BCPの策定率は?大企業と中小企業での違いや策定が進んでいない要因を解説
yoshimuraharuka
大企業におけるBCPの策定率は高く、BCPは浸透していると言えますが、中小企業では策定率が低く大企業ほど普及はしていません。中小企業でBCPの策定が進まない要因には、なにがあるのでしょうか。
今回の記事は、大企業と中小企業の策定率と状況について、データを参考に詳しく解説します。
目次
企業のBCPの策定率とは
内閣府が調べた「BCP策定状況」では、大企業と中小企業にはBCP策定率に大きな差があります。
2021年の結果によると、大企業の約70%が「策定済み」であり、中小企業は約40%のみが「策定済み」と回答しました。
加えて、大企業は「BCPとは何かを知らなかった」と回答した割合が約0.2%で、かなり少ないと言えます。対して、中小企業の約5%は「BCPとは何かを知らなかった」と回答していました。
参考:内閣府 令和4年度版 防災白書|大企業と中堅企業のBCP策定状況
BCPとは
BCPとは「事業継続計画(Business Continuity Planning)」の頭文字をとった略称であり、自然災害などの緊急事態発生時に、企業が速やかに事業を復旧できるようにする計画を指します。BCPでは、事業継続のために必要な手段、従業員への連絡方法、復旧目標時間、守るべき業務水準などを、詳細に決めておきます。
近年は、取引先との信頼関係向上のために、BCPを導入する企業が増えています。
たとえば、自然災害に限らず、何らかのトラブルで工場の生産が止まり取引先に商品を提供できないと、取引先は被害を被ってしまいます。もし、BCPを策定していなければ、対応に時間が掛かり、取引先により大きなダメージを与えるでしょう。
こうした要因から、企業のBCP策定は年々増加の傾向にあり、中小企業にもBCPの策定が必要となっています。
企業全体でのBCP策定率
国は、2020年までのBCP策定率の目標として、大企業は100%、中小企業は50%を掲げていました。
しかし、2021年時点で大企業は約70%、中小企業は約40%の策定率です。目標を達成するにはまだ時間がかかるでしょう。
中小企業での策定率が低い理由として、時間や人材の確保の難しさ、設備整備にかかるコストの問題が挙げられます。思い立ったときにすぐにBCPの策定に取り掛かれるわけではないため、策定が進みにくいと言えます。
参考:内閣府 令和4年度版 防災白書|大企業と中堅企業のBCP策定状況
大企業のBCP策定率の状況
本記事では、資本金10億円以上かつ、常用雇用者数が50人以上いる会社を大企業として扱います。
大企業のBCP策定率は、2021年の内閣府データでは「策定済み」が70.8%でした。また、「策定を予定している(検討中含む)」は11.0%という結果です。
中小企業に比べれば策定率は高いものの、すべての企業で策定ができている状態ではありません。
中小企業のBCP策定率の状況
中小企業のBCP策定率は、2021年の内閣府データでは、「策定済み」が40.2%でした。また、「策定を予定している(検討中含む)」は、28.2%という結果でした。
中小企業では策定率が50%を下回り、国の目標とする要求レベルに届いていません。
業種別のBCP策定率の状況
BCP策定率がもっとも高い業種は金融・保険業で、策定率は69.2%です。次が情報通信業の57.6%、次が建設業の55.1%となっています。
建設業は、2009年に関東地方整備局による「建設会社における、災害時の事業継続力認定制度」が導入されました。それにより、BCPの策定率が上昇したと考えられます。
また、BCPの策定率が高い業種は、調査において「策定したBCPを毎年必ず見直している」と答えた割合が高い傾向です。加えて、「策定したBCPはとても役に立った」と回答する割合も高く、BCPの有効性を実感している企業が多いと言えるでしょう。
参考:「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の概要
BCP策定における課題
BCPを策定したいと考えていても、計画どおりに進まないという事態に陥る可能性があります。
過去の事例をもとにすると、いくつかの課題が見えてきます。ここからは、BCP策定における課題を3つ紹介します。BCP策定を検討している担当者の方は、BCPの課題について、事前に把握しておきましょう。
策定のためのスキルやノウハウの不足
BCP策定に必要なスキルやノウハウがなく、策定に踏み切れない企業があるようです。
BCPが策定できていない要因として「スキルやノウハウ不足」を挙げる企業は、内閣府の調査結果で2割近くありました。
ノウハウがない場合は、内閣府が公表している「事業継続ガイドライン」を参考にしながら作成する、または外部の専門家に依頼するなどの方法で進めましょう。
費用や人的資源の確保が難しい
BCPを策定する際、防災器具の購入やシステムの導入などに費用がかかります。専門家に依頼する際も依頼料がかかり、敷居が高く感じられるかもしれません。策定にかかる費用は、中小企業にとって大きな負担となるでしょう。
また、内閣府の調査結果において、BCPの策定が進んでいない理由として多いものは以下でした。
- 部署間の連携が難しい
- 現場の意識が低い
- 人手を確保できない
- 社員間の理解不足
大企業と比べて中小企業は少数精鋭で業務を回しているところが多く、BCP策定に必要なマンパワーが不足しています。
そういった場合は、もっとも重要とする中核事業に絞ってBCPを策定するなど、部分的にでもいいのでまずは進めてみることが大事です。
外部要因による災害は想定しにくく、BCPの策定が難しい
外部要因による被害やリスクは、予想が難しいとされています。とくに、自然災害による被害やライフラインへの影響を完璧に想定することは不可能です。
事前にできる対策として、無線や安否確認システムなどの強力な通信手段を構築することが挙げられます。データをはじめとした重要な情報はバックアップ体制を整えましょう。そのほか、輸送手段は代替手段を用意しておくことも大切です。
参考:大和総研:事業継続計画における課題と対応策
達した場合、大きな被害が出る可能性があります。
危険な場所から離れて身を守りましょう。
緊急時に起こりうるリスク
起こりうるリスクは、自然災害だけではありません。以下で、企業に影響を与えるリスクを紹介します。
- 自然災害
- 事故(火災、設備の故障など)
- 感染症
- 情報漏洩
- オペレーション
- 不正・内部統制
- 労働安全衛生取引先の被災
- インフラの破壊
自然災害にもさまざまなリスクが存在します。それぞれのリスクごとに個別に対策が必要です。
企業が優先すべき事業に影響を与える可能性が高いものから対処していきましょう。
BCPを速やかに策定するには
BCPの策定を速やかに行うには、手順の確認が必要です。
ここからは、BCPを速やかに策定する上でのポイントを紹介します。
BCPの策定手順に従い計画する
BCPは、まずは完成させることが重要です。最初から完璧なものは目指さず、策定手順にしたがって作成するところから始めましょう。
基本的な策定の手順は以下のとおりです。
- BCP作成の基本方針や目的を決定する
- 自社の中核事業を考える
- 起こりうるリスクを洗い出す
- 企業が被る損失を予測する
- リスクに対する対応策を考える
まずは、BCPがどのようなときに必要とされるのかという、基本方針について決定します。続いて、自社における事業の中心となる中核事業を明確にしましょう。その後、予想されるリスクをリストアップし、リスクに優先順位を付けます。
リスクの洗い出しができれば、企業が被る損失を予測し、キャッシュフローについて考えます。このとき、足りない部分についてはどこから資金調達をするのかという点まで考えておくことが重要です。
最後に、優先順位の高いものから順に、対応策の詳細部分について策定しましょう。
大災害に備える(BCP・BCMの概要が詳細にまとまっている資料)
自社に適したBCPを策定する
自社に合わせたBCPの策定を進めましょう。
BCPを策定する際、ガイドラインやテンプレート、他社のBCPなどが参考になります。ウェブ上で無料で公開されているものも多いため、自社の規模や業務内容に合ったものを探し、BCPを作成しましょう。
国や既存の企業BCPデータを参考にする
国は、BCPの策定率を向上させるために、さまざまなデータや資料を公開しています。BCPのガイドライン、テンプレート、訓練のシナリオ、研修の動画なども配布しています。
BCPの策定に悩んだときは、国や他企業が公開するデータをもとにして作成を進めてください。
全社レベルで訓練を行う
BCPを策定したあとは、訓練や教育が必要です。災害訓練をして、社員全員にBCPを定着させましょう。
訓練をすることで、被災時にも慌てず行動や対応ができるようになります。
BCPの策定率の実態を知り、地震や緊急事態に備えよう!
BCPの策定率は大企業で約7割、中小企業で約4割しかありません。中小企業がBCPを策定するには、人手やコストの確保などの課題が挙げられます。
しかし、緊急事態はいつ起きるかは分かりません。
早急にBCPの取り組みを行うことが従業員をリスクから守ることに繋がります。
そのためには、まずはBCPを作成してみることが大切です。テンプレートや策定方法なども別記事で解説をしてるので参考にしてください。