学校で安否確認システムの導入が進む理由は? 必要性やおすすめツール、活用事例を分かりやすく解説
木村 玲欧(きむら れお)
学校への安否確認システムの導入を検討されている方にむけて、安否確認システムの機能やメリットについて解説します。日本は自然災害が多発する国であり、地震・津波に加えて、近年はゲリラ豪雨や水害などへの対応も求められます。安否確認システム導入によって対策をすれば、災害時の児童・生徒や保護者、教職員の不安解消につながり、安全・安心な学校運営を推進することにもつながります。
目次
学校で安否確認システムの導入が進む理由
近年、地震や豪雨などの災害が増えており、学校での安否確認システムの導入が進んでいます。安否確認システムの概要を知り、学校の災害対策を推進させましょう。
学校で安否確認システムの導入が進んでいる
2011年に発生した東日本大震災がきっかけとなり、学校の安否確認システム導入が進んでいます。
震災当時、首都圏で帰宅困難者が続出し、児童・生徒の安否を心配した保護者が学校からの引き渡しに対応するために職場から徒歩で帰宅するケースがあり、その後、学校側・保護者側双方のあり方について問題になりました。
しかし、災害直後のむやみな移動は二次被害につながります。安否確認システムを介して児童・生徒の安否情報を伝えられれば、保護者は安全な場所で待機することができます。
新型コロナウイルスの流行も安否確認システム導入が進むきっかけになっています。緊急事態宣言によって休校を余儀なくされたため、学校側が児童・生徒の健康状態の把握という意味での安否確認に向き合うきっかけになりました。
なお、災害時とは地震や津波、台風や豪雨、火山噴火などを差し、緊急事態はテロや感染症流行を含みます。安否確認は災害時・緊急事態時の両方において、その必要性が確認されるようになっているのです。
上記の理由から、以前は教職員内の連絡網であった安否確認は、対象を児童・生徒に広げたり、また安否確認の需要という観点からは保護者からの需要も高まっています。
安否確認システムとは
災害時に児童・生徒や教職員、保護者の所在を確認し、けが人や体調不良者、行方不明者を把握することが学校における安否確認です。
安否確認システムは、災害時や緊急事態のときに児童・生徒や保護者、教職員の所在や状況を自動で確認できます。事前に登録したメールアドレスに一括して安否確認の連絡を送信することができます。安否状況の確認や集計を自動化し保護者と共有するシステムによって、正確で迅速な安否確認を実現することができます。
安否確認システムでできること
安否確認システムの主な機能は次のとおりです。
- 災害時の安否確認メール一斉送信:メールを受け取った児童・生徒や教職員、保護者は安否状況を回答します。
- 自動集計:学校側は自動集計された回答状況を把握します。
- 再発信機能:回答がない生徒や保護者に自動で再発信します。メールだけでなく、たとえば電自動発信する機能を装備したシステムもあります。
- 掲示板、メッセージ:登録者が閲覧し書き込み可能な掲示板です。学校側と児童・生徒や保護者間の双方向の情報共有に役立ちます。
- 一斉訓練機能:災害時の対応で混乱しないために、模擬訓練をする機能です。訓練結果のレポートを分析することで、課題が明らかになり、よりよい学校安全対策につなげることができます。
学校における安否確認システムの必要性
災害発生時は普段と異なる環境におかれるため、混乱が起こりやすいといえます。人を介さず、迅速・確実に対処できる安否確認システムは、児童・生徒の安全を守るために有用です。
ここでは、安否確認システムの必要性について紹介します。
災害発生時は混乱が起こりやすい
災害時は教職員や保護者も混乱状態に陥りやすくなります。安否確認システムで、安否確認の一連の対応を事前に準備しておくことで混乱が避けられます。
小学生は学校にいるときは携帯電話やスマートフォンをもっていない場合もあり、保護者と直接連絡がとれないこともよくあります。
安否情報が分からないことで保護者は不安になり、各自の判断で、それぞれが個別に学校に連絡してきたり、引き渡しを求めて突然来校したりと、学校側にとっては、適切に対応することができなくなります。保護者に安心してもらい、このような保護者の動きを抑制するためにも、安否確認システムは有用です。
(参考:飯島 香織「大災害発生時の学校の児童生徒の安全確保と一斉帰宅抑制のための学校の情報基地としての役割─その現状と課題」)
電話回線が使えない可能性がある
災害時は回線の混雑や通信規制・通信規制によって、電話が使えない可能性があります。安否確認システムは電話が使えない環境でも使用可能です。
東日本大震災において、NTT、KDDI、Soft Bankなどで固定電話や移動通信機器の通信規制が行われました。固定電話は最大80~90%の規制、移動通信機器の音声通信は最大75~95%の規制でした。一方で、パケット通信は非規制もしくは音声通信に比べて低い割合の規制に留まりました。
(参考:総務省「東日本大震災における通信の被災・輻輳状況」)
災害時は児童・生徒の安否や保護者の状況の確認が必要
災害発生時の学校は児童・生徒の安全確保が最優先です。二次被害を受けないように児童・生徒を安全な場所に誘導した後、保護者に引きわたすまで安全・安心を確保しつづける必要があります。
安否確認システムによって、児童・生徒・保護者の安否確認情報を学校側と保護者側が共有することで、学校側は、安否確認の問い合わせ対応以外の対応に集中することができます。
なお、学校側からの「お迎え可能か」の質問に対して、保護者側から「可能/不可能」と2択で回答ができるシステムもあります。
学校に安否確認システムを導入するメリット
学校に安否確認システムを導入するメリットには、災害発生時に自動で安否確認メールが送信されること、ハードウェアとしての新たな設備投資がいらないことが挙げられます。
ここでは、安否確認システムを導入するメリットについて紹介します。
自動的に回答が送信される
災害の発生が夜間や休日で管理者・担当者が対応できないときも、安否確認システムは気象庁から発信された災害情報をもとに安否確認メールを自動送信します。
児童・生徒や教職員、保護者が安否確認メールに回答すると、自動集計されます。管理者・担当者は迅速に結果が確認でき対策をたてられるでしょう。安否確認システムによって個々に連絡をとる手間が省け、管理者・担当者は個別に対応しなければいけない特殊な案件のみの対応に尽力できます。
もしもの時の不安が解消される
多くの安否確認システムは掲示板機能やメッセージ機能をもっています。災害発生時に双方向に状況を確認できる環境は、保護者や児童・生徒、教職員の不安解消につながるでしょう。
教職員としては、災害時の児童・生徒の安全・安心を守ったり、災害からしばらく時間が経過した後も、安否確認以外の業務に専念できることは、大きなメリットです。
授業再開の目途が立ちやすい
安否確認システムの導入によって正確・迅速安否情報を収集することで、適切なタイミングで授業の再開ができます。
児童・生徒や教職員の多くが被災している状況で授業の再開は難しいでしょう。一方、児童・生徒が登校・出席可能な場合は速やかな授業の再開が求められます。安否確認システムを活用すれば、災害による混乱を最小限にして授業再開ができます。
設備コストがかからない
安否確認システムは児童・生徒や教職員、保護者のもつスマートフォンやパソコンがあれば利用できます。そのため、ハードウェア面での追加の設備投資が不要です。
初期導入費用が無料の安否確認システムは月額料金のみで利用可能です。安否確認システムに求める機能や利用人数に応じたプランを選べば、月額料金を抑えられます。
平時にも活用できる
掲示板や連絡網機能をもった安否確認システムは、平時の健康観察やアンケート調査、学校の連絡などに幅広く活用できます。新型コロナウイルス流行時の健康観察に、安否確認システムは活用されました。
安否確認システムを普段から使い慣れていれば、災害時もスムーズに利用可能です。
運営サポートが受けられる
安否確認システムの運用サポートを受けられることは大きなメリットです。導入時だけでなく導入後も安否確認システム管理会社のサポートが受けられます。
登録者や回答率を増やす方法や訓練の実施方法などの相談ができ、継続的に安否確認を中核に防災対策を促進させることができます。安否確認メールの文面提案が受けられるシステムもあり、管理者・担当者の負担が大きくならないこともメリットです。

安否確認システム導入に確認をしたいポイント
安否確認システムは、利用するために多くの人の個人情報を一か所へ集約させる必要があります。そのため、扱いには慎重になることが重要です。
ここでは、安否確認システムを導入するときに確認するべきポイントを紹介します。
個人情報の取り扱い
個人情報のセキュリティ対策が強化された安否確認システムを選ぶことが重要です。児童・生徒や教職員、保護者の氏名やメールアドレスなどの個人情報が安否確認システムに登録されるためです。
セキュリティの高いデータセンター運用や、ISMS認証取得の安否確認システムを選ぶとよいでしょう。
インターネット回線が使えないときの代替案
災害時は基地局の使用不能や回線混雑によってインターネットが使えなくなる場合があるため、代替案を考えておきましょう。
「災害用伝言ダイヤル(171)」や「災害用伝言版(web171)」の利用、「00000JAPAN」の活用なども視野に入れてもよいでしょう。
(参考:総務省「災害時には災害用伝言サービスやメールを御活用ください」)
(参考:一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会「00000JAPAN」)
機能と費用のバランス
安否確認システムに求める機能と費用のバランスを考え、費用負担が大きすぎないシステムを選びましょう。
安否確認システムを選ぶときは次の機能をチェックすることがおすすめです。
- 操作性:インストールや登録方法がシンプルで、非常時でも直感的に操作できる。
- ログイン方法が多様:パソコンだけでなく、スマートフォン、タブレット、携帯電話からもアクセスできる。
- 多言語対応:日本語だけでなく英語やその他の言語にも対応したサービスがある。
次の記事を参考に安否確認システムを検討してみることもおすすめします。
関連記事:防災士が解説!失敗しない無料の安否確認システムの選び方|有料版との違いも徹底比較
おすすめの安否確認システム3選
おすすめ安否確認システムを3つ紹介します。
- 安否確認サービス2
- ANPIC
- エマージェンシーコール
それぞれの特長について、以下より詳しく解説していきます。
安否確認サービス2
「安否確認サービス2」は、トヨクモ株式会社が提供している安否確認サービスです。導入実績は4,600件、継続率は99.8%で、学校や自治体、大企業など、組織の規模にかかわらず活用されています。
初期費用は一切かからず、月額料金は利用規模に応じて変動します。最低利用期間がないため、導入ハードルが低い点も特長です。
メールやアプリ、LINEなど、複数チャネルでの通知に対応している上に、ガラケーにも対応しています。利用しやすいシンプルなUIを採用しているので、スマートフォンの操作に慣れていない人でも使いやすいです。
加えて、災害時でも安定した稼働が期待できる点も強みです。国内だけでなく、世界各地にAWSを活用したデータセンターを分散しているため、大規模災害が発生した場合でも安定稼働を実現しています。
ANPIC
「ANPIC」は、月額5,130円から利用できる低価格が特徴である、産学連携の安否確認システムです。災害時のメッセージ受信方法として、LINE連携やアプリなど複数の手段に対応している点も特徴です。
初期登録の無料代行サービスがあったり、無料の導入説明会があったりと、サポートが充実しています。また、操作マニュアルや、よくある質問をまとめた「Q&A」も利用できます。
不明点が生じた場合も、サポートセンターへ電話で問い合わせることで迅速な対応を受けられ、スムーズな運用につながるでしょう。
エマージェンシーコール
「エマージェンシーコール」は、スマホアプリや電話、メールなど、複数の通信手段で、従業員の安否確認を行えます。スマホを持っていないスタッフでも、電話やFAXで回答できる点が特徴です。
また、各ユーザーにつき最大10件まで連絡先情報を登録できます。回答のないユーザーに対しては、最大99回まで繰り返し連絡することが可能です。これにより、職員の家族の安否確認を、担当者の負担を抑えながら実施しやすくなります。
(参考:安否確認システムのエマージェンシーコール | インフォコム株式会社)
実際に安否確認システムを導入した学校の事例
学校法人 駒込学園では、保護者への連絡や安否確認に活用していた学校連絡網システムの提供終了を受け、新たな連絡体制の構築が課題となっていました。加えて、コロナ禍に発生したサーバーダウンの事例から、緊急時における連絡網システムの安定稼働にも不安を抱えていました。
そこで、複数の安否確認システムを比較検討し、操作性の高さと安定した稼働実績を評価して安否確認サービス2の導入に至ります。
管理者権限を細かく設定できる機能を活用し、担任教師がクラス単位で生徒・保護者の安否確認を進められる体制を構築しました。これにより確認漏れのない安否確認体制を実現するとともに、「家族メッセージ」機能を通じて災害時の家族間の連絡手段も提供できるようになりました。
関連記事:学校法人 駒込学園|決め手は、稼働の安定性。学校での導入が進む、安否確認サービス2だから安心して活用できる
安否確認システムに関してよくある質問(FAQ)
災害時、教員や生徒に「通知が届かない」「気づかれない」リスクが心配です。
連絡手段が1つしかない場合、通信障害や見落としによって、教員や生徒、家族への到達率が下がる可能性があります。そのため、安否確認システムを比較する際は、複数チャネルで通知できるかを確認することが重要です。メールやアプリ通知など、複数の手段で配信できる仕組みがあれば、災害時でも連絡が届く可能性を高められます。
安否確認サービス2では、メール・アプリ・LINEでの通知に対応しています。さらに、災害情報と連動した自動一斉送信にも対応しており、迅速な安否確認を実施しやすい仕組みです。
国内の大規模災害が発生した際、システム自体が停止しないか心配です。
大規模災害に備えるうえでは、データセンターの設置場所や分散構成が重要です。
安否確認サービス2では、国内で災害が発生した場合でも影響を受けにくい運用体制を確保するため、データセンターやサーバーを海外にも分散しています。
コストを抑えたい一方、最低利用期間や初期費用で総額が増えるのは避けたいです。
安否確認システムを比較する際は、月額料金だけで判断しないことが重要です。月額の入口価格が安く見えても、初期費用や契約条件によって総コストが高くなるケースがあります。
そのため、以下の3点をセットで確認すると、導入後の費用を把握しやすくなります。
- 初期費用の有無
- 最低利用期間(契約縛り)の有無
- 無料トライアルの有無
たとえば「安否確認サービス2」は、以下の条件で利用できます。
- 初期費用:無料
- 月額料金:6,800円〜
- 最低利用期間:なし
- 無料トライアル:30日
初期費用や契約期間の制約がないため、コストを抑えて導入したい企業に適したサービスといえます。
学校、児童・生徒の安全を守る安否確認システムを導入しよう
今回は学校で安否確認システムが導入される理由や必要性、メリットについてお伝えしました。東日本大震災や新型コロナウイルス流行をきっかけに安否確認システムの需要が高まっています。災害時の安否確認メール自動一斉送信機能や集計機能によって、迅速な安否確認が可能です。安否確認システムの導入は、児童・生徒や保護者、教職員の不安解消につながります。
今回紹介した、トヨクモの「安否確認サービス2」は導入にかかる初期費用が無料です。かんたんに安否確認システムが導入できますので、興味を持った人は相談してみてはいかがでしょうか。
監修者:木村 玲欧(きむら れお)
兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授 早稲田大学卒業、京都大学大学院修了 博士(情報学)(京都大学)。名古屋大学大学院環境学研究科助手・助教等を経て現職。主な研究として、災害時の人間心理・行動、復旧・復興過程、歴史災害教訓、効果的な被災者支援、防災教育・地域防災力向上手法など「安全・安心な社会環境を実現するための心理・行動、社会システム研究」を行っている。 著書に『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)、『超巨大地震がやってきた スマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社)、『戦争に隠された「震度7」-1944東南海地震・1945三河地震』(吉川弘文館)などがある。 プロフィール:https://kimurareo.com/profile/
編集者:坂田 健太(さかた けんた)
トヨクモ株式会社
企業の防災対策・BCP策定を支援するメディア「トヨクモ防災タイムズ」を運営。防災・BCPの専門家として、セミナー講師や専門メディアでの記事執筆も行う。 主な執筆記事に「BCPって何? ~中小企業の経営者が知っておくべき基礎知識~」「他人事では済まされない! BCP未策定が招く経営危機と、”備える”ことの真の価値とは?」(ともにニッキン ONLINE PREMIUM)などがある。