リスクカルチャーとは?重要性や醸成手順をわかりやすく解説

トヨクモ防災タイムズ編集部
企業経営において「リスク管理」の重要性は広く認識されていますが、形式的なルールや手順を整備するだけでは、真の効果を発揮することは困難です。変化が激しく予測困難な現代において、組織全体にリスクに対する適切な向き合い方が根付いた「リスクカルチャー」を醸成することが、企業の持続的な成長と安定のために不可欠となっています。
「リスクカルチャーとは具体的にどのようなものか?」
「なぜ重要なのか?」
「どうすれば自社に根付かせることができるのか?」
この記事では、こうした疑問を持つ経営者や管理職、リスク管理・人事・総務部門の担当者の方に向けて、リスクカルチャーの基本的な意味から、その重要性、そして企業内で効果的に醸成するための具体的な手順(4ステップ)とポイントを分かりやすく解説します。
健全なリスクカルチャーは、平時の健全な企業運営はもちろん、災害時などの緊急連絡や初動対応の迅速化にもつながります。その基盤となる従業員の安否確認体制についても触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
なお、トヨクモの『安否確認サービス2』は、BCP(事業継続計画)を支える確実なコミュニケーション手段を提供します。
目次
リスクカルチャーとは
リスクカルチャーとは、企業や組織全体として、リスクに対してどのように考え、判断し、行動するかという共通の価値観や姿勢、行動様式のことです。これは、明文化されたルールやマニュアルではなく、従業員一人ひとりの日々の意思決定や行動に無意識のうちに影響を与える、組織文化(企業風土)の重要な一部です。
たとえば、新しい技術を導入する場合、「まずは小規模に試して様子を見よう」と慎重に考える会社もあれば「他社より先に導入して市場のシェアを獲得しよう」という積極的な考えを持つ会社もあります。この違いが、それぞれの会社のリスクカルチャーを表しています。
また、日常業務でもリスクカルチャーの違いは見えてきます。ミスが発生した際に「すぐに報告すれば皆で解決策を考えられる」という環境の会社もあれば「ミスを報告すると叱責される」という雰囲気の会社もあります。前者は健全なリスクカルチャー、後者は問題のあるリスクカルチャーといえます。
リスクカルチャーを醸成する重要性
リスクカルチャーを醸成することは、以下の点から企業にとって非常に重要です。
- 不祥事や事故を防止できる
- 企業価値が向上する
重要な2つのポイントについて解説します。
不祥事や事故の防止につながる
健全なリスクカルチャーが根付いた組織では、社員が問題を早期に発見し、すぐに報告できる環境が整っています。「小さな異変も見逃さない」「気になることはすぐに共有する」という姿勢が身についており、問題が大きくなる前に対処できます。
また、現場レベルでの判断も適切になります。たとえば、納期に追われる状況でも、品質や安全を犠牲にするような判断をしなくなります。効率やコストよりも、安全性やコンプライアンスを優先する判断ができるからです。
企業価値の向上に寄与する
リスクカルチャーが醸成されている企業では、単にリスクを避けるだけでなく「どのリスクなら取るべきか」を判断する基準が組織内で共有されています。新規事業への挑戦など適切にリスクを取れるため、企業の新たな成長機会の創出につながります。
また、リスク管理が適切に行われている場合は、危機発生時の対応力も向上します。長期的な成長が期待できるとして、投資家や取引先からの信頼も高まり、株価や企業評価にプラスの影響を与えることもあります。
健全なリスクカルチャーを醸成する4つの要素
金融安定理事会の「リスク文化に関する金融機関と監督当局の相互作用に関するガイダンス ー リスク文化の評価の枠組み ー」をもとに、健全なリスクカルチャーを醸成する要素について説明します。
経営トップの基本理念
健全なリスクカルチャーを醸成するには、経営トップが組織が目指すリスクへの取り組み方について明確な考えを持ち、社内に伝えることが大切です。単に言葉で伝えるだけでなく、自らの正しい行動で示すことにより、組織全体に健全なリスク意識が浸透していきます。
健全なリスクカルチャーの醸成には経営トップの姿勢と行動が必須ですが、それだけでは十分ではありません。持続的な変化をもたらすためには、部長や課長などのミドル層の姿勢と行動も同様に重要です。ミドル層の管理職は、経営層が示したリスクカルチャーを現場に伝え、組織の下層へと浸透させる重要な役割を担います。
説明責任
説明責任とは、責任の所在を明確にし、従業員が自らの行動に対する責任を負うことです。責任を負うのはリスクを保有している部門であり、上位者に報告したからといってほかの部門に責任が転嫁されるわけではありません。
各自が適切に説明責任を果たすには、内部告発手続きを整えておく必要があります。たとえば、報告によって報復を受けることを防ぐために、内部通報制度を設けることも効果的です。
効果的なコミュニケーションと異議申し立て
コミュニケーションの障壁をなくすことにより、リスクに関する情報が組織内をスムーズに流れやすくなり、問題を早く見つけて対応できるようになります。リスクに対してよりよい判断ができるようになり、組織全体のリスク管理の質の向上につながります。
そのためには、組織内で違う意見や疑問も発言しやすい環境づくりが大切です。意見の相違や疑問を安心して提起できる異議申し立ての仕組みを整え、その仕組みが実際に機能しているかを定期的に確認することが重要です。
インセンティブ(動機付け)
リスク管理の取り組みが適切に評価され、報酬や人事評価に反映される仕組みも、健全なリスクカルチャーを醸成する重要な要素です。従業員がリスク管理を適切に行う動機づけとなるように、適切にインセンティブを設定しましょう。
リスクカルチャーを醸成する手順
ここでは、リスクカルチャーを醸成する手順について解説します。
- 目指すべきリスクカルチャーを明確にする
- リスクカルチャーを可視化する
- 理想とのギャップを把握する
- ギャップ解消に向けた対策を講じる
①目指すべきリスクカルチャーを明確にする
リスクカルチャーの醸成では、自社が目指すべきリスクカルチャーを明確にすることが第一歩です。経営者の考え方やステークホルダーからの期待などを基に、目指すべきリスクカルチャーとはどのようなものか明確にします。
目指すべきリスクカルチャーの明確化には、経営トップへのインタビューが有効です。最悪の事態とは何かやどのようなリスクは絶対に取らないのか、どの程度のリスクなら積極的に取るのかといった点を言語化しましょう。
②リスクカルチャーを可視化する
目指すべきリスクカルチャーを明確にしたら、次はリスクカルチャーの現状を把握します。リスクカルチャーの調査やインタビューを通じて、現状を可視化しましょう。
たとえば、従業員に対して「上司に対してどのような問題でも気軽に質問できるか」や「チーム内のコミュニケーションは良好だと感じているか」といった質問を含むアンケートを実施することにより、リスクカルチャーの現状を把握できます。
③理想とのギャップを把握する
自社にとって望ましいリスクカルチャーを目指すためには、現状とのギャップを特定し、ギャップができている原因を解決する必要があります。目指すべきリスクカルチャーと現状のリスクカルチャーを比較し、どの部分にどのような課題があるのか把握しましょう。
④ギャップ解消に向けた対策を講じる
ギャップができている原因を把握したら、ギャップ解消に向けた対策を検討し、実行します。たとえば、社員がリスクカルチャーにあまり関心を示していない場合、改善のための評価基準を設けることが効果的です。評価基準が人事評価に反映されることを社員に伝えることにより、リスクカルチャーへの意識を高められるでしょう。
リスクカルチャーを醸成するには、一度対策を講じるだけでは不十分です。施策の効果を検証して、継続的に改善していく必要があります。
リスクカルチャーを醸成する際のポイント
現場の担当者とリスクカルチャーについて話し合う際には、できるだけ対面で行うことがおすすめです。対面でのコミュニケーションは、表面的な回答だけでは見えない本音や、想定外の問題点を発見するきっかけになります。また、信頼関係を築くことで、問題発生時に相談しやすい関係性を構築できます。
リスクカルチャー醸成は、経営層や特定部署だけでなく、すべての従業員が当事者意識を持って参加することが成功の鍵です。組織文化を変えるには時間がかかります。短期的な成果を求めすぎず、粘り強く、継続的に取り組み続けることが重要です。
事業継続には災害リスク対策も欠かせない
企業経営において、健全なリスクカルチャーの醸成も重要ですが、同時に具体的なリスク対策の実施も欠かせません。とくに注目すべきなのが自然災害への備えです。近年、地震や台風などの災害は頻度が増し、規模も大きくなっています。大規模な災害が発生すると事業継続が困難になるため、事前の対策が不可欠です。
災害により事業が長期間中断してしまうと、企業は事業規模の縮小を余儀なくされ、最悪の場合は廃業に追い込まれることもあります。こうした事態を避け、災害後も事業を迅速に回復させるためには、従業員の力が何よりも重要です。
そこで効果的なのが安否確認システムの導入です。安否確認システムは緊急時に自動で従業員に安否確認メッセージを通知し、回答も自動で集計します。災害発生後にすぐ対応できる従業員数を把握できて、事業復旧に向けた次のアクションプランを迅速に立てられます。
安否確認システムなら『安否確認サービス2』がおすすめ
▲出典:安否確認サービス2
トヨクモの「安否確認サービス2」は、サービス導入社数4,000社以上、サービス利用継続率99.8%を誇る安否確認システムです。初期費用0円で最低利用期間も設定されていないため、導入ハードルは低くなっています。
さらに、毎年全国一斉の訓練を行っているのもおすすめのポイントです。訓練のあとには、社内の回答率の時間推移や訓練全体の平均回答時間などをまとめたレポートを送付しており、自社の防災意識を分析できます。
従業員の災害リスクへの興味度を知りたい場合や防災力を高めたい場合には、ぜひ導入をご検討ください。
まとめ:健全なリスクカルチャーの醸成が企業の未来を守る
リスクカルチャーとは、組織のリスクへの向き合い方や姿勢を表すものです。単なる形式的なリスク管理ではなく、社員一人ひとりに根付いた意識と行動が健全なリスクカルチャーを醸成します。
健全なリスクカルチャーを醸成することにより、不祥事や事故を防止できて、さらには企業価値の向上も期待できます。ぜひ本記事で解説したリスクカルチャーの醸成に必要な要素や、醸成手順を参考にして、リスクカルチャーの醸成に取り組みましょう。