必要なBCP備蓄品リスト一覧!公式ガイドラインを基に解説

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

「BCPで準備すべき備蓄品って、何をどのくらい揃えればいいんだろう?」とお悩みの防災担当者は多いのではないでしょうか。

大規模な災害が発生した際、従業員の命と安全を守り事業を速やかに継続させるためには、備蓄品を揃えて置いておく必要があります。しかしながら、基本の備蓄品リストを揃えるだけでは、実際に災害が起きた場合に「量が足りない」「保管場所から取り出せない」といった問題が発生するリスクがあります。

そうならないためにも、まずは基本の備蓄品リストを確認したうえで、自社の状況に応じて必要な物品・数量を決め、賞味期限・消費期限が来るまえに定期的に入れ替え、適切に保管することが重要です。

BCPの基本の備蓄品リスト

この記事では、公的なガイドラインを参考にしながら、まず最低限必要な備蓄品について解説したあと、従業員以外のバッファをどの程度考えておくか、自社の業態や立地に合わせて「3日分」にするのか「7日分」用意するのかなど、自社に合わせた備蓄品を過不足なく揃えるステップを説明します。

さらに、備蓄品の手配・購入だけでなく、保管・管理のポイントも詳しく解説していきます。

本記事をお読みいただくことで、自社の規模やリスクに即した備蓄品を準備できるようになるはずです。ぜひ最後までお読みください。

BCP備蓄品で最低限揃えるべき品目リスト

本章では、企業が最優先で揃えるべき基本的な備蓄品の品目について、必要性や準備すべき理由も含めて、網羅的に解説していきます。

BCP備蓄品で最低限揃えるべき品目リスト
・食料品・飲料水(3日分)
・防寒・寝具用の毛布(1人1枚)
・簡易トイレ・衛生用品(3日分)
・停電対策(懐中電灯・非常用発電機・UPSなど)
・応急処置のための救急箱(常備薬や包帯など)
・情報収集・伝達機器(ラジオ・携帯・電池など)
・避難・安全グッズ(持ち出し袋・ヘルメットなど)

なお、1章で説明するのは、東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」にもあるような「最低限の備蓄品」の基本的な説明となります。

実際に必要な種類・量の早見表は「【早見表】BCP対策で必要な備蓄品リスト」で、社内での必要量を決めるための流れは「自社に最適な量・品目の備蓄品を備えるステップ」、保管や管理のポイントについては「BCP備蓄品の保管・管理ポイント」で後述します。

飲料水・食料(3日分)

企業のBCP対策において最優先で備えておくべき備蓄品は、飲料水と食料(主食類)です。

東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」では、災害が起きて3日間は救助・救命活動を優先させる必要があり、従業員の一斉帰宅がその妨げにならないように施設内に待機させるよう努めるべきとされています。

【備蓄しておくべき食料品の種類】

飲料水ペットボトル入り飲料水
主食類アルファ化米・クラッカー・乾パン・カップ麺

従業員の「3日分の水と食料」を備蓄するとともに、外部の帰宅困難者(来社中の顧客・取引先など)のために10%程度の量を余分に備蓄することも推奨されています。

さらに整備したい場合
・必要に応じて、企業ごとに必要な食料品の種類を検討しましょう。たとえば介護施設などでは、主食類だけでなく、高齢者でも食べやすい嚥下食(えんげしょく)や経口補水液なども備蓄すべきでしょう。
・また、主食類だけでなく缶詰おかずを用意すべきかどうかなど、社内で検討してみることも必要です。

防寒・寝具用の毛布(1人1枚)

社内で3日間待機する際の防寒・就寝対策として、毛布(またはそれに類する保温シート)は「1人あたり1枚」を必ず確保すべきBCP備蓄品です。

東京都の「帰宅困難者対策ハンドブック」においても、水や食料と並んで企業が備えるべき基本項目として明確に位置づけられています。

東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」備蓄の目安
▲出典:東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」

とくに停電が発生して暖房設備が停止すると、寒さにより従業員が体調を崩すリスクが高まります。低体温症などの危険を防ぎ、安全かつ健康的に待機できる環境を維持するために不可欠です。

なお、毛布は真空パックしたものを用意すれば、省スペースで備蓄でき、カビなども防げるため便利です。

さらに整備したい場合
・防寒対策としては、必要に応じて、カイロや、乾電池で使用できる冷暖房機器なども準備しておくと安心です。
・就寝環境をしっかり整備したい場合には、寝袋や簡易ベッド、空気を入れて膨らませるエアーベッド・エアーマットなどを用意し快適に過ごせるようにしましょう。

トイレ用品(3日分)

水や食料と並び、発災後に従業員が社内で3日間待機するために決して欠かすことができないBCP備蓄品が、簡易トイレやトイレットペーパーなどの衛生用品です。

断水や下水管の破損・詰まりによりオフィスの水洗トイレが使用できなくなる可能性があるため、備蓄しておくことをおすすめします。

東京都の「帰宅困難者対策ハンドブック」においても、企業内待機を支える備蓄品の例として、簡易トイレや衛生用品(トイレットペーパーなど)、敷物(ビニールシートなど)の記載があります。

【備蓄しておくべき備蓄品の種類】

簡易トイレ・携帯トイレ1人1日5回を目安に「人数×5回×3日分」を確保する
衛生用品水が使えない環境下でも清潔を保つために、トイレットペーパーやアルコール除菌シート、手指消毒液を用意する
敷物ビニールシート・養生シートなど。避難・待機スペースの区切り、衛生管理区域(一時的なゴミ置き場など)の確保にも活用できる

簡易トイレをはじめとする衛生資材を計画的にBCP備蓄品として導入しておくことで、水洗トイレが使えない状況下でも、安心・安全な社内待機体制を維持できます。

停電対策(懐中電灯・非常用発電機・UPSなど)

停電対策としての懐中電灯や電源設備(非常用発電機、蓄電池、ポータブル電源、UPSなど)も、優先的に確保すべき重要なBCP備蓄品の一つです。

BCPで停電対策が必要になる大きな理由は、「館内の安全確保が難しくなること」と「大切な業務データが損失すること」の2点にあります。照明や非常用設備が止まると、被災時に社内に留まる従業員や来訪者の安全を守れなくなる恐れがあります。さらに、サーバーやPCが突然ダウンすると重要データが破損し、事業の復旧に深刻な遅れが生じます。

【BCPにおいて備えておくべき停電対策の例】

懐中電灯暗闇での移動や避難経路の確保、夜間の作業・誘導に必須
乾電池懐中電灯やラジオ、各種防災機器を稼働させるための予備電源
非常用発電機燃料で発電し、長時間の停電や大型設備・ラインの稼働維持に役立つ
UPS(無停電電源装置)停電や瞬時電圧低下が発生した際、蓄電エネルギーで電力を供給し続ける装置。サーバーや業務PCに接続しておくことで、停電時にも瞬時に切り替わりデータの破損を防ぐ
ポータブル電源内蔵バッテリーに電気を蓄えておき、外部機器へ給電できる持ち運び可能な電源。ノートPCや通信機器などの電源確保に最適

介護施設・医療機関や、一瞬の停電も許されない基幹サーバー・大規模IT設備の維持を行う必要がある場合などは、別途「産業用蓄電池」も検討しておくことをおすすめします。

また、スマートフォンや業務PCの充電切れを防ぐため、従業員の協力のもと、1人1台モバイルバッテリーを用意しておくこともおすすめです。

応急処置のための救急箱(常備薬や包帯など)

医薬品・救急グッズ・衛生用品も、企業のBCP対策において備えておくべき備蓄品の一つです。

万が一、社内で急病人や怪我人が発生しても、大災害時にはすぐに救急車が到着できないことも考えられます。そのような場合に備えて、社内で手当てや応急処置ができるよう医薬品や衛生用品を準備しておきましょう。

【備蓄しておくべき応急処置のための備蓄品の例】

常備薬風邪薬や解熱剤、胃薬、湿布、かゆみ止めなど
救急箱包帯やテープ、消毒液、はさみ、ピンセット、ガーゼ、医療用手袋、マスク、体温計などを備えた救急箱を用意する
AED(自動体外式除細動器)社内の設置場所を全員で共有し、定期的なバッテリーチェックと操作方法の確認を行っておく

なお、持病を持つ従業員が必要な医薬品については、普段から数日分の常用薬を持ち歩くか、社内のデスク等に予備を保管するよう事前に周知しておきましょう。

また、AED(自動体外式除細動器)が設置されている場合は、設置場所を全員で共有し、定期的なバッテリーチェックと操作方法の確認を行っておくことも必要です。

情報収集・伝達機器(ラジオ・携帯・電池など)

大規模な災害が発生した際、正確な被害状況の把握や社内への指示、外部との連絡を確保するための携帯ラジオ・携帯電話(スマートフォン)・乾電池は、必ず会社に配備しておくべきBCP備蓄品です。

自治体が発令する「一斉帰宅抑制」の要請や解除見込み、公共交通機関の運行・復旧状況などの重要情報は、テレビやラジオ、自治体公式SNSなどを通じて発信されます。しかし、大規模停電や通信障害が発生すると、スマートフォンやPCによる情報収集が困難になる恐れがあります。

そうした環境下でも、乾電池や手回し充電で確実に音声情報を取得できる携帯ラジオは、社内待機や安全確認の判断を下すうえで欠かせない情報インフラとなります。

また、取引先との連絡や従業員の安否確認には、普段使用している携帯電話やスマートフォンが必要になります。予備のバッテリーを複数用意し、電池切れや停電に備えましょう。

【備蓄しておくべき情報収集・伝達機器の例】

手回しラジオ自力で電力を確保・受信用稼働ができる
乾電池式ラジオ誰でも直感的に操作でき、電池交換によりすぐに長時間連続使用できるタイプ
乾電池ラジオやその他の小型機器を維持できるよう、予備の乾電池を十分な数量確保
携帯電話・スマートフォンのバッテリーモバイルバッテリーや多機能ポータブル充電器など、スマートフォンの充電切れを防ぎ通信を維持するために準備

連絡手段を途絶えさせないよう準備しておくことで、従業員の安全確保と適切な社内指示を速やかに行うことができます。

避難・安全グッズ(持ち出し袋・ヘルメットなど)

外部避難や館内での二次災害を防ぐための避難・安全グッズも、従業員の身の安全を確実に確保するためにあらかじめ用意しておくべきBCP備蓄品です。

災害時には、地震による家具の転倒やガラスの散乱、火災の発生など、オフィス内で様々な危険が生じます。とくに建物の損傷や津波・水害のリスクがある場合は、安全に避難することが重要となります。

【備蓄しておくべき避難・安全グッズの例】

避難グッズ非常持ち出し用袋・水に浮くリュックサック・消火器・避難誘導旗・地図・現金など
安全グッズヘルメットや軍手、非常用ライトなど

有事の際の安全な避難体制を確立するために、避難・安全グッズもしっかり備蓄しておきましょう。

BCP備蓄品はできれば1週間用意した方がよい

企業の防災対策において、最低3日分の準備が基本とされるBCP備蓄品ですが、可能であれば1週間分(7日間分)まで拡張して用意しておくことが強く推奨されます。

自治体の条例などでは「3日分」が努力義務として掲げられるケースが多いものの、南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった広域かつ超大規模な災害が発生した場合、3日分だけの資材では現場の混乱に対応しきれない可能性が高いためです。

BCP備蓄品を1週間用意した方がよい理由
・道路網の寸断などで物資が供給されるまでに時間がかかるケースが多く、3日分の備蓄では底をつく恐れがあるため
・水道・電気・ガス・通信などのインフラが安定復旧するまでにも時間がかかり、自給自足の体制維持が求められるため
・政府広報などの防災指針においても、大規模災害に備えて「最低3日分、できれば1週間分」の備蓄が望ましいと明記されているため

救急・生命維持の段階(1〜3日目)から、事業復旧や社内体制の再構築を行う段階(4〜7日目)へ移行する際、備蓄に余裕があれば物資調達に奔走することなく、本来のBCP(事業継続計画)に基づく復旧業務へリソースを集中させることができます。

災害時には業務を停止させないといけなくなる可能性が高まりますが、BCP備蓄品を余裕をもって用意しておくことで、緊急事態でも業務を継続できる確率が高まります。また、業務停止した場合でも、より速いスピードでの早期復旧を目指すことができ、企業の倒産・業務縮小のリスク回避につながるでしょう。

最低限必要な3日分のBCP備蓄品を確実に確保した上で、できれば1週間分の備蓄を目指しましょう。

【早見表】BCP対策で必要な備蓄品リスト

2章までの内容をベースにして、自社に必要なBCP備蓄品の具体的な品目と数量を迅速に把握・算出できるよう、目安量を一覧にまとめました。

【BCPにおける備蓄品リスト】

備蓄品目3日分(最低限の目安)7日分(推奨される目安)
飲料水
ペットボトル入り飲料水
9L(1日3L×3日)× 人数分21L(1日3L×7日)× 人数分
主食類
アルファ化米・クラッカー・乾パン・カップ麺
9食(1日3食×3日)× 人数分21食(1日3食×7日)× 人数分
※必要に応じて、嚥下食(えんげしょく)や経口補水液なども備蓄する※缶詰おかずやレトルトカレーなどの副菜類をどこまで準備するかも検討する
毛布1枚 × 人数分1枚〜2枚 × 人数分
※カイロや、乾電池で使用できる冷暖房機器なども準備しておく※寝袋や簡易ベッド、空気を入れて膨らませるエアーベッド・エアーマットなども検討
トイレ用品
簡易トイレ・携帯トイレ・トイレットペーパー・ビニールシートなど
15回分(1日5回×3日)× 人数分35回分(1日5回×7日)× 人数分
停電対策
懐中電灯・乾電池・非常用発電機・UPS(無停電電源装置)・ポータブル電源
部署・フロアごとに数台各エリアごとに数台など
救急箱
常備薬・救急箱
人数分のセットを用意(10人なら10人用救急箱セット)
情報収集・伝達機器
手回しラジオ・乾電池式ラジオ・乾電池・携帯電話・スマートフォンのバッテリー
拠点ごとに1台〜2台など
避難・安全グッズ
非常持ち出し用袋・水に浮くリュックサック・消火器・避難誘導旗・地図・現金・ヘルメットや軍手、非常用ライトなど
1人1セット

上記はあくまで目安となります。実際に自社に必要な備蓄品を備えるステップについては、次章で詳しく解説します。

自社に最適な量・品目の備蓄品を備える5ステップ

自社にとって本当に必要なBCP備蓄品の量や種類を割り出し、抜け漏れなく整備するためには、自社の規模やリスクに合わせた段階的な手順を踏むことが重要です。

単に平均的な目安量を買い揃えるだけでは、実際の災害時に「来訪者の分が足りない」「地域の孤立リスクに対応できていない」といった想定外の事態に直面しかねません。

過不足なく必要なBCP備蓄品を揃えるには、自社の業態や立地、実際の訓練結果までを考慮したステップに沿って計画を立てることが重要です。

自社に最適な量・品目の備蓄品を備えるステップ
・STEP1:基本項目以外の品目をどこまで揃えるか検討する
・STEP2:従業員以外のバッファをどの程度用意するか決める
・STEP3:3日分か7日分か備蓄する日数を決定する
・STEP4:BCP計画に従って実際に備蓄品を準備・配置する
・STEP5:BCP訓練を通じて備蓄品の見直し・点検を行う

ステップごとに解説するので、一緒に手を動かして自社に最適な備蓄品の種類・リストを完成させてください。

STEP1:基本項目以外の品目をどこまで揃えるか検討する

最初のステップは、ここまで紹介した「水・食料・トイレ」などの基本品目に加えて、オプションの品目をどこまで揃えるか検討することです。

法律やガイドラインで提示されている必須品目だけでは、実際の災害時に「従業員の体調悪化を防げない」「自社の業務特性に対応できない」といった事態が生じるリスクがあります。自社の環境や従業員の安全確保に必要なレベルを見極め、準備するBCP備蓄品の範囲をあらかじめ明確にしておく必要があります。

たとえば、企業防災の公的な基準では、食料の必須要件として「主食類」のみが明記されているケースがほとんどです。しかしながら主食はあくまで生命維持の最低基準であり、炭水化物だけの食事が3日間続くと健康悪化や精神的ストレスの蓄積が懸念されます。

そのため、余裕があれば「マストで必要な主食類」に加えて、缶詰おかずやレトルトカレーなどの副菜を準備しておくことも検討すべきです。

このように、基本項目となっている備蓄品以外に、どこまでを揃えるか検討していきましょう。

【備蓄品の基本項目以外について検討する例】

備蓄品目検討すべき理由
缶詰おかず、レトルトカレーなど主食のみによる急激な血糖値の上昇やビタミン・食物繊維不足、ストレス軽減のため
嚥下食、経口補水液など介護施設などでは、利用者の健康維持のため
カイロ、乾電池式冷暖房など寒冷地など、停電時の寒さ対策のため
寝袋、エアーベッドなど快適な就寝環境による体力低下防止のため

その他、感染症対策資材や女性用生理用品、要配慮従業員のための機器など、職場ごとに必要な備蓄品を洗い出して検討する必要があります。

自社の事業形態や従業員のニーズに合わせて追加品目の優先順位を整理しておくことで、無駄のない実効的な備蓄計画のベースが完成します。

STEP2:従業員以外のバッファをどの程度用意するか決める

自社のBCP整備における備蓄品の品目が確定したら、次に、従業員以外の来訪者や一時滞留者のための予備(バッファ)をどの程度用意するかを決めていきましょう。

災害が発生した瞬間、社内にいるのは従業員だけとは限りません。打ち合わせ中の取引先や店舗の来店客、施設利用者など、その場に留まる可能性のある外部の人物に対する安全配慮義務が企業に求められるためです。

なお、東京都の「帰宅困難者対策ハンドブック」においては、外部の帰宅困難者(来社中の顧客・取引先や発災時に建物内にいなかった帰宅困難者など)のために、10%程度の量を余分に備蓄していくことをおすすめしています。

BCP備蓄品の従業員以外のバッファの決め方
・一般的なオフィス:従業員数の「10%程度」を基本の上乗せバッファとして設定する
・商業店舗や来客の多い拠点:日中の平均的な来店客数やピーク時の滞留人数を加味して多めに設定する
・医療施設・介護施設:入所者・利用者全員の最大数に合わせて用意し、特別な配慮(嚥下食・衛生資材など)も含めた初期値を設定する

たとえば一般的なオフィスで「従業員数の10%」をバッファとして設定した場合、従業員が100名ならば110名分の備蓄品を用意することをまず検討してみましょう。

自社の業態に合わせてバッファを適切に見積もることが、有事の混乱を防ぐために重要です。

STEP3:3日分か7日分か備蓄する日数を決定する

次に、自社の立地環境や被災リスクを踏まえて、BCP備蓄品を「最低限の3日分」だけ用意するか、「余裕をもった7日分(1週間分)」まで準備するかを決定します。

インフラ復旧の遅れや周辺地域の被災状況によって、必要となる備蓄量は大きく変化します。自社がどのような地理的・環境的リスクを抱えているかを把握し、それに応じた増減調整を行うことがおすすめです。

実際に、大雨や地震による土砂崩れ・橋の崩落・道路寸断によって集落や拠点が長期間隔離され、「陸の孤島」と化した事例が存在します。このような孤立可能性のあるエリアでは、行政やボランティアによる救援物資の到着が大幅に遅れるため、3日分のBCP備蓄品では確実に底をついてしまいます。

支援の手が入りにくい地域では「最低でも1週間分の備蓄が必要」と認識して、長期戦に耐えうる備蓄量を検討しましょう。

立地・被災リスクに応じた日数の決め方3日分を基本とするケース:都市部に位置し、交通網や物流の早期復旧が見込まれ、周辺に避難支援体制が整っている拠点
7日分への拡張を推奨するケース:土砂崩れや道路寸断、橋の崩落等で「孤立リスク」が高い立地(沿岸部・山間部・アクセス道路が少ない地域)、津波浸水想定区域など

自社の拠点の立地リスクを踏まえたうえで、必要な備蓄体制を構築しましょう。

STEP4:BCP計画に従って実際に備蓄品を準備・配置する

次は、試算した計画をもとに、いよいよ備蓄品を購入・配置するステップです。

東日本大震災があった3月や防災の日がある9月には、防災用品の購入需要が集中しやすいため、時期をずらして余裕を持って手配を進めるのがおすすめです。

備蓄品を準備するときのポイント
・必要な物品がまとまった市販の防災セットもうまく活用して効率よく揃えるのがおすすめ
・周辺企業や自治体、地域で「災害時相互協力協定(防災協定)」を結んでおき、地域全体で助け合える備蓄体制を整えることも検討する
・一度に予算や保管場所を確保するのが難しい場合は、生命維持に直結する「水・食料・簡易トイレ」を優先して段階的に揃える

計画的なスケジュール管理や便利な防災セットの活用、さらには地域自治体・近隣企業との協力協定まで視野に入れて準備を進めることで、コストやスペースの課題をクリアしながら、実効性の高いBCP備蓄品の配備を完了させましょう。

STEP5:BCP訓練を通じて備蓄品の見直し・点検を行う

備蓄品を準備・配置できたら、定期的なBCP訓練を通じて計画の実効性を検証し、見直し・点検・改善を継続して行います。

いざというときに「保管場所から取り出しにくい」「賞味期限切れに気づかない」「実際の使用手順が分からない」といった運用上の課題が生じないために重要です。

【BCP訓練における備蓄品のチェックポイント】

備蓄品目チェックポイント
飲料水・食料・賞味期限および目視で劣化を確認し、古いものは取り除く
・期限が近いものは、防災訓練で試食したり社内配布したりして消費する
トイレ用品・パッケージの破損や凝固剤の劣化がないか確認し、記載期限前に交換する
・防災訓練で実際に試用してみて、使用手順や設置方法を従業員に周知する
毛布・汚れ・破損・カビなどの劣化がないか確認し、状態に応じて交換する
停電対策・懐中電灯や発電装置などの試運転を行い、正常に作動するかを確認する
・使用期限が近い乾電池は業務使用に転用する
救急箱・消毒液や薬品の使用期限を確認し、期限前に補充・交換する
・期限が近い衛生用品は、日常の社内衛生対策や感染症予防用として順次消費する
情報収集・伝達機器・訓練時に通電・起動確認を行い、バッテリーの膨張などがないかチェックする
・期限が近いバッテリーは日常業務で消費する
避難・安全グッズ・割れ・変形・ベルトの緩みや工具の錆を確認し、不具合があるものは交換する
・安全グッズは、避難訓練で実際に着用してみる

備蓄品を単に保管しておくだけでなく、防災訓練の機会を活かして実際に使用してみることが何より重要です。非常食の試食や簡易トイレの設営、ポータブル電源の起動などを体験しておくことで、マニュアルだけでは気づけない課題や不備を事前に把握でき、有事の際にも慌てず迅速に行動できるようになります。

訓練後は、訓練を通して発見した課題をもとに、作成した備蓄品リストを見直して改善し続けましょう。

BCP備蓄品の保管・管理ポイント

前章まで自社に必要な量のBCP備蓄品を備える方法について解説しましたが、せっかく準備したBCP備蓄品も、適切な場所に保管されていなかったり期限切れで廃棄になったりすると、本末転倒です。

この5章では、揃えた備蓄品を活かすための保管法・運用ノウハウについて詳しく解説します。

BCP備蓄品の保管・管理ポイント
・備蓄品に最適な場所に保管する
・定期的に入れ替えて使用可能状態を更新する
・従業員・外部企業とも協力して備える

BCP備蓄品は「買って安心」ではありません。有事の現場で「必要なものが使えない」「取り出せない」という事態を完全に防ぐため、自社の保管・管理状況を具体的にイメージしながら読み進めてみてください。

備蓄品に最適な場所に保管する

BCP備蓄品の保管場所は、倒壊や水害などの二次災害リスクがなく、有事の際にも安全かつ確実にアクセスできる環境を選ぶことが最優先となります。

備蓄品を揃えても、災害時に保管場所に立ち入れなくなったり物資を取り出せなくなったりしては意味がありません。できるだけ被災しにくい場所を選び、できれば分散して保管することが重要です。

BCP対策における備蓄品の最適な保管場所
エレベーター停止時でも階段で無理なく搬出できる場所
・停電や安全装置の作動でエレベーターが使えない状況を想定し、階段を使って手作業で運べる階層や部屋がおすすめ
・重量のある水や非常食を効率よく運べるよう、保管場所のすぐ近くに台車やキャリーカートを常備できるスペースが最適

高温多湿・直射日光を避けられる場所
・備蓄品の劣化を回避するため、パレットや棚を設置して風通しや乾燥状態を保てる場所が最適
・湿気によるダンボールの底抜けやカビの発生を防ぐため、地面への直置きを避ける

大雨や台風でも冠水・浸水しない高所・上層階
・水害発生時に浸水のリスクがない場所がおすすめ
・地下室や1階の低層部ではなく、中高層階や安全性の高い高所エリアを選ぶ

複数のフロアやエリアに分散するのもおすすめ
・1つの倉庫に集約せず、各フロアや離れた部屋に分けて保管できる体制もおすすめ
・扉の歪みによる閉じ込めや室内の棚倒壊が起きても、他のフロアから物資を確保できる

なお、拠点が複数個所ある場合は、本社にだけ備蓄品を集中させるのではなく、各拠点が自力で初期対応できるよう拠点ごとに保管しましょう。

定期的に入れ替えて使用可能状態を更新する

実効的なBCPにするためには、備蓄品の品質を維持するために、賞味期限や使用期限を迎える前に定期的な入れ替えを行い、常に「使える状態」を保つような管理体制を整えましょう。

有事の際に「賞味期限切れで食べられない」「機器が使えない状態だった」という状態にならないようにすることが大切です。

定期的に入れ替えて使用可能状態を更新するポイント
ローリングストック法の導入
賞味期限や使用期限が近い備蓄品から優先的に消費し、消費した分だけ新しい品目を補充する仕組みを取り入れます。これにより、常に新しい備蓄品が確保された状態を保てます。

フードバンクや社内活用(寄付・配布)
まだ十分に食べられる期限前の非常食は、フードバンクなどの団体へ寄付したり、社内イベントや防災訓練で配布・消費したりすることで、食品ロスを削減しながら社会貢献や社内防災意識の向上に寄与できます。

定期的な入れ替え日・棚卸日の設定
年に1〜2回、防災訓練や防災週間に合わせた「備蓄品チェック日」をあらかじめ社内カレンダーに組み込み、組織的に運用サイクルを回します。

リスト化と「先入れ先出し」の徹底
品目・保管場所・数量・賞味期限を一元管理するリスト(管理台帳)を作成します。保管スペースでは期限が古いものを手前や手元に配置する「先入れ先出し」を徹底し、管理の抜け漏れを防ぎます。

管理リストの作成やローリングストック法、寄付の仕組みをうまく組み合わせることで、無駄なコストを抑えつつ、常に信頼性の高いBCP備蓄品の体制をアップデートし続けることができます。

従業員・外部企業とも協力して備える

BCP備蓄品を確実に運用するためには、社内での体制整備にとどまらず、従業員への周知徹底や外部企業・近隣施設との連携体制をあらかじめ構築しておくことが大切です。

どれだけ完璧に備蓄品を整えていても、従業員が保管場所や活用方法を理解していなければ有事の際に迅速に動けないためです。また、小規模な企業など、社内ではなかなか備蓄が難しいという場合は、外部や近隣と協力体制を築いておくことが重要です。

社内外で進めるべき3つの連携ポイント
社内周知と研修・訓練の実施
BCP備蓄品の保管場所やリストの内容、具体的な持ち出し手順を全従業員へ周知します。定期的な研修や訓練を通じて周知しておくことで、防災意識が高まり、災害時にも従業員同士が協力して安全を確保できるようになります。

外部企業・近隣施設との相互協力協定
近隣の企業や自治体、取引先と事前に連携・協定を結んでおくことで、自社のストックが底をついた際や想定外の事態が発生した際に、物資や手配アイテムを緊急相互利用できる体制を整えられます。

自社施設内のリソース活用(社員食堂・店舗など)
社内に食堂やカフェテリア、売店などがある場合は、普段ストックされている食材や飲料も「緊急時の支援物資」として位置づけ、災害時に円滑に配給・活用できるよう運用ルールを定めておきます。

従業員一人ひとりの理解と社外も含めたネットワークの構築を進めておくことで、単なる物資の保管を超えた、真に実効性の高いBCPとして備蓄品の活用体制を確立できます。

備蓄品以外にも準備しておくべきBCPの基本事項

ここまで、BCP(事業継続計画)に伴って用意すべき備蓄品のリストや必要量、自社に必要な備蓄品の種類・数量を備えるステップ、そして保管・管理方法まで網羅的に解説してきました。

しかしながら、どれほど万全に備蓄品を用意したとしても、それだけで実際に災害時に事業を維持・継続できる訳ではありません。有事に物資を活かすための計画(BCP)そのものや、従業員の命を守る初動体制が整っていなければ、現場の混乱を防ぐことは困難です。

ここからは、備蓄品の整備と並行して必ず取り組んでおくべきBCPの基本事項について解説します。

公的なガイドラインを活用してBCP策定しておく

BCP(事業継続計画)を効果的に策定・運用するためには、国や自治体が公表している公式のガイドラインやフレームワークを最大限に活用することが重要です。ゼロから作成しようとすると、法的要件や業種別のリスクモデルを網羅するまでに多大な時間とコストがかかってしまうためです。

以下のような公的なガイドラインを活用して、自社の規模や業態に合わせた実効性の高い計画を作ってみましょう。

これ以外にも、業態ごとに特化したBCPガイドラインが用意されているケースもあるので、業界団体や管轄省庁の公式サイトを確認してみてください。たとえば文部科学省では、公民館や図書館、動物園・水族館などのBCPガイドラインを用意しています。

参考: 文部科学省「業種別ガイドラインについて」

記事のアイキャッチ画像です。 【図解】BCP策定6つの手順|注意点をステップごとに解説

BCPで最重要な初動対応の準備をしておく

BCPマニュアルや計画を策定するのはもちろんですが、実効的なBCPにするためには、緊急時における初動対応の準備・体制を整えておくことが非常に重要となります。

緊急時の初動対応がそのあとの業務継続に大きく関わってくるためです。従業員の安否確認や初動指示のルーチンなどがしっかり決まっていなければ、現地での救援活動や物資の配給、そのあとの復旧判断に大きな遅れが生じる原因となります。

BCP計画とともに整備しておくべき初動対応の流れ
1.災害本部を設置する
緊急事態が発生した際に、迅速に状況を把握し意思決定を下すための指揮命令系統(災害対策本部)の立ち上げ手順を定めておきましょう。

2.従業員の安否確認、安全確保をする
出社中・外回り中・ リモートワーク中すべての全従業員の無事を即座に把握する体制を整える従業員の無事が確認できて初めて、復旧作業や物資活用へ移行できます。

3.情報収集をする
社内の被害状況や地域の被災状況、ライフラインの復旧見込みなどの情報を集約し、事業継続の方針決定に役立てます。

初動対応への対策・準備では、誰がどの対応をするのか役割分担をし、実際の緊急時を想定して訓練をしておくことも大切です。緊急時の初動対応をスムーズに行い、業務を継続・早期復旧できるようにしましょう。

家族を含めた安否確認ならトヨクモ『安否確認サービス2』がおすすめ

BCP(事業継続計画)でも最重要ともいえる安否確認体制の構築ですが、いざシステムを選ぶとなると「本当に有事に動くのか」「使いこなせるのか」といった不安を感じる担当者の方も少なくないでしょう。

そこでおすすめしたいのが、5,000社以上の企業に選ばれているトヨクモの『安否確認サービス2』です。

安否確認システム選びで重要な「確実に動くこと」「誰でも使えること」を両立し、『安否確認サービス2』は圧倒的な信頼を得ています。

・止まらないから有事でも安心
東日本大震災では、急なアクセス集中により多くの安否確認システムが動かなかったと言われています。『安否確認サービス2』は世界最高水準のセキュリティと堅牢性を誇るAWS(Amazon Web Services)上で構築され、国内の災害に左右されないようメインサーバーをシンガポールに設置。

さらに気象庁の災害検知と連動して即座にサーバーを自動拡張(オートスケール)するほか、毎分100万通以上の超高速メール配信システムを採用し、混雑ピーク前に確実に通知を届けます。毎年9月1日には全契約者を対象とした全国一斉訓練を実施し、実際の災害と同等の負荷がかかっても停止・遅延ゼロであることを証明し続けています。


・直感的なデザインで迷わず使える
災害時のパニック状態では、複雑な操作はできません。『安否確認サービス2』は、シンプルで直感的に操作できる画面設計が特徴で、PCやスマートフォン、タブレットはもちろん、旧型のガラケーにも対応しています。

さらに無料のスマートフォン専用アプリ(iOS/Android)を活用すれば、キャリアメールの通信混雑に左右されることなく迅速に安否通知を受信・回答でき、管理者権限があればアプリから即座に集計画面の確認も可能です。この圧倒的な使いやすさにより、サービス利用継続率99.8%、ITreview(安否確認システム部門)でも「満足度・使いやすさNo.1」(※)の評価を獲得しています。※ITreviewカテゴリーレポート 2024summer 安否確認システム部門

30日間の「無料お試し」ではすべての機能を何度でもご利用いただけます。まずは無料でシステムの操作性をお確かめください。

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まとめ

本記事では、BCP対策における備蓄品の準備や管理について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

◆BCP備蓄品で最低限揃えるべき品目リスト

  • 飲料水・食料(3日分)
  • 防寒・寝具用の毛布(1人1枚)
  • トイレ用品(3日分)
  • 停電対策(懐中電灯・非常用発電機・UPSなど)
  • 応急処置のための救急箱(常備薬や包帯など)
  • 情報収集・伝達機器(ラジオ・携帯・電池など)
  • 避難・安全グッズ(持ち出し袋・ヘルメットなど)

◆BCP備蓄品はできれば1週間用意した方がよい

◆自社に最適な量・品目の備蓄品を備えるステップ

  • STEP1:基本項目以外の品目をどこまで揃えるか検討する
  • STEP2:従業員以外のバッファをどの程度用意するか決める
  • STEP3:3日分か7日分か備蓄する日数を決定する
  • STEP4:BCP計画に従って実際に備蓄品を準備・配置する
  • STEP5:BCP訓練を通じて備蓄品の見直し・点検を行う

◆BCP備蓄品の保管・管理ポイント

  • 備蓄品に最適な場所に保管する
  • 定期的に入れ替えて使用可能状態を更新する
  • 従業員・外部企業とも協力して備える

◆備蓄品以外にも準備しておくべきBCPの基本事項

  • 公的なガイドラインを活用してBCP策定しておく
  • BCPで最重要な初動対応の準備をしておく

今回紹介した内容をもとに、ぜひ自社に最適なBCP備蓄品の種類・数量を揃えて、保管も適切に行っておきましょう。さらにBCP全体を見直し、迅速な初動体制まで整えておくことこそが、有事の際に従業員の命と事業の継続を守る確実な一歩となります。

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編集者:遠藤 香大(えんどう こうだい)


トヨクモ防災タイムズ 編集長 RMCA BCPアドバイザー トヨクモ株式会社で災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案や情報発信に携わる。トヨクモ防災タイムズではBCPや災害対策に関する記事の企画・執筆・編集を担当。専門家との連携や現場視点を取り入れながら、読者に寄り添う防災情報の発信を目指している。

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