リスクコミュニケーションとは?防災における重要性や実施手順を解説

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トヨクモ防災タイムズ編集部

災害はいつ、どこで発生するかわかりません。その脅威から従業員と事業を守り、早期の事業復旧を実現するためには、平時からの備えが不可欠です。効果的な備えの鍵となるのが、関係者との適切な情報共有と相互理解を促す「リスクコミュニケーション」です。

しかし「具体的に何をすればいいのか?」「なぜ企業防災に重要なのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、リスクコミュニケーションの基本的な考え方から、企業防災における重要性、具体的な実施手順(3ステップ)、さらには成功のポイントや失敗から学ぶべき注意点まで、企業の防災担当者や経営層の方に向けてわかりやすく解説します。

また、リスクコミュニケーションと併せて検討したい、災害時の従業員の安否確認についても触れています。トヨクモが提供する『安否確認サービス2』は、迅速な状況把握と事業継続計画(BCP)の初動対応を支援します。興味のある方は、ぜひ以下のボタンから詳細を確認してください。

リスクコミュニケーションとは

厚生労働省では、リスクコミュニケーションを以下のように定義しています。

リスク分析の全過程において、リスク評価者、リスク管理者、消費者、事業者、研究者、その他の関係者の間で、情報および意見を相互に交換することです。リスク評価の結果およびリスク管理の決定事項の説明を含みます。

(引用:リスクコミュニケーションとは|厚生労働省

わかりやすく言えば、リスクコミュニケーションとは、リスクに関する情報や意見を、関係者(ステークホルダー)間で双方向に交換し、相互理解を深め、よりよい意思決定や対策につなげていくための継続的なプロセス全体を指します。

防災におけるリスクコミュニケーションでは、災害発生前の段階で企業が従業員や取引先、地域住民、行政などの関係者と起こり得るリスクや対応策について情報交換を行い、相互理解を深めます。これにより、災害発生時の被害を最小限に抑え、迅速に復旧するための基盤が構築されます。

防災におけるリスクコミュニケーションの重要性

以下の点から、防災におけるリスクコミュニケーションは重要な役割を担っています。

  • 災害時の混乱防止
  • 認知バイアスの軽減
  • ステークホルダーとの信頼関係構築

平常時から従業員や地域住民とリスクについての対話を続けることにより、災害発生時の混乱を最小限に抑えられます。災害時に従業員一人ひとりが取るべき行動が明確になり、従業員の命を守るとともに、組織としての事業継続性も確保できます。

また、リスクコミュニケーションは、認知バイアスの軽減にも効果があります。対話を通じて過去の経験に基づく誤った判断を見直し、最新の知見に基づいた適切な行動につなげられます。たとえば、過去に地震による被害が少なかった人が「今回もここは大丈夫だろう」と思い込み、避難しない可能性があります。事前に地域ごとの災害リスクについて話し合っておけば、このような思い込みを防ぎ、適切に避難を行うことが可能です。

さらに、企業が災害対策への取り組みを積極的に伝えることは、ステークホルダーとの信頼関係構築にも役立ちます。企業の社会的評価を高めるだけでなく、災害発生時の協力体制の強化にもつながるでしょう。

リスクコミュニケーションの3ステップ

ここでは、企業防災担当者が実践すべきリスクコミュニケーションの3つの基本ステップを紹介します。

  1. 起こり得るリスクを把握する
  2. ステークホルダーにリスクを共有する
  3. ステークホルダーとリスクについて話し合う

①起こり得るリスクを把握する

リスクコミュニケーションの最初のステップは、企業活動において「どのようなリスクがあり得るか」を洗い出すことです。自社の業種や事業規模、立地条件などを踏まえ、自然災害や事故、システム障害など、発生し得るリスクを想定します。

想定されるリスクを把握したら、あわせて対策も検討しましょう。単にリスクがあることだけをステークホルダーに伝えても、相手を不安にさせるだけです。リスクを踏まえて企業としてどんな対応を行っていくのかという対策まで整理してはじめて、次のステップの情報共有が可能になります。

②ステークホルダーにリスクを共有する

起こり得るリスクを想定し、行政や取引先、従業員、地域住民などのステークホルダーに共有します。専門知識がない相手にも伝わるように、専門用語は多用せず、誰もが理解できる言葉で説明するように工夫しましょう。

リスクを共有する方法には、さまざまなものがあります。ステークホルダーの特性に合わせて、適切な方法を選択しましょう。

【リスクを共有する手法例】

手法概要
プレスリリースメディア向けに情報を発信する文書。広範囲に情報が届くが、反応は低い
Webサイト多くの情報を低コストで多数に配信できる。情報過多になると、かえって情報が届かなくなる
ブリーフィング組織の集会で情報を提供する。地域との関係構築に役立つが、専門的な内容は興味を引きにくい
社内イントラネット・社内ポータル従業員向けのネットワーク。常にアクセス可能だが、能動的に見てもらう工夫が必要
研修会・説明会・訓練従業員や地域住民と直接対話でき、理解度を確認しやすいが、参加者が限られる
SNS低コストで多くの情報を発信できるが、情報が埋もれやすい
広報誌・パンフレット手元に残る資料として有効だが、作成・配布コストがかかる
個別対話・相談窓口ステークホルダーとの信頼関係の構築につながるが、時間と労力がかかる

③ステークホルダーとリスクについて話し合う

リスクコミュニケーションの最終段階は、ステークホルダーと対話を行います。一方的にリスクを共有するのではなく、ステークホルダーの懸念や疑問に耳を傾け、誠実に応答することが重要です。

防災計画の策定や見直しの際は、ステークホルダーとの対話を通じて得られた意見を取り入れましょう。ステークホルダーの視点を反映させることにより、より実践的で効果的な防災計画へと改善できます。

また、一度きりではなく、定期的に意見交換の機会を設けることにより、ステークホルダーとの信頼関係を強化できます。この信頼関係こそが、災害発生時の迅速かつ効果的な対応の基盤となります。

リスクコミュニケーションの取組事例

さまざまな組織でリスクコミュニケーションの取り組みは進んでいます。その一例として、北海道の一般社団法人旭川建設業協会による「地域防災リーダー研修会」を紹介します。

一般社団法人旭川建設業協会は、正会員数67 社、従業員数2,340 名、準会員66 社で構成される組織です。東日本大震災をきっかけに、2013年から地域防災リーダー研修会が開催されています。

この研修会の目的は、自然災害から地域を守るための知識と心構えを養うことです。大規模災害発生時に行政機関との連絡が絶たれた状況を想定し、その状況下でも地域を守れるように地域と建設業の交流促進を目指します。

ただ一方的に災害リスクを説明するのではなく、住民との対話を通じて地域の危険箇所や課題を共有し合う方法で進められています。たとえば、災害図上訓練では、住民からハザードマップに載っていないリスクについての意見も交わされ、建設業者と地域住民の間で災害リスクに対する認識を共有する場となりました。

(参考:国土強靱化 民間の取組事例集|内閣官房)

リスクコミュニケーションの失敗例に共通する特徴

リスクコミュニケーションの失敗例の多くに共通する特徴は、リスク認知におけるギャップの理解不足です。事業者や行政は科学的データでリスクを評価する一方、住民は感情に基づいてリスクを判断する傾向があります。このギャップを認識せずにコミュニケーションを進めると、相互理解が得られません。

効果的なリスクコミュニケーションのために、どのようなリスクが住民に大きく受け止められやすいのか把握しておきましょう。住民が特に懸念を抱きやすいリスクの特徴は以下のとおりです。

破滅性一度発生すれば壊滅的な影響があるリスク
未知性科学的知見が不十分なリスクや遅発性のリスク
制御可能性自分でコントロールできないリスク
公平性自分たちだけにリスクが押し付けられていると感じるリスク

(参考:第1章 基礎理念|環境省)

ステークホルダーの懸念や不安を軽減し、効果的なリスクコミュニケーションを実現するには、単に正しい情報を伝えるだけでは不十分であり、感情面への配慮も欠かせません。

まず、専門用語を多用せず、わかりやすく具体的な言葉を使うことが重要です。難しい表現は理解の妨げとなり、不安を強めてしまうことがあります。

また、一方的な情報提供だけではなく、住民との対話を重視する姿勢が求められます。話し合いの場では十分な質疑応答の時間を確保し、住民の疑問や意見に真摯に向き合いましょう。その際「ご不安なお気持ちは当然です」といった共感の言葉を添えることにより、相手に寄り添う姿勢が伝わり、安心感を与えられます。単に事実を伝えるのではなく、住民の感情にも配慮した伝え方が大切です。

まとめ:リスクコミュニケーションは企業防災の要

リスクコミュニケーションは、単なる情報伝達ではなく、ステークホルダーと共に危機に立ち向かうための「企業防災の要」といえる取り組みです。

リスクコミュニケーションを通じて平時から関係者との信頼関係を築いておけば、いざ災害や事故が発生した際にも落ち着いて対応できて、被害や混乱を最小限に抑えられます。一方、リスクコミュニケーションの実施を怠れば、緊急時にパニックや不信が広がり、対応が後手に回ってしまうでしょう。 

本記事では、リスクコミュニケーションの実施手順や取組事例を紹介しました。ぜひ本記事の内容を参考に、効果的なリスクコミュニケーションの実施を目指しましょう。

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リスクコミュニケーションを通じて高めた防災意識や計画を、実際の災害時に活かすためには、迅速かつ確実な情報伝達・収集手段が不可欠です。とくに、従業員の安否確認は、初動対応の起点であり、BCP(事業継続計画)を発動させる上で最も重要な情報の1つです。

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