企業防災とは?取り組むべき理由と現状把握して効果的に進める方法
トヨクモ防災タイムズ編集部
近年、未曽有の自然災害が発生しており、企業防災の必要性が高まっています。
しかしながら、企業防災の範囲は広く、「企業防災って具体的にどこから手を付ければいいのか分からない」という企業担当者は多いのではないでしょうか。
企業防災においては、ヒトの命だけでなく、建物や機器、会社の大切なデータなどを守る必要があります。

この記事では、企業防災の概要や、企業防災を進めなければいけない理由、現状の企業防災の立ち位置を確認できるチェックリスト、そして企業防災の具体的な進め方5ステップについて解説していきます。
この記事を読み終えるころには、自社の企業防災の方向性が分かり、進めるための第一歩が踏み出せるはずです。ぜひ最後までお読みください。

目次
1. 企業防災とは
企業防災とは、企業が、地震や水害などの自然災害に備えて取り組むべきすべての取り組みを言います。
災害時に従業員や顧客の命を守ることはもちろん、災害に備えて建物の耐震性を確保したり、二次災害(周辺に被害が及ぶこと)を防いだり、地域自治体と連携した防災訓練を行ったり、企業の社会的責任として防災への取り組みを公表したりすることも含みます。
【企業防災のアプローチ(内閣府サイトを参考)】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 災害の特定 | どの災害に備えるか?地震、水害、風害など |
| 従業員・顧客などの生命の安全確保 | 安否の確認方法の確立食料品、医薬品、トイレなどの備蓄 |
| 建物の耐震性の確保 | 新耐震基準の建物かどうかの確認もし旧耐震基準で建てられた建物であれば→耐震診断→必要に応じて耐震補強 |
| 二次災害の防止 | 自社が被災したことにより、周辺に被害が及ぶことを防ぐ→出火防止策や薬液などの漏えい防止策→看板の落下防止、窓ガラスの飛散防止 |
| 地域貢献・地域との共生 | 地域自治体との災害時支援協定の締結地域の防災訓練への参画、工場見学への誘い |
| 情報開示 | 企業の社会的責任として、防災への取組を関係者にアピール→会社案内、有価証券報告書、ホームページなど |
「企業防災」という言葉を聞くと「ヘルメットや乾パンを用意すること」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、それよりもはるかに広い概念を指していることに注意しましょう。
近年、地震や台風、集中豪雨といった自然災害による被害が相次いで発生しています。こうした想定外の災害に備えるため、企業は真剣に企業防災に取り組まなければなりません。
2. 企業防災に取り組むべき2つの理由
ここからは「なぜ企業はコストや時間をかけてまで備えを強化しなければならないのか」について2つの理由を整理してお伝えしていきます。
企業防災に取り組むべき2つの理由
- 安全配慮義務があり損害賠償責任を問われる可能性もあるから(法的リスクを回避できる)
- 備えておけば早く事業再開できるから(経済的損失を最小化できる)
企業防災対策には、備蓄品の準備やツールの導入、訓練に伴う工数など、目に見えるコストが発生します。そのため、経営層や他部署から「いますぐやる必要があるのか?」「コストに見合うのか?」と厳しい目を向けられる担当者の方も多いはずです。
コストを掛けるべき理由を問われたときに、担当者として納得させられる説明ができる状態を作らなければなりません。
企業防災は「コストがかかる面倒なもの」ではなく、企業の存続を守るための戦略的な投資なのです。会社に進言するロジックを組み立てるイメージで、ぜひ読み進めてみてください。
2-1. 安全配慮義務があり損害賠償責任を問われる可能性もあるから
企業防災に取り組まなければいけない最大の理由は、企業が従業員に対して「安全配慮義務」を負っているからです。
労働契約法第5条により、使用者(=会社)は労働者(=正社員や派遣社員、パート、アルバイトなど)が安全に働けるよう必要な配慮をする義務があります。安全配慮義務を怠ったと判断されれば損害賠償責任を問われる可能性があります。
損害賠償責任を問われる可能性がある事例
- 耐震補強の必要性を認識しながら修繕を怠り、建物が崩壊して従業員が死亡した
- オフィス家具の固定を怠っていたため、従業員が下敷きになってケガをしてしまった
- 適切な避難指示を出すことができず、危険な場所へ誘導してしまった
- 外が危険な状況であるにもかかわらず、無理に帰宅を命じて従業員が被災した
- 企業が安否確認を怠ったことが原因で、損害が拡大してしまった
東日本大震災の津波で従業員が犠牲となったケースでは、遺族から2億円を超える損害賠償を求めた訴えが提起されました。最終的に「当時の状況では予見できなかった」として銀行側の過失は認められませんでしたが、企業の防災体制が厳しく法的に検証されることを世に知らしめる象徴的な事例となりました。
安全配慮義務に違反したかどうかは、個別の事案ごとに「予見可能性」と「結果回避可能性」で判断されます。
- 予見可能性:被害を事前に予測できたか
- 結果回避可能性:被害の回避策を十分にとっていたか
この2つの面から、「会社としてできる限りの対策を講じていた」と客観的に証明できるよう、日ごろから備えておくことが大切です。
2-2. 備えておけば早く事業再開できるから
企業防災には、法的リスクを回避するという面だけでなく、「被災後にいち早く事業を再開できる」という経済的なメリットもあります。
当たり前のことですが、企業防災を怠っていれば、災害時に大きな被害を受けてしまい、復旧には膨大な時間とコストがかかります。最悪の場合、再開の目処が立たずそのまま廃業に追い込まれるケースもありえます。
一方で企業防災を徹底していれば、被害を最小限に抑えることができ、あるいは無傷で事業を継続させることすら可能になります。
【企業防災の対策なし・ありの対比イメージ】
| 対策項目 | 企業防災に取り組んでいない場合 | 企業防災を徹底している場合 |
|---|---|---|
| 建物の安全性 | 耐震補強不足による建物倒壊従業員の負傷リスク増 | 耐震工事済みで倒壊を回避災害の影響を受けずに事業を継続できる |
| オフィス環境 | 機械・棚を固定しなかったことにより従業員が負傷避難経路の遮断で被害拡大 | 機械・棚などを固定したため従業員は無事PCなどの機器の故障も回避できる |
| 安否の把握 | 連絡手段がなく安否把握が困難確認作業に膨大な時間を浪費 | システムで即座に全員の無事を把握早期の事業再開が可能となる |
| 事業用データ | サーバー被災による重要データ消失復旧の目処が立たない状態 | クラウド管理によりデータは無事リモートで業務を継続することが可能 |
| 取引先対応 | 状況不明で連絡もできず長期化信頼を失い契約解除に至る | 早期に状況を把握でき報告も完了支障なく業務を継続できる |
災害の内容やレベルにもよりますが、企業防災の取り組みをしているかどうかで、復旧にかかる時間やコストが大幅に異なります。
被害を最小限に留めて事業再開までの時間を短くすることが、事業存続のために非常に重要です。
3. 企業防災で守るべき4つの資源(ヒト・モノ・情報・カネ)
企業防災の重要性を理解したあとに気になるのは、「具体的に自社は何をすればよいのか?」という部分ではないでしょうか。取り組むべき範囲が広いために、どこから手を付けていいかわからないという企業担当者も多いでしょう。
企業防災の方向性を考えるときには、経営を支える「ヒト・モノ・カネ・情報」という4つの資源に沿って整理するのがおすすめです。
企業防災で守るべき4つの資源(ヒト・モノ・情報・カネ)
- 資源1:ヒトの命(従業員・顧客・利用者など)
- 資源2:モノ(オフィス・施設・設備・商品など)
- 資源3:情報(データ・資料・システム環境など)
- 資源4:カネ(事業を再建するための資金・備え)
自社が守りたいのはどの部分かイメージしながら読み進めてみてください。
3-1. 資源1:ヒトの命(従業員・顧客・利用者など)
企業防災を考える上で、企業の4つの資源のうち最優先で守るべきは、従業員を中心とした「ヒトの命」です。
従業員の安全確保はもちろんのこと、業種によってはその場にいる顧客や施設の利用者など、自社の活動に関わる人命を守ることを真っ先に優先しなければなりません。
守るべきヒトの命の例
- 自社の従業員:オフィスや現場で働くすべての正社員、派遣社員、パート・アルバイトなど
- リモートワーカー:在宅勤務中やサテライトオフィスで働く従業員など
- 施設の利用者(介護施設・病院・保育所など):自力避難が困難で介助を必要とする入居者や患者、子どもなど
- 来店中の顧客(店舗・飲食店など):災害時に店内に居合わせたお客様など
- 外部の協力会社:自社拠点内に常駐しているパートナー企業の担当者や派遣社員など
- 近隣住民: 自社の設備倒壊や火災によって被害を受ける可能性がある周辺の人々など
企業防災で自社が守るべき人の範囲がどこまでかをまず検討し、その対象ごとにどう守るのか(安否確認や避難指示、誘導など)、どの程度備えておくのか(備蓄品の日数など)を具体的に考えることが必要です。
3-2. 資源2:モノ(オフィス・施設・設備・商品など)
企業防災において、事業を支えるための建物や設備といった「モノ」も、守るべき大切な資源です。
オフィスや店舗、工場が致命的な被害を受ければ、事業を再開する場を失うだけでなく、修繕や買い替えに多大な時間と費用を要し、経営を圧迫することになるからです。
守るべきモノの例
- 拠点施設:本社オフィス、店舗、工場、倉庫、社宅などの建物本体
- オフィス家具・備品:PC、複合機、サーバーラック、デスク、書棚など
- 製造・専門設備:工場の生産ライン、業務用機器、医療機器、重機など
- 商品・在庫:完成品、原材料、資材、出荷待ちの荷物など
- ライフライン設備:非常用発電機、受水槽、太陽光パネル、蓄電池など
人命を守るために建物の耐震性能の確保や設備の固定、窓ガラスの飛散防止などが最優先事項として必要ですが、それ以外にも業種や事務所ごとに守るべき優先順位を決めておかなければなりません。
企業防災で重点的に守るべき「モノ」は、企業によって大きく異なります。
たとえば、商品を大量に扱う卸売業や小売業なら「在庫を抱える倉庫や工場」の防災が、IT企業なら「PCやサーバー」の保全が、運送会社なら「車両」の確保が、それぞれ事業継続の生命線となるでしょう。
自社の事業継続に不可欠なモノを洗い出して、どのような対策を講じておくかを考えておく必要があります。
3-3. 資源3:情報(データ・資料・システム環境など)
現代の企業防災においては、目に見えない資産である「情報」(データ・ノウハウ・システムなど)も、人命や建物に匹敵するくらい重要であり、再建に欠かせない資産となります。
たとえオフィスや設備が元どおりに復旧したとしても、長年蓄積してきた顧客リストや設計図、システム内のデータなどが消失してしまえば、ビジネスを継続することは事実上不可能となってしまうからです。
守るべき情報の例
- 顧客・取引先データ:顧客や取引先の連絡先、契約状況、案件進捗状況など
- 業務ソフト・業務アプリ内のデータ:受注情報、会計、在庫管理、給与計算の情報など
- 知的財産・ノウハウ:設計図、特許関連書類、独自の技術マニュアルなど
- 法務・財務関係書類:登記書類、契約書原本、決算書類、印鑑・重要証書など
災害時にこれらの情報を守るためには、「データの分散」と「アナログのデジタル化」をしておく必要があります。
具体的には、サーバーをクラウド化して社外でもアクセス可能にしたり、重要な図面や契約書はスキャンしてデータ化してクラウドサーバーに置いておいたり、バックアップを物理的に離れた別の地域(遠隔地)に保存したりといった対策が有効です。
情報資源についても、「どのデータが自社にとってとくに重要か」を考えて最優先に対策しておくことが欠かせません。
3-4. 資源4:カネ(事業を再建するための資金・備え)
万が一災害に遭ってしまうと、事業を再建するために多大なコストがかかります。そのため、企業防災を考える上では、経済的な備えである「カネ」の確保を避けて通ることはできません。
被災後は事業を継続できずに売上が途絶えるだけでなく、建物や設備の修繕や備品の買い直しなど多大な費用が必要となります。
たとえば台風により床上浸水が発生して重機やサーバー、建物の内装、電気系統など広範囲に被害が及んだ場合、一千万円単位の被害が発生する可能性もあります。
再建には想像以上のコストがかかるため、自社のリスク(場所や事業内容)に合わせて以下の保険を組み合わせておくことが、企業防災の経済的な備えとなります。
再建費用に備えるために検討すべき主な保険例
- 企業総合保険:火災を中心とした天災や機械的事故、偶然の破損事故などによる損害を補償する保険。財産補償があるかも要確認。
- 利益保険・休業補償:火災などで休業した場合に、本来得られるはずだった利益や家賃などを補償する保険。
- 賠償責任保険:自社が起こした災害で第三者に怪我をさせた場合など、被災時の二次被害に対する法的な損害賠償リスクに備えられる保険。
- 機械保険: 工場の生産ラインや精密機械などが、災害による事故で故障・破損した際の復旧費用を補償します。
- 地震危険補償特約:地震や噴火、津波の災害による損害を補償してくれる保険。
※保険会社によって、保証内容や範囲が異なる場合があります。
万が一被災した場合には、災害復旧のための補助金や、雇用を維持するための雇用調整助成金などの制度が使えるケースもあります。事前にどのような制度が使えるかも調査しておくといいでしょう。
4. 自社の企業防災の現状を確認!企業防災チェックリスト
前章で企業防災において重要な「ヒト・モノ・情報・カネ」という4つの経営資源について解説しましたが、「自社では果たしてできているのだろうか?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
自分では判断が難しいという方のために、自社でどの程度企業防災ができているかを客観的に把握するためのチェックリストを用意しました。ぜひ自社の現状をチェックしてみてください。
4-1. ヒト(従業員・顧客)を守る企業防災チェックリスト
まずは最優先すべき人命の確保について対策ができているか、以下のチェックリストで確認してみてください。
ヒトを守る企業防災チェックリスト
☐ 従業員や顧客、利用者の安全確保手順および緊急時の避難方法・経路が明確になっていますか?
☐ 従業員の安否確認ができる体制が整備されていますか?
☐ 防火管理責任がある防火対象物に対して、救助用具をはじめとした防災用資機材を設置していますか?
☐ 救急救命の訓練を受け、災害発生時に動員可能な人材を確保していますか?
☐ 災害発生時における二次災害防止のための対応体制を整備していますか?
☐ 災害発生時にすぐ必要となる生活物資(水、非常用食料・非常用生活用品など)を備蓄していますか?
☐ 浸水リスクがある場合、垂直避難(2階以上への移動)のルートや待機場所を考えていますか?
☐ 天災が発生した場合や予測される場合の出社ルールが明確に決まっていますか?
企業に関わる人命を救うこと、そして安否を把握できる体制を整えることが、企業防災においてまず取り組むべき内容です。できていない部分があれば、5章以降を参考に、企業防災の取り組みを進めましょう。
4-2. モノ(建物・備品など)を守る企業防災チェックリスト
次に、「モノ」(建物や設備、重機、備品など)の被害を最小限に抑える企業防災の準備ができているか、以下のチェックリストで確認してみてください。
モノを守る企業防災チェックリスト
☐ 建物の耐震診断を実施し、必要に応じて補強工事を行っていますか?
☐ 建物の防火性能の診断・防火対策は万全ですか?
☐ 施設の風水害対策(ガラスの補強や止水板、土のうの準備など)はできていますか?
☐ 家具やOA機器、工場の大型機械などの転倒防止対策などをしていますか?
☐ 防災設備について、定期的な安全点検を実施していますか?
☐ 重要な物品(商品やサーバー機器など)を、浸水被害に遭わない高所へ配置していますか?
建物の耐震・防火・風水害対策はもちろん、自社の事業の核となる「モノ」を重点的に守れる体制ができているか確認しましょう。できていない部分があれば、5章以降を参考に、企業防災の取り組みを進めましょう。
4-3. 情報(データ・システムなど)を守るための企業防災チェックリスト
企業が扱っている大切な資料やデータを守るための企業防災の準備ができているか、以下のチェックリストで確認してみてください。
情報を守る企業防災チェックリスト
☐ 基幹業務システム内のデータ(顧客情報や会計データなど)のバックアップ対策は万全ですか?
☐ 重要な保管書類を、安全な場所に保管する対策(耐火金庫など)を実施していますか?
☐ 紙の書類や図面などの電子化(デジタル化)が進んでいますか?
☐ 災害発生時の設備(機器類・システム)復旧について手順が明確となっていますか?
☐ 災害時にオフィス以外の場所(自宅など)から業務できる環境を整えていますか?
☐ ネット回線の冗長化(予備回線の確保)など、通信途絶への備えはありますか?
☐ 災害時でも最低限の電力を確保できる非常用電源(発電機・蓄電池)を導入していますか?
☐ 通信機器が使えない場合に備えたアナログな業務継続手順(マニュアル)がありますか?
紙の書類やPC、サーバーなどが物理的に損壊した場合でも、インターネット上のクラウドなどにデータがあれば復旧を早く進めることができます。
4-4. カネ(事業の再建資金への備え)に関する企業防災チェックリスト
災害により多大な再建費用がかかる場合に備えて、以下のチェックリストで確認してみてください。
カネに関する企業防災チェックリスト
☐ 自社の立地リスク(ハザードマップ等)を把握したうえで、床上浸水や土砂災害をカバーする損害保険・特約を準備できていますか?
☐ 建物だけでなく、高額な製造設備やOA機器、商品在庫なども補償対象に含まれていますか?
☐ その他、業種や規模に合わせた必要な保険を契約していますか?
☐ 売上が途絶えても固定費(人件費・家賃・ローン返済など)を維持できる手元資金を確保していますか?
☐ 復旧作業中でも従業員の雇用を維持するための「利益保険(休業補償保険)」の必要性を検討していますか?
☐ 取引先への支払遅延を防ぐため、被災時に優先的に融資枠を確保できる「コミットメントライン(融資枠予約)」を金融機関と契約していますか?
☐ 国や自治体による被災企業向け支援金・補助金の制度があることを、知っていますか?
不足している部分があれば、次章も参考にしつつ重点的に検討してみましょう。
5. 企業防災を効果的・効率的に進める5ステップ
企業防災には、「これをすれば完璧」という正解はありません。業種や規模、事業所がある場所、従業員の働き方などによって、備えるべきリスクも優先順位も大きく変わるからです。
ここでは、自社にとってもっとも効果的で無駄のない対策を導き出すための5つのステップを解説します。

想定しておくリスクは会社の立地・業種などによって異なるので、自社でのリスクは何かなど想像しながら読み進めてみてください。
5-1. ステップ1:ハザードマップなどで地理的リスクを把握しておく
効率的な対策を進めるために、まずは自社拠点の地理的リスクを客観的なデータで特定することが不可欠です。
国土交通省が公開している「重ねるハザードマップ」や、市区町村など各自治体が公開しているハザードマップを見て、自社のオフィスや工場、店舗にどのようなリスクがあるかを正しく理解しましょう。
確認しておくべきハザードマップの例
- 浸水ハザードマップ(洪水・内水・高潮):
浸水想定区域や浸水深(何メートルか)、到達時間、避難場所などが表示されます。床上浸水の可能性がある場合には、備品や重要書類、サーバーなどの機器をどこに置くか、災害時にどこに移動させるべきかなどを考えておくといいでしょう。 - 地震ハザードマップ:
地震による揺れの強さや揺れによって引き起こされる、建物倒壊や液状化の危険度などを確認できます。建物の倒壊危険度が高いエリアでは家具や機器などの固定が推奨されます。 - 火災被害ハザードマップ:
木造住宅密集地域(木密地域)では火災被害ハザードマップを作成している自治体もあります。該当するエリアでは火災リスクが高いことを念頭に企業防災を考えましょう。
高台にあって浸水リスクが低ければ水災を想定した準備の優先度は下がりますが、リスクが高いエリアにある場合は、止水板や土嚢(どのう)の設置、重要資産の高所移転、水災補償付き保険への加入などの準備をしておく必要があります。
また、最新の気象データや地形の変化、防災設備の整備状況などに基づいて、ハザードマップは適宜更新されます。常に最新のハザードマップを確認して、現状に合わせて企業防災の計画をアップデートし続けることが重要です。
さらに、自治体の防災計画や近隣のインフラ環境、周囲の企業の状況も事前に調べておくことで、災害時に孤立したり二次被害に巻き込まれたりするリスクを減らしましょう。
確認しておくべき地域情報や立地特性の例
- 避難経路の安全性:
指定避難場所への道中に、古い木造住宅が密集している場所や狭い橋がないかを確認します。倒壊や延焼で道が塞がるリスクがある場合は、代替ルートの設定が必要です。 - 帰宅困難者対策と滞留リスク:
駅周辺など、発災時に交通機関が止まり帰宅困難者が出る可能性があるエリアかを確認します。周辺に一時滞在施設があるか、あるいは自社で数日間待機させるべきかを判断する材料になります。 - 近隣企業の活動内容と二次災害リスク:
隣接する工場が化学薬品や危険物を扱っている場合、地震後の火災やガス漏れによる二次被害を想定しなければなりません。また、大きな川の近くや海抜の低い土地など、地形による立地特性も再認識しておく必要があります。
いざというときに困らないよう、災害が起こる前に地域の特性を確認しておくことが重要です。
5-2. ステップ2:損害賠償リスクの可能性を整理しておく
地理的なリスクの特定や環境ごとの企業防災の方向性を確認できたら次は、法的リスクの観点を検討しましょう。
天災であっても人災であっても、不十分な防災計画により被害が拡大した場合、以下のような重い責任を問われる可能性があります。
確認しておくべき損害賠償リスクの例
- 従業員に対する安全配慮義務:
雇用主には、従業員が生命・身体・身体などの安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務があります。被災後の「安否確認システムの未整備」や「無理な出社指示による被災」などがあった場合、義務違反で賠償請求に発展するリスクがあります。(労働契約法第5条) - 顧客に対する安全配慮義務:
店舗や病院、学校など不特定多数の顧客・利用者・生徒などが集まるような施設の場合には、信義則上(※)の安全配慮義務があるとされています。「避難経路が荷物で塞がっていた」「避難誘導が適切に行われなかった」といった理由で被災した場合、施設側は安全配慮義務を怠ったと見なされる可能性があります。
(※信義則とは、信頼や期待を裏切らないように、信義に従い誠実に行動すべきとする考え方のことです) - 土地工作物責任:
建物や塀、石垣、看板などの人工物の設置・保存に欠陥があったことにより他人に損害を与えれば、所有者はたとえ過失がなくても損害賠償責任を負うことがあります(無過失責任)。「旧耐震基準の建物が壊れた」「看板が落下した」などで第三者が被災した場合、土地工作責任を問われる可能性があります。(民法第717条) - 役員の任務懈怠(にんむけたい)責任・第三者責任:
企業防災対策を怠り、必要な危機管理ができていなかったために損害が発生・拡大したと見なされた場合、役員の任務懈怠(にんむけたい)責任(会社法第423条)や第三者責任における重過失(会社法第429条)が認められる可能性があります。
サービス業なら「顧客への誘導ルールをしっかり策定する」、老朽化した自社ビルや工場を持つ企業なら「建物の倒壊リスクを見直す」、看板を設置している店舗なら「突風などで飛ばないよう固定する」など、自社の現状に合わせて必要な対策がないか確認しておきましょう。
経営陣が負うべき責任の基準は年々厳しくなっています。企業防災計画を常にアップデートし続けることが必要です。
5-3. ステップ3:リスクに合わせて企業防災の優先施策を決める
地理的リスク(ステップ1)と法的リスク(ステップ2)を整理できたら、次は自社が「まず何から取り掛かるべきか」という具体的な防衛方針を定めましょう。
どの企業も「命を守ること」が最優先ですが、業種や保有する設備によって、そのために着手すべき項目の優先順位は大きく異なります。
例:製造業を例とした優先順位の立て方
- 従業員の安全を最速で把握するために、まずは安否確認システムを導入する
- 現場での人身事故を防ぐために、機械の固定や棚の転倒防止を徹底する
- 避難時の怪我や二次被害を防ぐために、ヘルメットや救急備品を確保する
- 長期的な安全を確保するために、建物や外壁などの老朽化対策を計画する
- 自社が加害者にならないよう、危険物の流出防止や看板の補強を実施する
同じ製造業でも、危険物を取り扱う現場なら流出防止の順位が上がりますし、多くのパート・アルバイトが入れ替わる現場なら誰でもすぐ使える安否確認がより重要になります。自社の現場の実情に合わせて、この優先順位をカスタマイズすることが大切です。
地域特性も加味したうえで、設備が増えたり新しい拠点が開設されたりするたびに、この優先順位を再検討してください。現場の変化に合わせて対策を見直すことが重要です。
5-4. ステップ4:企業防災のルール・行動シナリオを策定する
ステップ3までの内容を踏まえて、いよいよステップ4ではルールを策定し、できれば行動シナリオにも落とし込みましょう。
企業防災においてもっとも避けたいのは、マニュアルだけがあって現場が動けない「形骸化」です。発災時のパニック状態でも、社員が迷わず最初の一歩を踏み出せる仕組みを作ります。
具体的数値による「出社・退社ルール」の策定
「大雨が降ったら」といった曖昧な表現ではなく、自治体の警戒レベルや鉄道の計画運休、震度などの客観的な数値に基づいて、出社停止や早期帰宅を自動的に判断する企業防災ルールを定めます。
安否確認システムの運用ルールの徹底
通知を受け取ってから何分以内に回答すべきか、回答がない場合に誰がどうフォローするかなどのルールを決めて周知します。本番に近い状況で訓練を繰り返し、改善していくことが重要です。
状況に応じた「行動シナリオ」の作成
「平日の業務時間中」「夜間・休日」「社員の多くが外出中」など、発生タイミング別のシナリオを用意します。それぞれの状況下で、誰がリーダーとなり、どこに集合し、どう安否を報告するかという具体的な動きをイメージさせることが重要です。
ルールやシナリオは「一度作ったら終わり」ではなく、防災訓練を通じて「実態に合っているか」「スムーズに動けるか」をかならず検証してください。訓練で上手くいかなかった部分を微調整して、使えるルールに更新し続けることが大切です。
「【企業の防災担当者必見】避難訓練シナリオの作り方|効果を高める5ステップと注意点」の記事もぜひ参考にしてみてください。
5-5. ステップ5:災害の予兆・異変にすぐ気づける準備をしておく
企業防災のステップを締めくくるのは、策定したルールやシナリオを「いつ発動させるか」を正しく判断するための土台作りの部分です。せっかくルールやシナリオを整備しても、初動が遅れてしまっては意味がありません。
災害の予兆・異変をキャッチアップする仕組みの例
- 自治体の防災メールや気象予報・警報の情報を、プッシュ通知で受け取れるようにしておく
- 水害リスクが高い地域なら、河川水位計や雨雲レーダーなどの異常値をリアルタイムで監視しておく
- 遠隔地の拠点や事務所の様子を確認できるよう、ライブカメラでいつでも閲覧可能にしておく
- 薬品や危険物を扱う現場では、漏えい検知センサーなどを導入して万が一の異常を自動で通知する仕組みを作る
- 異変が起きた際に情報を集約して経営判断を下す「緊急連絡本部」を決めておき、連絡先も全社員に共有しておく
台風や集中豪雨などの進行型災害はもちろん、地震発生後の二次被害を防ぐためにも、初動を遅らせない仕組みを整えておきましょう。
台風接近時に実施すべき対策については、「台風 会社 対策」の記事もぜひお読みください。
6. 企業防災で何をするか迷ったら安否確認から始めよう
ここまで解説してきたように企業防災の範囲は広く、どこから手をつけるべきか悩む担当者の方も多いでしょう。もし「最初の一歩」に迷っているのであれば、まずは安否確認の仕組みを整えることから始めるのがおすすめです。
企業防災の最初の一歩として「安否確認の仕組み整備」が重要な理由
- 従業員の安全確保が最重要であるため:企業防災の最優先事項は、従業員やその家族の安全を確かめることです。一分一秒を争う災害発生直後に迅速な安否把握ができる体制を整えることは、従業員の生命を救うことにつながります。
- 「動ける人員」をベースにした再建戦略を立てるため:従業員の現状(怪我の有無や出社の可否)が見えなければ、その後の事業復旧をどう進めるかの判断が下せません。安否確認は、限られたリソースで何ができるかを決めるための、戦略上の重要な判断材料となります。
- 連絡手段を確保するため:大規模災害では電話回線やインターネットがパンクする可能性があります。災害時でも安定して稼働する専用の通信インフラを事前に確保しておくことで、組織としての統制を維持できます。
初めから完璧な企業防災計画を作ろうとすると、膨大な時間がかかります。まずは取り組みやすい安否確認の仕組みを整えて、次に安否確認システムを応用した訓練を行うなど、段階を踏んで企業防災の体制を整えておくことをおすすめします。
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7. まとめ
本記事では「企業防災」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆企業防災とは
◆企業防災に取り組むべき2つの理由
- 安全配慮義務があり損害賠償責任を問われる可能性もあるから
- 備えておけば早く事業再開できるから
◆企業防災で守るべき4つの資源(ヒト・モノ・情報・カネ)
- 資源1:ヒトの命(従業員・顧客・利用者など)
- 資源2:モノ(オフィス・施設・設備・商品など)
- 資源3:情報(データ・資料・システム環境など)
- 資源4:カネ(事業を再建するための資金・備え)
◆自社の企業防災の現状を確認!企業防災チェックリスト
- ヒト(従業員・顧客)を守る企業防災チェックリスト
- モノ(建物・備品など)を守る企業防災チェックリスト
- 情報(データ・システムなど)を守るための企業防災チェックリスト
- カネ(事業の再建資金への備え)に関する企業防災チェックリスト
◆企業防災を効果的・効率的に進める5ステップ
- ステップ1:ハザードマップなどで地理的リスクを把握しておく
- ステップ2:損害賠償リスクの可能性を整理しておく
- ステップ3:リスクに合わせて企業防災の優先施策を決める
- ステップ4:企業防災のルール・行動シナリオを策定する
- ステップ5:災害の予兆・異変にすぐ気づける準備をしておく
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