ホテルにおけるBCPの策定手順とは?宿泊客・従業員を守るポイントも解説

トヨクモ防災タイムズ編集部
ホテル事業においては、従業員の安全確保はもちろんのこと、不特定多数の宿泊客や利用客の安全を守るという極めて重要な責任があり、しっかりとしたBCP策定が求められます。災害発生時に実際に使えるBCPを策定するには、BCPの重要性を理解し、策定ステップやポイントを把握することが必要です。
そこでこの記事では、ホテルにおけるBCP策定の重要性や策定手順を紹介します。さらに、具体的な策定ポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
ホテルにおけるBCPの重要性
近年では、自然災害の増加や感染症の流行など、ホテルを取り巻くリスクが高まってきています。このような状況下で、BCP策定は単なる「備え」ではなく、持続可能なホテル経営のための重要な経営戦略です。ホテルは不特定多数の人が利用する施設なので、災害発生時には多くの人の安全を確保することが求められます。
BCP策定がもたらす主なメリットは、以下のとおりです。
- 宿泊客・従業員の安否確認を迅速に行える
- 緊急時の避難経路を確保できる
- 情報共有を的確に行える
- 早期復旧による地域貢献にも期待できる
- 信頼度アップや災害後の経営回復につながる
BCPを策定すれば、緊急時の避難経路や安否確認、情報提供などの対応を迅速かつ的確に行えます。適切な訓練や対策を行い、従業員が安心して働ける環境を整備する必要があります。
また、ホテルは災害時に地域社会にとって重要な役割を担います。BCP策定によって早期復旧を図ることにより、地域にも貢献できます。災害時に地域へ貢献することは信頼度アップなどにもつながり、その後の会社経営の回復に貢献できるのも、BCP策定の大きなメリットです。
このように、BCP策定は従業員・企業・宿泊客に加え、地域住民や観光客の安全確保にとって重要な役割を持ちます。
ホテル経営におけるBCP策定のステップ
ホテル経営におけるBCP策定は、以下のステップで進めます。
- 基本方針の策定
- リスクの洗い出し・影響度分析
- 重要業務の特定
- 対策の検討
- 具体的な手順の整理
- 訓練・検証
それぞれのステップごとに、詳細を解説します。
1.基本方針の策定
まずは、基本方針の策定を行います。ここでは、BCPの目的・目標・基本方針を明確にし、何を優先して行うべきなのかを決めることが重要です。
基本的には、利用客と従業員の安全確保が最優先となります。安全を確保したあと、早期の事業再開やサービス提供維持、さらに地域社会への貢献や協力体制の構築に目を向けていくと、スムーズに基本方針が定まるはずです。
2.リスクの洗い出し・影響度分析
次のステップでは、ホテルが直面する可能性のあるリスクを、すべて洗い出します。
ホテルを運営する上で抱えるリスクは、地震・台風・洪水などの自然災害に加え、感染症の流行などが挙げられます。また、火災や爆発事故、犯罪行為などもリスクとして加わってくるため、自社の運営体制を踏まえて洗い出しましょう。
そのほかにも、システム障害や情報漏洩、風評被害といったリスクもあります。これらのリスクがホテル経営に与える影響を分析し、優先度の高いリスクを特定することが大切です。
3.重要業務の特定
ホテル業界におけるBCP策定において、重要業務の特定は欠かせないプロセスです。緊急時には、ホテル事業の存続に関わるもっとも重要な業務を優先的に復旧する必要があります。そのため、とくに重要な業務を洗い出して優先順位をつけておきましょう。
たとえば、ホテルにおいてはまず、顧客への宿泊サービスの提供は最重要の業務です。宿泊サービスの提供には、予約受付やチェックイン・アウト、客室管理、清掃などが含まれています。
次に、料飲サービスの提供も重要な業務と位置づけられます。レストランや宴会場の運営は、顧客満足度と収益に大きく影響するため、早期の事業継続が求められるでしょう。
さらに、安全・安心な滞在環境の提供も重要な業務の1つです。施設設備の維持管理、セキュリティ対策や災害発生時の避難誘導などは、顧客の安全確保と信頼維持に不可欠となります。
4.対策の検討
リスクの洗い出しが終わったら、いよいよ対策の検討を行いましょう。
特定したリスクに対して、具体的な対策を検討していきます。たとえば、感染症が発生したのであれば、従業員の健康管理や施設全体の消毒を行うことが優先です。自然災害であれば、避難経路を明確にして安全を確保するほか、迅速な安否確認が求められます。
そのほかにも情報システムのバックアップ、復旧体制の構築、情報発信体制の整備なども行いましょう。
5.具体的な手順の整理
災害発生時は、落ち着いて行動するのが難しいケースもあります。そのため、あらかじめ具体的な行動手順を整理しておくとよいでしょう。
たとえば、緊急時の役割分担を決めておけば、従業員それぞれが自身の行動を事前に把握でき、動きが把握しやすくなります。「誰が」「何を」「いつ」やるのか、できるだけ細かい内容を決めておくことが大切です。
また、管理者や責任者がどのような流れで指示を出すのか、指揮命令系統の明確化をしておく必要もあります。行動手順については、社内で決めておくだけでなく、必ず従業員全員に周知しましょう。
6.訓練・検証
BCPは、策定するだけでは上手く機能しません。実際に災害が起こった際、慌てずに対処するのは難しく、混乱状態になる可能性が高いと考えられます。
落ち着いて行動できるようにするためには、訓練・検証が欠かせません。災害が発生したときの状況をできるだけ細かく再現し、スムーズに対応できるか検証します。訓練をしておけば、従業員もイメージが付きやすくなります。
訓練・検証は一度だけ行うのではなく、繰り返し実施してBCPの見直しをすることも大切です。
ホテルにおけるBCP策定・運用のポイント
次に、ホテルにおけるBCP策定・運用のポイントを6つに分けて紹介します。
宿泊客の安全確保が最優先
ホテルは多くの人が利用する施設であり、災害発生時には宿泊客の安全確保が最優先です。
- 避難経路の確保
- 避難誘導・安否確認
- 情報提供体制の整備
- 非常用電源の確保
- 食料・飲料水・医薬品などの備蓄
まずは、緊急時の避難経路の確保・誘導・安否確認などを優先しましょう。
緊急事態が発生した際には、ホテルの宿泊客の避難・安全確認は原則としてホテル側が行います。落ち着いて誘導ができるよう、普段から従業員にも周知しておくことが大切です。
また、安全を確保したあとは食料・飲料水・休める場所などの確保が必要になります。ホテルの場合、客室が避難所として使えるケースが多いため、各部屋をスムーズに解放できる準備を整えておきましょう。
従業員の安全確保と体制構築
従業員については、安否確認や安全な避難場所への誘導に加え、従業員の家族への情報提供や支援体制も重要になります。出勤していない従業員、その家族においても迅速に安否確認できる体制を整えましょう。
また、緊急時に従業員がスムーズに宿泊客を誘導できるよう、役割分担をしておくことも大切です。焦らず、顧客対応ができるように指導をする必要があります。
そのほかにも、事業継続による雇用維持や給与支払いも視野に入れてBCPを策定してください。早い段階での復旧ができれば、給与の未払いなどが発生しにくくなり、従業員も安心できる環境になります。さらに、給与や身体的なサポートだけでなく、精神的なケアが必要な場合も想定しましょう。
多部門連携の確立
ホテル経営においては多岐にわたる業務を考慮しなければならないため、各部門の連携体制を確立することも重要です。
各部門の役割分担や指揮命令系統の明確化に加え、定期的な訓練やシミュレーションの実施を行い、実際に災害が起こった際にスムーズに動ける環境を整えましょう。
インバウンド需要への対応
外国人宿泊客への情報提供や多言語対応など、以下のようなインバウンド需要に対応する内容を盛り込むことも重要です。
- 言語での情報提供や案内表示
- 外国人宿泊客の文化・宗教・習慣への配慮
- 外国語対応可能なスタッフの育成
このように、近年増えている外国人宿泊客にもしっかりと対応することにより、信頼や満足度を高められます。
地域・取引先との連携強化
地域においては、一時避難場所としての施設提供、地域住民への情報提供などが必要です。地域住民・医療機関・消防・警察などと連携を行い、スムーズに対応できるようにしましょう。
また、災害ボランティアの受け入れや支援物資の提供なども、災害時にホテルができることの1つです。早期に回復して営業を再開できれば、地域経済を活性化させることにもつながります。ホテル事業はBCPを策定しておくことにより、災害時に観光客や宿泊客の安全確保を行うだけでなく、地域社会にも大きく貢献できます。
取引先においては、災害発生による営業停止に伴い、支払い条件の柔軟な対応などをしてもらう必要があるでしょう。場合によっては取引先との情報共有、協力体制の構築などを行い、地域社会や宿泊客に貢献することも重要です。
定期的な見直しと改善
状況は常に変化していくものなので、定期的なBCPの見直しも大切です。BCPの実効性を維持し、常に最新の状況に対応できるようにしましょう。
見直しをした際は、従業員に都度しっかりと周知を行い、繰り返し訓練やシミュレーションを行う必要があります。
災害時に備えてホテルで普段からできる対策
日頃からの地道な減災対策は、BCPの実効性を高める上で非常に重要です。災害時に備えてホテルで普段からできる対策としては、以下のようなものがあります。
- 危険物の固定・撤去・移動
- 非常持ち出し品の準備
- 備蓄品の準備
- 従業員の教育・訓練
- 施設の安全点検・強化
たとえば、危険物の固定・撤去・移動では、家具や什器などを固定し、転倒や落下を防ぎます。持ち出し品の準備では備蓄をするだけでなく、定期的に点検して賞味期限や電池の消耗などを確認することが大切です。
これらの対策を普段から行えば、災害発生時に宿泊客と従業員の安全を確保し、被害を最小限に抑えることができます。
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BCP策定で宿泊客や従業員を守ろう
今回は、ホテル事業におけるBCP策定の重要性やポイントを解説しました。
ホテルにおいては災害時に従業員だけでなく、宿泊客の安全を守る必要もあるため、BCPの策定は非常に重要です。BCP策定は地域社会を守ることにもつながり、企業としての信頼も得やすくなります。
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