建設業界における適切な防災対策とは?作業員の安否確認方法も紹介

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

多くの家屋や公共機関などが被害を受けるような大規模災害が発生した際、地域で非常に頼りとされるのが建設業界です。
被災後、建設会社が事業やサービスを継続できるかというのは、地域の住民が安全に過ごせるか、元の生活に戻れるかということに直結します。そのため、建設会社には日頃から高い防災意識を持っていることが求められるのです。

今回は、建設業界で多いとされる三大災害とそれらに対する予防策、災害発生時におすすめの安否確認方法についてご紹介します。

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建設業で想定される三大災害とその原因

建設業は、他の業種と比べて事故が多く危険度の高い業種ですが、中でも「建設機械・クレーン災害」「墜落・転落災害」「崩壊・倒壊災害」は三大災害と呼ばれ、全体の事故の50%近くを占めていると言われています。

建設機械・クレーン災害とは、フォークリフトやブルドーザー、ダンプトラックなどの建設機械と接触したり、クレーンで釣り上げた荷物が落下したりすることで周囲の人がけがを負うことです。墜落・転落災害は、文字通り高い位置から墜落したり、マンホールの中に落下したりする事故で、死亡事故の中では最も多い原因とされています。

一方、建設現場では、土台がしっかり補強されておらず足場や建物が崩壊、倒壊するような事故も多発していますが、近年は台風や豪雨など自然災害の影響で労働災害と呼ばれるような事故につながっているケースも増えています。

こうした災害は、建設現場の整備不足、作業員によるミス、そして前述した自然災害などが主な原因です。
それぞれの状況について、具体的に見ていきましょう。

建設現場の整備不足

建設業の災害における最も多い原因としては、現場の整備不足が挙げられます。日頃から機械や道具のメンテナンスを怠っていると、欠陥や不備、劣化などに気付くことができず、大きな事故を招いてしまうことがあります。

また、急ぎの現場で手すりや足場の固定が不十分となったり、面倒だからと安全帯を使わず作業していて死亡事故が起こるといったケースも珍しくありません。

作業員によるミス

作業員の注意力や集中力の低下、気の緩みなど、ちょっとした人為的ミスが大きな事故につながる可能性があります。建設業界では慢性的な人員不足が業界全体の課題となっており、とくに建設機械や大型車両を操作する際の誘導員の数が不足していることで、多くの事故が発生しています。

それに加え、作業員の高齢化も目を背けることができない課題です。国土交通省の発表によると、建設業就業者のうち55歳以上は約34%、反対に29歳以下は約11%とされており、今後も高齢化が進むことが予想されます。若い世代に比べると体力面はもちろん、記憶力や判断力でも低下が見られるため、人的ミスが増える可能性が高くなるでしょう。 

自然災害

近年、建設業に大きな影響を与えているのが、自然災害から引き起こされる事故です。台風や集中豪雨、竜巻、火災、津波などで足場が崩れたり建物が倒壊するといった被害がほとんどですが、ここ数年は全国的に地震が多発しており、作業員が高所から転落したり、がれきの下敷きになったりする人的被害も拡大しています。

また、現場の作業が遅れている場合、現場監督や責任者など管理事業者側による中止の指示が遅れ、人を巻き込む大きな事故につながっているケースも少なくありません。とくに土砂崩れや建物の倒壊などが発生した際は、作業員のためはもちろんのこと、その後確実に作業を継続させるためにも、作業員の安否確認と安全確保が最重要事項です。

建設会社が三大災害を防ぐ方法

三大被害と呼ばれる「建設機械・クレーン災害」「墜落・転落災害」「崩壊・倒壊災害」を防ぐためには、第一に従業員が安全に働ける環境を作ることが大切です。では、どのように環境整備をすべきなのか、意識するポイントについて具体的に解説します。

建設現場の整備不足:現場安全対策を徹底する

何より重要なのは、作業を行う現場の安全対策を徹底することです。
以下に、実際の建設現場で講じられている安全対策事例を紹介します。

  • 作業手順書にて現場条件を十分考慮した上で作業に取りかかる
  • 作業前に建設機械、足場や手すりなどの基礎設備の点検を行う
  • 安全通路を使用する
  • 作業中はヘルメット・安全帯を着用する
  • クレーン作業中にランプが点灯するか事前に確認する
  • 安全ネットを設置する
  • 常に安全確認を意識するために標語を掲示する
  • 機械の作動や運転をする際のルールを統一する
  • 作業前に避難場所や避難経路を確認しておく
  • 定期的に安全大会や講習会を開催、参加する

建設現場で発生する災害のうち、予測が難しい自然災害によるもの以外は、事前に対策しておくことで防げる事故が多くあります。連日の作業による慣れや、慢性的な人員不足などのせいで、毎日の点検やルールの確認がおろそかになってしまいがちですが、1日の始まりや新しい作業を始める際は、必ず機械や設備、ルールの確認を行うことを習慣づけておかなければなりません。

なお、確認作業は2人以上で行うことが基本です。徹底した安全対策で、事故を未然に防ぎましょう。

作業員によるミス:作業員のケア・教育

人為的ミスを減らすためには、現場作業員への適切なフォロー、意識向上のための教育が必要です。
具体的には、以下のような点を意識するといいでしょう。

  • 作業員のストレスチェック
  • ハラスメントの有無
  • 人員不足の有無
  • 作業員への安全訓練実施

いくら安全対策が十分にされている現場であっても、そこで働く作業員が大きなストレスを抱えていると、全体的な作業に支障が出ます。とくに、建設現場は暑さや寒さの影響を直接受ける厳しい環境の中、不特定多数の人たちと一緒に作業を行うという非常にストレスがたまりやすい仕事環境です。

また、所謂”男社会”と呼ばれる世界の中で上下関係が厳しく、ハラスメントが横行している現場も珍しくありません。そうしたストレスが原因で注意散漫になったり、ぼーっとして判断力が鈍ってしまったりすることで、取り返しの付かない事故を引き起こす可能性があります。定期的に作業員のストレス調査を行うとともに、人員不足についても現場の声に耳を傾けてみましょう。

自然災害:転落・飛来物に備える

作業員が高い位置から落下することを「転落」、ものが外から飛んで来ることを「飛来」と呼び、建設現場ではそれらを想定して準備しておくことが大切です。

転落を防止するには、以下のような方法があります。

  • 墜落抑止用器具(安全帯)を着用する
  • 作業床を設置する
  • 防護柵などで転落リスクのある場所をふさぐ
  • 墜落防止装置を設置する
  • 安全ブロックや墜落防止システムを設置する

飛来物に対しては、以下のような備えが有効です。

  • ヘルメットや安全靴を着用する
  • 落下防止ロープやネットを設置する

現場の状況や条件によって異なりますが、高所作業を行う場合は、墜落抑止用器具の着用が義務付けられています。
ヘルメットにはいくつか種類があるため「飛来・落下物」を選びましょう。

建設会社が円滑に事業を継続するために欠かせない 2つのポイント

災害が発生した際、建設会社が事業を継続させるために意識すべきポイントは大きく分けて2つあります。
1つは従業員に向けた対策、もう1つは協力会社に向けた対策です。

対従業員

自然災害が発生した際の被害として機械やトラックが壊れたり、基礎となる地盤が崩れてしまったりとさまざまな状況が考えられますが、最も困るのは作業を継続するための人員が確保できなくなることです。そのため、建設会社が作業を継続できるか否かの判断をするには、従業員の安否や状況を迅速に把握できる環境を作っておくことが欠かせません。

とはいえ、いざ災害が起きた時、一人の防災担当者が従業員全員の安否を電話やメールなどで確認するのは現実的に難しいでしょう。また、防災担当者自身が被災していまい、安否確認対応そのものができなくなる可能性も否定できません。
近年そうした状況を考慮し、ITシステムを導入し安否確認を自動化する会社も増えています。

対協力会社

被災下において、従業員の安否と並んで重要となるのが、協力会社の有無です。万が一、自社が甚大な被害や損害を受けて事業の継続が困難になったとしても、協力会社と連携を取ることができれば、人員や資機材の補充ができる可能性があります。
連携可能な他社や物資の供給元となるような企業とは、日頃から密に連絡を取り合っておくのはもちろんのこと、緊急時に確実につながる連絡手段を確立しておくことが重要です。

また、災害発生時には資材の価格が高騰し、調達が難しくなるケースが珍しくありません。
そうしたリスクを避けるためにも、全国にネットワークを広げておくと、有事の際も安定した資材供給が受けられます。

災害による被害を最小限に抑えるために建設会社が行うべき事前対策3つ

建設会社はさまざまな災害に見舞われるリスクがあるとお伝えした一方で、事前に備えておくことで未然に防ぐことができる事故も多くあると解説しました。

ここでは、十分な対策をしていたにも関わらず災害の影響を受けてしまった際に、その被害を最小限に抑えるための方法をご紹介します。

施工中・竣工物件への対応を決めておく

万が一の時に備えて、現在施工中の物件あるいは竣工物件における対応をあらかじめ決めておくことが大切です。施工中の建物であっても、すでに屋根や壁ができあがっている状態であれば地震や強い雨風に耐えられる可能性がありますが、建設初期や途中だと大きな地震や台風、突風などで倒壊してしまうかもしれません。台風や突風、盗難などの被害であれば建設工事保険などでカバーされますが、自然災害が原因の場合、再建築にかかる費用は全て建設会社が負担することになるため注意が必要です。

一方、工事が完了した竣工物件でも、一定期間は建設業者に責任が発生するため、継続的なフォローが求められます。
いずれの場合も、災害が落ち着いた後は多くの顧客から連絡が来ることが予想されますが、対応できる人員も限られているため、全ての要望に応えることは難しいでしょう。被災した状況下で適切な対応ができるよう、防災対策マニュアルに誰がどの順に対応するかを明記しておくと、いざという時に混乱を避けることができます。

復旧工事の段取りを考えておく

災害で自社が被害を受けている場合も、早期の工事再開を望む連絡が多数来るはずです。しかし災害の規模が大きいと、現場に出られる人員が確保できなかったり、建材が届かないといった理由で、やむを得ず工事ができないという状況に陥る可能性があります。

とはいえ、できる限り迅速に復旧工事が始められるよう、さまざまな段取りを想定したBCP対策を策定しておくことは非常に重要です。建設会社はピラミッド型の組織として成り立っているところが多く、事業拠点を複数持っているケースが少なくありません。

先にご紹介した通り、各拠点がそれぞれに他社との協力体制を整え、いざという時に連絡し合えるツールを確立しておくと安心です。有事の際は、被害の少ない会社に協力を依頼することで、より迅速に復旧作業にとりかかることができるでしょう。

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防災・事業継続に役立つITシステムの導入

有事の際に迅速かつ的確な初動対応を行うためにも、専用システムを導入し従業員の安否確認の自動化を検討することをおすすめします。安否確認システムとは、災害が発生した際、あらかじめ登録していた従業員の連絡先に自動で安否確認メールが発信されるシステムで、従業員やその家族などの安否状況を瞬時に確認できるのが特徴です。近年、建設業界でもこうした防災・事業継続に役立つITシステムの有用性が認識されはじめ、導入する会社が増えてきました。

あまり環境整備に費用を割けないという会社であっても、少ない負担で従業員が安全に働ける環境を作れるシステムが提供されているので、この機会に従業員の安否確認の自動化を検討してみてはいかがでしょうか。

日頃の安全対策と安否確認システムで、災害時の確実な事業継続と迅速な復旧を

建設業界に求められる災害対策や、おすすめの安否確認方法についてご紹介しました。建設業界では「建設機械・クレーン災害」「墜落・転倒災害」「崩壊・倒壊災害」が三大災害として知られていますが、それらは現場の安全対策や作業員へのフォローなどで未然に防ぐことが可能です。

一方、予測できない自然災害の被害については対策が難しいため、被災後のパニックを避けるためにも安否確認システムの導入や復旧工事の段取りを検討しておくと、従業員も安心して従事することができるでしょう。

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編集者:遠藤 香大(えんどう こうだい)


トヨクモ防災タイムズ 編集長 RMCA BCPアドバイザー トヨクモ株式会社で災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案や情報発信に携わる。トヨクモ防災タイムズではBCPや災害対策に関する記事の企画・執筆・編集を担当。専門家との連携や現場視点を取り入れながら、読者に寄り添う防災情報の発信を目指している。

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