備えよう

今回の記事では、ビジネスインパクト分析(BIA)の概要や活用方法を紹介しました。BIAを実施すると事業停止のリスクが明確になり、適切な防災対策につながります。BCPの策定とあわせて、万全なリスク対策を目指しましょう。

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