【企業の防災担当者必見】避難訓練シナリオの作り方|効果を高める5ステップと注意点

トヨクモ防災タイムズ編集部
近年、日本各地において地震や台風、集中豪雨などの自然災害が頻発しています。災害発生時において従業員の命を守り、パニックを防止するために不可欠なのが、実効性のある避難訓練です。そして、その訓練の効果を最大限に引き出す鍵となるのが、避難訓練シナリオの作成です。
この記事では、企業の防災担当者や経営者に向けて、効果的な避難訓練シナリオを作成するための具体的な5つのステップと、作成時における注意点を分かりやすく解説します。
この記事を参考に、形骸化せず、緊急時に役立つ避難訓練の実現を目指してください。
なお、災害時の迅速な安否確認は、従業員の安全確保と事業継続計画(BCP)の初動対応の要です。トヨクモの『安否確認サービス2』は、安否確認を自動化・効率化し、訓練にも活用できるツールです。

目次
避難訓練シナリオとは?
避難訓練シナリオとは、想定される災害発生時の状況を具体的に描き出し、従業員が取るべき行動や手順を時系列で示した計画書・台本のようなものです。
単に「避難訓練を実施する」だけでは、緊急時に従業員がどのように行動すべきか分からず、混乱を招く可能性があります。避難訓練時にシナリオを用意しておけば、訓練参加者は具体的な状況をイメージしやすくなり、自身の役割や取るべき行動を理解しやすくなるでしょう。なお、避難訓練シナリオを作成する目的は、主に以下のとおりです。
- 従業員の安全を確保する
- リスクの低減と業務の早期再開を目指す
- 組織内の連携を強化する
シナリオに基づいた訓練を繰り返すとパニックにならず、冷静かつ迅速・安全に避難する行動が身につき、従業員の安全を確保しやすくなります。明確なシナリオに基づき迅速な避難と安否確認を実施することによって、被害を最小限に抑えつつ事業復旧をスムーズに進められるでしょう。
また、企業全体で避難訓練シナリオを共有し、各部署や従業員の役割を明確にすれば、組織内の連携が強化されて災害時に迅速かつ適切な行動が可能となります。
避難訓練におけるシナリオ作成のメリット
災害は予測が難しく、一瞬で企業の業務を停止させる可能性があります。事前に避難訓練シナリオを作成し、定期的に訓練を実施することによって、以下のようなメリットを得られます。
- 災害発生時の冷静な対応を可能にする
- 避難経路の確保とスムーズな誘導を実現する
- 安否確認の迅速化が期待できる
それぞれについて見ていきましょう。
災害発生時の冷静な対応を可能にする
予期しない災害が発生した際、人間はパニックに陥りやすく、適切な判断ができなくなる可能性があります。しかし、シナリオに基づいて避難訓練を事前に繰り返し行っていれば、緊急時の対応力が向上し、従業員が冷静に行動できるようになります。
避難経路の確保とスムーズな誘導を実現する
避難時の混乱を避けるためには、事前に避難経路を決めておくことが重要です。また、従業員が避難場所を把握していれば、災害時に素早く安全な場所へ移動できます。シナリオを作成していなければ、安全な避難経路や避難場所が分からず、被害が拡大する恐れもあるでしょう。従業員の命を守るためにも、事前に避難訓練シナリオは作成すべきです。
安否確認の迅速化が期待できる
「誰が、いつ、どのように安否確認を行うか」をシナリオに具体的に組み込み、訓練で実践すれば安否確認の手順が確立されます。
災害発生直後に従業員の安否情報を迅速かつ正確に把握することは、救助活動の要否判断にとどまらず、事業継続に向けた人員確保や指示系統の確立といった災害後の初動対応において極めて重要です。安否確認の手順を確立し、訓練により習熟しておくことは企業の存続にも直結します。
災害時における安否確認の迅速化に安否確認システムを活用すれば、さらに迅速かつ効率的な対応が可能となります。トヨクモの『安否確認サービス2』のようなシステムは、自動で安否確認通知を送信し、回答をリアルタイムで集計できるため、担当者の負担を大幅に軽減できるでしょう
避難訓練シナリオを作成する際の具体的なステップ
避難訓練シナリオを作成する際は、以下の手順で行いましょう。
- 訓練の目的を明確にする
- 想定する災害種別を決定する
- 避難経路と避難場所を設定する
- 避難訓練中の役割分担を決定する
- 訓練後の評価・改善を実施する
それぞれについて解説します。
1.訓練の目的を明確にする
避難訓練シナリオを作成する際は、目的を明確にしましょう。「避難訓練を通して何を成し遂げたいか」「どのような目的で避難訓練を行うか」などを明確にすることにより、より有効な避難訓練を実施できます。
具体的には、以下のような目的が挙げられます。
- 従業員が安全に避難できるようになりたい
- 災害発生時に冷静な対応を取れるようにしたい
- 安否確認システムの運用を定着させたい
- 設備や避難経路の問題点を洗い出し、改善に役立てたい
目的を明確にすれば、企業にとってもっとも重要な部分を強化したシナリオを作成することが可能です。
2.想定する災害種別を決定する
企業の立地や建物の構造により、どの災害を想定するべきかが変わります。起こり得る災害を想定した上で、シナリオを作成しなければいけません。予想される主な災害は、以下のとおりです。
起こり得る災害の種類 | シナリオのポイント |
地震 | ・地震速報を流す・被害状況を確認して、状況に応じた避難誘導を行う |
火災 | ・非常ベルや火災報知機を作動させる・消防署へ連絡する・避難ルートを確認する |
水害 | ・水害状況を確認する・状況に合わせた避難先を選定する |
台風・暴風 | ・被害状況を確認する・雨風に強い場所へ避難する |
避難訓練を計画する際、最初に考えるべきことはどの災害に備えるのかです。企業の立地や業種によってリスクが異なるため、起こり得る災害を想定をしてシナリオを設計しましょう。
3.避難経路と避難場所を設定する
安全な避難経路を確保するためには、次のポイントに留意してシナリオを作成しましょう。
具体策 | |
避難ルートを現場レベルで検証 | ・建物内の非常口 ・階段の位置を把握 ・混雑が予想されるポイントの解消策(避難誘導役の配置など) ・エレベーターは使用不可になるため、階段での避難方法を事前に確認 |
避難場所の明確化 | ・一時避難場所(屋外スペースや社内の安全エリアなど) ・最終的な集合場所(指定避難所、近隣の広場など) |
避難訓練シナリオを作成する際は「どのタイミングで、どこに集合するか」を明確に決めておく必要があります。
4.避難訓練中の役割分担を決定する
避難訓練では各部署ごとに責任者を決め、スムーズな対応を図ることが重要です。具体的には、以下の役割を明確に設定しましょう。
具体的な役割 | |
初動対応 | ・災害発生時に警報を発する人 ・従業員に避難指示を出す人 ・危険エリアの確認を行う人 |
避難誘導 | ・各エリアの責任者が避難経路へ誘導する人 ・パニックにならないよう指示を出す人 ・避難が遅れた人をサポートする人 |
安否確認 | ・避難後に全員の安否を確認してリスト化する人 ・安否確認システムを活用して即時報告する人 ・必要に応じて救助要請の判断を行う人 |
上記のように従業員全員の役割を明確にしておくことによって、実際の災害時に迅速な対応が可能となります。
5.訓練後の評価・改善を実施する
避難訓練は一度実施するだけでは意味がなく、定期的に課題を洗い出し、改善していくことが重要です。避難訓練の終了後は、以下の観点で評価を行いましょう。
具体的なポイント | |
実際に想定通りに避難できたか | ・訓練開始から全員避難完了までの時間を計測 ・混雑した場所はどこかを確認 ・パニックになった人がいた場合、対処の改善策を検討 |
安否確認のスムーズさ | ・全員の安否確認に要した時間 ・情報伝達のスムーズさ(通信障害時の対応など) ・報告フローが適切だったか、修正すべき点はないかを確認 ・安否確認システムの適正性 |
次回の訓練に向けた改善点 | ・訓練を通して見直すべきポイントの有無 ・改善策によって得られる効果 |
避難訓練シナリオを効果的に作成するためには、計画の細部にまでこだわり、実際の災害時に確実に機能する訓練を設計することが重要です。評価を繰り返し行うことにより避難訓練の精度を高め、より実践的なシナリオへと進化させることが可能となります。
避難訓練シナリオの実効性を高めるポイント
避難訓練シナリオの実効性を高めるためのポイントは、主に以下のとおりです。
- 実際の職場環境を考慮する
- 従業員の年齢・職種に応じた対応を考慮する
- 実際の災害を想定した訓練を行う
- 定期的なシナリオ更新を行う
それぞれについて解説します。
実際の職場環境を考慮する
避難訓練シナリオは机上の空論にならないよう、実際の職場環境を反映することが不可欠です。従業員が働くオフィスや工場の設備を考慮し、現場レベルで実際に避難できるかを検証する必要があります。
たとえば「非常口の位置をすべての従業員が把握できるように周知しているか」なども事前に確認してください。避難の際に障害となるものがないかを確認したり、混雑しやすい場所の特定したりすることも重要です。
上記のような内容は、企業の環境によって大きく異なります。避難訓練シナリオを実際の職場環境と照らし合わせることによって、訓練がより現実的なものになり、実際の災害時に役立つシナリオを作成できます。
従業員の年齢・職種に応じた対応を考慮する
従業員の年齢や業務内容によって、避難行動が異なる場合があります。とくに、高齢の従業員や体の不自由な方がいる場合は、別途対応を検討することが重要です。
たとえば、車椅子や杖を使っている従業員に対しては、スムーズに避難できるように補助者を決めておくのも有効策です。作業中に使用している機械を停止してから避難できるように整備したり、高層階などの階段の使用が難しい場合の代替ルートを確保したりするのも必須といえます。
全従業員が適切に避難できるような配慮を盛り込むことによって、避難訓練シナリオの実効性が向上します。
実際の災害を想定した訓練を行う
避難訓練をより実践的なものにするためには、単なる机上の訓練ではなく、実際の災害を再現することがポイントです。
たとえば、地震が発生した場合を想定した訓練を行う場合は、実際に電気を消して懐中電灯や誘導灯が機能するかを確認しましょう。火災であれば煙が充満している状況を想定し、視界不良で避難する練習をします。
ほかにも、通信が途絶えた場合の対応を想定し、口頭指示や掲示板を活用する方法を確認しましょう。災害時のリアルな状況を再現することによって、訓練の効果を最大限に引き出し、実際の災害発生時に役立てられます。
定期的なシナリオ更新を行う
企業の環境や社会状況は変化するため、避難訓練シナリオは定期的に見直し、最新版へと更新しましょう。たとえば、新しい設備が導入されたときは、避難経路に影響があるかを確認します。従業員の人数が変わったときであれば、集合場所の調整や避難方法の変更を行います。
また、過去の訓練で改善すべき点が見つかったときは、評価結果を反映して次回の訓練に活かすことも重要です。これらを意識すれば、常に最新の状況に対応できる避難訓練シナリオを維持できます。
企業の防災力を高めるにはトヨクモの『安否確認サービス2』がおすすめ
シナリオを作成して実効性のある避難訓練を実施すれば、従業員の命を守りやすいです。とくに地震をはじめとする自然災害はいつ発生するか分からないため、避難訓練による備えは必須とでしょう。
しかし、避難訓練を実施しただけでは従業員の命を守ったり、企業の存続につながったりするものではありません。いかなる場合であっても従業員と連携できる体制を構築し、状況に応じた判断・行動を迅速に起こせる準備をしておくことは、企業における防災力の向上に貢献します。
どのような状況下でも速やかに従業員の状況把握をするためには、トヨクモが提供する『安否確認サービス2』の導入がおすすめです。気象庁の災害情報と連動して自動で安否確認通知を送信できるシステムで従業員からの回答結果も自動で集計できるため、安否確認にかかる手間を大幅に削減できます。
また、安否確認サービス2は、毎年9月1日に全国一斉訓練を実施しており、実際の災害時に近い負荷をシステムに急激にかけ、安定稼働できるかどうかを確認しています。全国一斉訓練は実施日と時間帯のみを公開しているため、詳細な開始時刻は管理者にも分かりません。実際の災害時と同じような状況下で定期訓練を実施できるのも魅力です。
まとめ:避難訓練シナリオを作成して従業員の命を守ろう
効果的な避難訓練シナリオの作成は、企業の防災対策を強化し、従業員の安全を守るための重要な取り組みです。本記事で紹介した5つのステップとポイントを参考に、自社に合った実践的なシナリオをぜひ作成してください。
とはいえ、重要なのはシナリオを作成し、それに基づいた訓練を定期的に実施して評価・改善を継続していくことです。形骸化させず、常に「緊急時に役立つのか」という視点で見直しを続けることにより企業の危機管理能力を高めます。
また、災害時の迅速な安否確認は、避難行動と並んで極めて重要です。トヨクモの『安否確認サービス2』は、安否確認の自動化・効率化はもちろん、掲示板機能による情報共有など、BCPの初動対応を強力にサポートします。
初期費用は不要で、30日間の無料お試しも可能です。避難訓練とあわせて、安否確認体制の強化もぜひご検討ください。従業員の命と自社の未来を守るために、今日からできる備えを始めましょう。