リスク認知とは?企業における重要性や6つの認知バイアスを解説

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トヨクモ防災タイムズ編集部

企業のリスクマネジメントに取り組む中で「リスク認知」という言葉を見聞きし、どのような意味か気になった方もいるのではないでしょうか。リスク認知は主に心理学などの分野で研究されている概念であり、経営リスクへの対処にも関連する用語です。

本記事では、リスク認知の意味や重要性、リスク認知に影響を与える認知バイアス、リスク認知を正常にする方法について解説します。企業のリスク管理に携わる方はぜひ参考にしてください。

リスク認知とはリスクの捉え方のこと

リスク認知とは、「人や組織がリスクをどのように認識するか」という主観的な捉え方のことです。

リスク認知は、リスクの発生確率や影響度といった客観的な事実と必ずしも一致しません。たとえば、飛行機事故が発生すると大きく報道され、多くの人が飛行機を「怖い」「危険だ」と認知する可能性があります。しかし、実際には飛行機よりも自動車により死亡事故率のほうが高いなど、リスク認知と客観的な事実が一致しないことも一般的です。

また、リスク認知は人や組織が持っている価値観や経験、知識量などによって変化します。近い将来大きな地震で深刻な被害が出るかもしれないと考えている人がいる一方で、地震に対する危険性をあまり感じておらず「大したことはない」と考える人もいます。このように、同じリスクに対する認識のずれが、リスクへの対処を進める上で課題となる可能性があります。

リスク認知が重要である理由

リスク認知を正常にすることが重要な理由として、以下の2つが挙げられます。

  • リスクを抜け漏れなく把握するため
  • 発生したリスクに適切に対処するため

ここではリスク認知の重要性について解説します。

リスクを抜け漏れなく把握するため

企業において適切なリスク認知が重要である理由は、リスクを抜け漏れなく把握するためです。実態とリスク認識にずれが生じていると、将来起こり得る重大なトラブルを過小評価してしまい、予防策に取り組めない可能性があります。

小さなリスクでも見逃さずに対処するために、適切なリスク認知が重要です。

発生したリスクに適切に対処するため

実際に発生したリスクに適切に対処するためにも、正しいリスク認知が求められます。たとえば、情報漏洩に対するリスク認知がずれていた場合、実際にトラブルが発生しても気付くまでに時間がかかったり、適切な対応ができなかったりする可能性があります。

事故やインシデントが起きたときに迅速かつ的確な対処を行うために、リスク認知の正常化が重要です。

リスク認知に影響を与える6つの認知バイアス

リスク認知がずれる要因は、認知バイアスと呼ばれます。主な認知バイアスには以下の6種類があります。

  • 楽観主義バイアス
  • 正常性バイアス
  • 一貫性バイアス
  • ベテランバイアス
  • バージンバイアス
  • カタストロフィーバイアス

ここでは、それぞれの認知バイアスについて解説します。

楽観主義バイアス

楽観主義バイアスとは、自分にとって都合がいいようにリスクを捉えてしまうバイアスです。たとえば、新規事業への投資を行う際に損失が生じるリスクを過小評価してしまうことなどが挙げられます。

また、楽観主義バイアスは、能力やリソースを過大評価したり、コストやトラブルの発生確率を過小評価したりすることが特徴です。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、リスクやトラブルに直面した際に危機を過小評価してしまう認知バイアスを指します。楽観主義バイアスが将来のリスクに対する認知バイアスであることに対して、正常性バイアスは現在起こっているリスクに対する認知バイアスです。

たとえば、大雨が降って河川が氾濫しているにもかかわらず、建物が浸水するほどではないだろうと考えてしまうことなどが挙げられます。正常性バイアスが生じる原因として、心理的な安定を保とうとして現実に生じている危険を無視してしまうことが挙げられます。

一貫性バイアス

一貫性バイアスとは、これまでと一貫性を保った行動や判断を行おうとする認知バイアスです。たとえば、市場の変化により損失が出ているにもかかわらず、計画段階で決めた事業戦略にこだわり続けてしまうことが挙げられます。

一貫性バイアスにとらわれるとリスクへの対処が遅れ、損失が大きくなる可能性があります。状況の変化を受け入れ、判断を定期的に見直すことが重要です。

ベテランバイアス

ベテランバイアスとは、過去の経験や知識に過度に依存することによって生じる認知バイアスです。たとえば、過去にSNSで小規模な風評被害が発生したものの大きなトラブルには至らなかった経験があり、ユーザーからの重大なクレームを見過ごしてしまうケースがベテランバイアスに分類されます。

ベテランバイアスは、新たな技術やノウハウを過小評価することによる機会損失にもつながります。

バージンバイアス

バージンバイアスは、ベテランバイアスとは反対に経験や知識の不足によってリスクを過小評価または過大評価してしまう認知バイアスです。

たとえば、初めて実行する施策について、失敗する可能性を必要以上に大きく見積もることなどが挙げられます。

カタストロフィーバイアス

カタストロフィーバイアスとは、実際に起こる可能性が極めて低いリスクを過剰に危険なものとして捉えてしまう認知バイアスです。たとえば、富士山の噴火や国の財政破綻といったリスクを過大評価することがカタストロフィーバイアスの例として考えられます。

ただし、起こる確率が極めて小さいリスクであっても、万が一発生した場合に備えて準備をしておくことは重要です。リソースや実現可能性をふまえた適切な対処が求められます。

企業におけるリスク認知を正常にする方法

企業におけるリスク認知を正常にする方法には、以下のようなものがあります。

  • リスクの種類や具体例を学ぶ
  • 自社のリスクについて検討する
  • リスク発生時のシミュレーションを行う

ここでは各方法について解説します。

リスクの種類や具体例を学ぶ

企業で発生する可能性があるリスクの種類や具体例を学ぶことは、リスク認知のズレを直すために有効です。たとえば、財務リスクやオペレーショナルリスク、コンプライアンスリスクなどが企業における主なリスクとして挙げられます。

これらのリスクについて研修などを行うことにより、どのような事象がリスクに該当するかを判断しやすくなり、リスク認知の正常化が可能です。

自社のリスクについて検討する

自社のリスクについて検討する機会を設けることも、リスク認知のずれの解消につながります。複数の部署のメンバーを交えたディスカッションにより、リスクに対する認識を共有することが、リスク認知のずれを解消する方法の1つです。

現状で見落としているリスクはないか、今後起こり得るリスクにはどのようなものがあるかなどを定期的に検討しましょう。

リスク発生時のシミュレーションを行う

リスクが発生した場合についてあらかじめシミュレーションしておくと、リスクを現実的に捉え、リスク認知のずれを小さくすることが可能です。

また、地震や火災などに備えた避難訓練や安否確認訓練などは、リスク認知の正常化だけでなく災害発生時の迅速な対処にもつながります。リスク認知のずれによる判断ミスを防ぐために、さまざまなリスクを想定したシミュレーションを行いましょう。

まとめ:適切なリスク認知で企業のリスクに対処しよう

リスク認知は、リスクの捉え方のことです。企業においては、自社に起こり得るリスクを抜け漏れなく把握したり、発生したリスクに適切に対処するために正しいリスク認知が求められます。リスク認知に影響を与える認知バイアスには楽観主義バイアスや正常性バイアスなど6つの種類があり、リスクの把握や対処を妨げる要因となります。

リスクの種類や具体例を学ぶことや、リスク発生時のシミュレーションを行うことなどが、リスク認知を正常にするために有効です。自社のリスクについて検討する機会を設けて、適切に対処していきましょう。

リスク認知の正常化は、企業の防災・BCP体制を強化する上で不可欠です。また、適切なリスク認知をもとに具体的な行動計画を立てたり、ツールを活用したりすることも重要です。

災害発生時の初動対応では、従業員の安否確認が最優先事項として挙げられます。適切なリスク認知に基づき、迅速な安否情報収集・共有体制を構築しておくことが、事業継続の鍵です。

トヨクモの『安否確認サービス2』は、災害時の安否確認や緊急連絡を自動化・効率化し、企業のリスク管理とBCP実行を強力にサポートします。リスク認知の取り組みとあわせて、具体的なツールによる初動対応体制の強化をご検討ください。

さらに、トヨクモでは、BCP(事業継続計画)の策定をサポートする『BCP策定支援サービス(ライト版)』も提供しています。適切なリスク認知に基づき、実効性のあるBCP(事業継続計画)を策定したいものの、「何から始めればよいかわからない」「策定に時間やコストをかけられない」という企業様におすすめです。

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