【図解】BCP策定6つの手順|注意点をステップごとに解説

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坂田 健太(さかた けんた) トヨクモ株式会社

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す。対策が不十分だった場合、事業継続が困難となり、最悪の場合事業収縮や倒産につながることもあります。損害を最小限に抑えるために、必要なのがBCP(事業継続計画)です。

この記事ではBCP関連のセミナーに多く登壇し、BCPの啓蒙や策定のサポートを行うトヨクモ株式会社 防災士の坂田が「BCP策定の手順」を詳しく解説します。

BCPの概要やポイントを網羅し、策定手順をステップごとにご紹介しますので、BCPに詳しくない方でも、BCPの全体像や具体的なアクションがご理解いただけると思います。

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そもそもBCP策定とは

BCP(事業継続計画)とは、災害や感染症、テロ攻撃などの緊急事態に備え、企業が事業を継続、または早期復旧するために定める計画です。被害を最小限に抑え、重要な業務を止めないために、平常時の備えと発生後の対応をあらかじめ整理します。

BCP策定では、計画書を作るだけでなく、優先して守る事業、対応体制、連絡方法、復旧までの流れを決めます。策定時には、主に以下の目的を実現するための方法や手段を整理します。

  • 事業資産への損害を最小限に留める
  • 自社における中核事業の継続あるいは早期復旧を可能にする

BCP策定は、緊急時に優先する事業と対応手順を決めること

BCP策定でまず必要なのは、緊急時に優先する業務を明確にすることです。すべての業務を平常時と同じように続けることは現実的ではありません。企業活動への影響が大きい中核事業を特定し、復旧の優先順位や対応手順を決めておきます。

災害発生直後には、従業員の安否確認、被害状況の把握、取引先や顧客への連絡、代替手段による業務継続などが必要になります。BCPでは、これらの対応をその場の判断に任せるのではなく、事前に役割と流れを整理します。

BCPは策定して終わりではなく、訓練・見直しまで含めて運用する

BCPは、策定後も継続的に見直す必要があります。計画を作成しても、従業員が内容を理解していない、連絡手段が使えない、責任者が不在の場合の代替対応が決まっていないといった状態では、災害時に機能しません。

策定後は定期的な訓練や見直しを行い、実際に使える状態を保つことが重要です。組織体制、拠点、取引先、システム環境が変われば、必要な対応も変わります。BCPは保管しておく計画書ではなく、緊急時に事業を継続するために更新し続ける仕組みとして運用します。

BCP策定が必要な理由

BCP策定への関心が高まっている背景には、東日本大震災や令和6年能登半島地震、新型コロナウイルス感染症の拡大など、企業活動に大きな影響を与えた出来事があります。南海トラフ地震や首都直下地震など、今後想定される大規模災害への備えも無視できません。

国も中小企業の事業継続力を高めるため、BCP策定を推進しています。災害や感染症で事業が止まれば、売上の減少だけでなく、取引先や顧客からの信頼低下にもつながります。特に経営基盤が限られる中小企業では、一時的な停止が経営に深刻な影響を与える可能性があります。

BCP策定が必要とされる主な理由は、以下の3つです。

1.災害時に初動対応を遅らせないため

災害や感染症が発生した直後は、従業員の安否確認、被害状況の把握、社内外への連絡など、短時間で判断すべきことが一気に発生します。対応手順が決まっていないと、誰が何を確認するのかが曖昧になり、初動が遅れます。

BCPでは、責任者、連絡手段、確認すべき情報、判断の流れをあらかじめ決めておきます。初動対応の遅れを防げれば、被害拡大を抑え、復旧に向けた判断もしやすくなります。

2.中核事業の停止リスクを抑えるため

災害時に、すべての業務を平常時と同じように続けることは困難です。限られた人員、設備、資金をどこに集中するかを判断するには、企業活動への影響が大きい中核事業を事前に特定しておく必要があります。

中核事業や復旧の優先順位が決まっていないと、重要度の低い業務に対応が分散し、本来守るべき事業の復旧が遅れるおそれがあります。BCP策定では、停止時の影響が大きい業務を洗い出し、復旧目標や代替手段まで含めて決めておきます。

3.従業員・顧客・取引先への対応を明確にするため

緊急時には、社内対応だけでなく、従業員、顧客、取引先への連絡や説明も求められます。従業員の安全確認が遅れたり、取引先への連絡が不十分だったりすると、復旧の遅れだけでなく、その後の信頼関係にも影響します。

BCPを策定しておけば、安否確認の方法、社内外への連絡手順、顧客や取引先へ共有する内容を事前に決められます。対応を担当者個人の判断に任せず、組織として動ける状態を作ることが、BCP策定の目的です。

BCP策定前に整理しておくべき項目

BCP策定を進める前に、優先する事業、復旧までの目標時間、緊急時の対応体制を明確にしておく必要があります。ここが曖昧なまま計画を作ると、内容が一般論にとどまり、実際の災害時に使いにくいBCPになります。

ここでは、策定前に確認しておきたい主な項目を紹介します。

優先して継続・復旧する中核事業

まず確認するのは、自社にとって優先して継続・復旧すべき中核事業です。すべての業務を同じ優先度で守ろうとすると、人員や設備、資金が分散し、本来優先すべき業務への対応が遅れます。

売上への影響、顧客や取引先への影響、社会的な責任、法令上の対応などを踏まえ、災害時にも止められない業務や、早期復旧が求められる業務を洗い出します。

目標復旧時間と対応優先度

中核事業を決めたら、どの業務をどの程度の時間で復旧させるかを検討します。目標復旧時間を設定しておくと、発災後に優先すべき対応を判断しやすくなります。

ただし、理想だけで復旧時間を決めると、実際の対応とズレが生じます。必要な人員、設備、システム、取引先との関係を踏まえ、実現可能な復旧目標と対応優先度を設定します。

従業員の安否確認と緊急連絡体制

災害時の初動対応では、従業員の安否確認と緊急連絡体制が欠かせません。従業員の状況を把握できなければ、出社可否や業務再開の判断、被害状況の確認も進めにくくなります。

誰が安否確認を行うのか、どの連絡手段を使うのか、回答をどのように集計するのかを事前に決めておきます。電話やメールだけに頼ると、連絡の遅れや集計漏れが起きやすいため、複数の連絡手段を想定しておくことも必要です。

代替拠点・代替手段・必要な備蓄

通常の拠点、設備、システムが使えなくなった場合に備え、業務を継続するための代替手段を用意しておきます。たとえば、別拠点での業務継続、在宅勤務への切り替え、代替システムの利用、協力会社への依頼などが考えられます。

あわせて、非常用電源、通信手段、備蓄品、重要書類やデータのバックアップも確認します。BCP策定では、被害を想定するだけでなく、被害が発生した後も業務を続けるための資源まで具体化しておきます。

策定後の訓練・見直し方法

BCPは、策定後の訓練や見直しによって実効性が高まります。計画を作っても、従業員が内容を知らない、連絡手段が使えない、責任者不在時の対応が決まっていない状態では、災害時に機能しません。

策定段階から、訓練の実施方法や見直しのタイミングも決めておきます。安否確認訓練、初動対応訓練、机上訓練などを定期的に行い、組織体制や事業環境の変化に合わせて内容を更新します。

BCP策定の6つの手順

では、BCPはどのような流れで策定すればよいのでしょうか。ここでは、BCP策定の手順を6つのステップで解説します。

【BCP策定の手順】

  • ステップ1. 基本方針を策定する
  • ステップ2. 運用体制を決定する
  • ステップ3. 中核事業と復旧目標を設定する
  • ステップ4. 想定リスクと事前対策を整理する
  • ステップ5. 緊急時の対応の流れを決めておく
  • ステップ6. 定期的に訓練を行い、ブラッシュアップする

ステップ1. 基本方針を策定する

はじめに、BCPを策定する目的を決めます。

目的が定まらないまま計画を作ると、優先すべき事業や対応方針がぼやけ、実際の運用に使いにくい内容になります。BCPでは、何を守るのか、どの事業を優先するのか、どのような状態を目指すのかを最初に明確にします。

多くの企業に共通する目的は、「緊急事態でも事業を継続できる体制を整え、ステークホルダーに価値を提供し続けること」です。事業継続を第一の目的に置きつつ、自社の経営方針や事業特性と照らし合わせて、基本方針を決定します。

ステップ2. 運用体制を決定する

目的を決めたら、BCPを誰が主導し、どのように社内へ展開するかを決めます。押さえたいのは、以下の2点です。

  • 経営層が率先して関わる
  • 会社規模に合った運用体制を作る

まず、経営層の関与は欠かせません。BCPは経営に直接関わるテーマであり、現場だけで実効性のある計画を作るのは困難です。事業の優先順位、資金、人員配置、取引先対応まで含めて判断するため、策定段階から経営層が関わる必要があります。

次に、自社の規模に合った体制を作ります。大企業であれば、各部署から担当者を選抜し、BCP推進チームを立ち上げる方法があります。部署を横断して連携できれば、BCPに関する情報を全社に浸透させやすくなります。

一方、中小企業では、情報が比較的全従業員に行き渡りやすいため、必要最低限の担当者で進められる場合もあります。必要以上に人を集めたり、運用に適さない人選をしたりすると、かえって進めにくくなります。周知や運用のしやすさまで考え、自社に合った体制を構築します。

ステップ3. 中核事業と復旧目標を設定する

BCPにおける中核事業とは、会社の存続に関わる重要性、または緊急性の高い事業を指します。緊急事態が発生したときに、最優先で継続・復旧させるべき事業です。

このステップでは、「自社の中核事業は何か」「どの事業を優先的に復旧させるべきか」「どの水準まで復旧させる必要があるのか」を明確にします。

中核事業を決める際は、売上への影響が大きな判断材料になります。企業として利益を確保できなければ、従業員、株主、取引先などのステークホルダーにも影響が及びます。まずは利益を確保する観点から、優先して復旧すべき事業を見極めます。

中核事業の選定には、「ビジネスインパクト分析」を活用できます。ビジネスインパクト分析とは、各事業が中断した場合に社内外へ与える影響の大きさをもとに、重要度や復旧の優先度を判断する方法です。売上への影響だけでなく、社会的重要性、顧客や取引先への影響、代替手段の有無などを総合的に評価し、中核事業を選定します。

※影響が小さい:1〜5:影響が大きい

あわせて、目標復旧時間も設定します。目標復旧時間とは、「いつまでに、どの程度の水準まで事業を復旧するか」を示す指標です。復旧対応の優先順位を決める基準になります。

中核事業の運営に必要な経営資源を洗い出し、業務フローを分解しながら、どの業務をいつまでに復旧させる必要があるのかを具体的な日数まで落とし込みます。

※目標復旧時間の考え方を詳しく確認したい場合は、「BCPに欠かせない目標復旧時間(RTO)とは?RPO・RLOとの違いも解説」も参考にしてください。

以下は、目標復旧時間の設定例です。自社の事業内容、顧客への影響、必要な人員・設備などを踏まえ、優先すべき対応と復旧までの目安を設定します。

ステップ4. 想定リスクと事前対策を整理する

次に、想定されるリスクと、発生時に備えて取るべき対策を整理します。

BCPでは、復旧にどの程度の費用がかかるか、会社のキャッシュで対応できるか、不足する場合にどこから資金を調達するかといった財務面の確認も欠かせません。復旧費用を見積もり、必要な資金を確保する方法を検討しておきます。

あわせて、資金や物資、代替手段の調達先も明確にします。計画だけ立てても、緊急時に調達先が決まっていなければ、対応が遅れ、復旧にも影響します。平常時から金融機関、取引先、協力会社などと連携し、必要な資源を確保できる体制を整えます。

また、BCPでは複数のリスクを想定します。代表的なリスクには、以下のようなものがあります。

  • 地震・津波
  • 台風・豪雨被害
  • 感染症
  • 人的災害

リスクごとに、BCPを発動する基準も決めておきます。たとえば、地震であれば震度5弱以上、津波や台風、豪雨であれば注意報・警報の発令、人的災害であれば社内への不審者侵入などが基準になります。

発動基準を事前に決めておくと、社内の認識が揃い、初動対応に移りやすくなります。どの程度の被害を想定するのか、どの範囲まで対応するのか、どのような流れで行動するのかを、リスクごとに決めておきます。

※BCPを発動する基準の決め方については、「BCPを発動する条件とは?基準や発動フローを紹介」でも詳しく解説しています。

ステップ5. 緊急時の対応の流れを決めておく

BCP策定で重要なのは、緊急事態が起きたときに迷わず動ける状態にしておくことです。そのため、発生後の対応の流れをあらかじめ決めておきます。

緊急時の対応は、主に以下の流れで進めます。

  1. 初動対応
  2. 緊急対応
  3. 復旧対応

1. 初動対応

初動対応で行うのは、被害状況の確認です。従業員の安否、拠点や設備の被害、事業への影響を確認します。けがをした従業員がいる場合は、個別に対応します。

事業への被害が確認された場合は、関係者への連絡や関連資料の収集を行い、次の対応を判断します。初動が遅れると、その後の緊急対応や復旧対応にも影響するため、誰が何を確認するのかを事前に決めておきます。

2. 緊急対応

次に、初動対応で集めた情報をもとに被害状況を集計し、事業の復旧計画を立てます。BCPに沿って対応しつつ、実際の被害に合わせて計画を調整します。

この段階では、どの事業を優先して復旧させるのか、どの拠点・人員・設備を使うのか、取引先や顧客にどう連絡するのかを判断します。

3. 復旧対応

最後に、復旧計画を従業員やステークホルダーに共有し、計画に沿って事業の復旧に取り組みます。業務再開の状況を確認しながら、必要に応じて計画を修正します。

従業員、顧客、取引先に対して、復旧見込みや対応状況を伝えることも必要です。復旧対応は、単に業務を再開するだけでなく、関係者との信頼関係を維持するための対応でもあります。

ステップ6. 定期的に訓練を行い、ブラッシュアップする

BCPは、策定後も継続的な見直しが必要です。計画を作っただけでは、内容が実際の対応に合わなかったり、従業員に十分浸透していなかったりすることがあります。社内にBCPを周知するためにも、緊急事態を想定した訓練を行い、その結果をもとに内容を改善していきます。

訓練は、最低でも1年に1回の実施を推奨します。9月1日の防災の日、阪神・淡路大震災が発生した1月17日、東日本大震災が発生した3月11日など、防災意識が高まりやすい日に実施する企業もあります。

訓練時には、目的を明確にしておきます。「安否確認の回答率・回答速度を上げる」「BCPに不足している内容がないか確認する」など、目的を持って取り組むことで、課題を見つけやすくなります。

想定する緊急事態は、できるだけ現実に近づけます。被害を小さく設定しすぎると、実際に同程度以上の事態が起きたときに対応できないおそれがあります。訓練を通して、「従業員の安否確認に時間がかかった」「施設の被害状況が伝わってこなかった」などの課題を把握し、災害時に機能するBCPへ更新していきます。

※訓練方法を具体的に知りたい場合は、「BCP訓練とは?すべき理由・種類・具体例から行う時のポイントまで」もあわせてご覧ください。

H2 BCP策定時に注意したい失敗例

BCPは、手順に沿って策定しても、内容が実際の対応に結びつかなければ機能しません。形式だけ整えた計画になっていたり、緊急時の連絡方法や役割分担が曖昧だったりすると、いざというときに判断や対応が遅れます。

失敗例注意するポイント
テンプレートを埋めただけで実行できない自社の事業内容、拠点、従業員体制、取引先への影響まで反映する
安否確認や緊急連絡の方法が曖昧になっている誰が、どの手段で、どの順番で連絡し、回答をどう集計するかを決める
復旧目標が現実的でない必要な人員、設備、システム、資金を踏まえて復旧時間を設定する
部署ごとの役割や代行者が決まっていない責任者だけでなく、代行者や判断権限の範囲も決めておく
訓練・見直しを行わず形骸化する安否確認訓練や初動対応訓練を行い、課題をBCPに反映する

テンプレートを埋めるだけでは、災害時に使えるBCPにはなりません。中核事業、復旧目標、安否確認、役割分担、訓練方法まで自社の実態に合わせて具体化しておかないと、実際の対応には使えません。

BCP策定で最も重視すべきポイント

BCPを策定する目的は、災害や感染症などが発生しても事業を継続し、企業を守ることです。

事業継続には、ヒト、モノ、カネ、情報という4つの経営資源が欠かせません。なかでも最優先すべきなのは、事業を動かす人、つまり従業員です。

人の命より大切なものはありません。従業員が無事でなければ、事業を再開することも難しくなります。人が動ける状態だからこそ、資金の調達、情報収集、取引先への連絡、代替手段の検討も進められます。

災害発生直後に確認すべきなのは、従業員にけががないか、出社や業務対応が可能か、誰がいつから復旧対応に加われるかです。ここを把握できなければ、復旧計画も立てられません。

BCPは、見栄えのよい計画書を作るためのものではありません。安否確認、連絡体制、役割分担まで含めて、災害時に機能する体制として整えておきましょう。

※安否確認をBCPにどう組み込むかは、「BCP策定に重要な従業員の安否確認方法とは?具体例を解説」でも詳しく整理しています。

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執筆者:坂田 健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社

企業の防災対策・BCP策定を支援するメディア「トヨクモ防災タイムズ」を運営。防災・BCPの専門家として、セミナー講師や専門メディアでの記事執筆も行う。 主な執筆記事に「BCPって何? ~中小企業の経営者が知っておくべき基礎知識~」「他人事では済まされない! BCP未策定が招く経営危機と、”備える”ことの真の価値とは?」(ともにニッキン ONLINE PREMIUM)などがある。

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