災害に備えたリスクコミュニケーションの注意点|防災意識を高める方法も

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トヨクモ防災タイムズ編集部

地震や豪雨、台風など、私たちの生活を脅かす自然災害はいつ発生してもおかしくありません。企業にとっては、こうした災害に備えて従業員の安全を守り、事業の継続を図ることが重要な課題となっています。

そのなかで近年注目されているのが「リスクコミュニケーション」です。効果的に実施することにより、災害時に従業員が適切な行動を取れます。

本記事では、企業が災害に備える上で知っておきたいリスクコミュニケーションの基本や、実施時の注意点、防災意識を高める方法について解説します。防災担当者の方や総務担当者の方は、ぜひご参考にしてください。

災害対策におけるリスクコミュニケーションとは

リスクコミュニケーションとは、災害や事故、感染症といったさまざまなリスクに関して、行政や取引先、従業員、地域住民などのステークホルダーが、情報を共有し、意見交換を行う双方向のプロセスのことです。

主な目的は、情報を発信する側と受け取る側の認識のギャップを埋めることです。リスクに対する共通理解を深めることにより、災害発生時に各々が適切な判断と行動を取れるようにします。

たとえば、気象庁や国土交通省が発表するハザードマップや避難情報を、企業が従業員や地域住民にわかりやすく伝えます。それに対して従業員や地域住民は疑問点を質問したり、地域の実情に基づいた意見を述べたりします。このような双方向の対話を通じて、より実効性の高い避難計画や防災対策を策定できます。

リスクコミュニケーションは、単なる情報伝達ではなく、関係者が共にリスクに向き合い、備えるための協働プロセスなのです。

企業における災害リスクコミュニケーションの重要性

企業にとって災害リスクコミュニケーションは、従業員の安全を守るだけでなく、事業継続にも大きく関わる重要な取り組みです。従業員が災害リスクを正しく把握できていなければ、いざというときに適切な判断や行動につながらず、企業活動に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。

また、企業の災害対応力は、社内外からの信頼にも直結します。災害時の混乱を防ぎ、組織として一貫した行動を取るためには、災害リスクに関する情報や考え方を平時から共有しておくことが大切です。

災害情報の種類

効果的なリスクコミュニケーションのためには、災害に関する情報の種類を理解しておくことが重要です。災害情報は大きく「ストック情報」と「フロー情報」に分けられます。

ストック情報

ストック情報は、避難訓練の実施やハザードマップの確認などで、災害前から蓄積できる情報です。地域の災害リスクや避難場所などの情報をあらかじめ把握しておくと、いざというときに落ち着いて判断できます。

ストック情報の例としては、以下のようなものがあります。

  • 地域で発生しやすい災害
  • 近くの避難場所
  • 避難する際の注意点

フロー情報

フロー情報は、災害の発生前後に気象庁のWebサイトやニュースサイトなどで発信される情報です。状況の変化に応じて、迅速に行動するための材料となります。

フロー情報の例としては、以下のようなものがあります。

  • 緊急地震速報
  • 津波警報・津波注意報
  • 自治体からの避難指示・避難情報

ストック情報とフロー情報を組み合わせる重要性

災害時に適切な判断を下すためには、フロー情報(いま何が起きているか)だけでは不十分です。平時から蓄積したストック情報(どこが危ないか、どこへ逃げるべきか)と組み合わせて初めて、「いま、ここで、何をすべきか」を判断できます。

たとえば、警戒レベル4、避難指示発令というフロー情報を受け取っても、事前にハザードマップ(ストック情報)で自宅や会社の浸水リスクを確認し、安全な避難場所(ストック情報)を知らなければ、迅速かつ適切な避難行動は取れません。

企業の防災担当者は、ハザードマップの確認や避難場所の周知、社内ルールの整備といったストック情報の蓄積と共有を平時から徹底する必要があります。そして、従業員がフロー情報と組み合わせて主体的に判断・行動できる基盤を作ることが極めて重要です。

リスクコミュニケーションを実施する際の注意点

リスクコミュニケーションは、企業が災害発生時に適切な対応を取るために重要ですが、効果的に実施するためには注意すべきポイントがあります。ここでは、リスクコミュニケーションを実施する際の注意点を解説します。

従業員に正常性バイアスについて理解してもらう

正常性バイアスとは、危険な状況に直面したときに楽観的に考えてしまう心理状態のことです。人間なら誰にでも起こる自然な反応ですが、災害時には命取りになりかねません。

普段の生活では正常性バイアスが働くことにより、不安や恐怖から自分を守り、ストレスを減らせるというメリットがあります。しかし、災害時に正常性バイアスが働くと、危険を軽く見積もってしまい、避難が遅れたり、適切な行動ができなかったりして、深刻な事態を招くことがあります。たとえば、在宅勤務中に大きな地震が起きた際に「たいしたことはない」「すぐに収まるだろう」と思って、机の下に隠れるといった安全確保行動を取らないケースが考えられます。

正常性バイアスについて知識を持っていれば、災害時に「いま、自分はこういう心理状態になっているかもしれない」と客観的に気づき、適切な判断と行動につなげることができます。そのため、防災研修や訓練では、正常性バイアスについても説明し、災害時の心理状態を事前に従業員に理解してもらいましょう。

従業員に災害を自分ごととして捉えてもらう

多くの人は、頭では災害の危険性を理解していても、「まさか自分が被災するとは」と、どこかで他人事として捉えがちです。これでは、いくら防災情報を伝えても実際の行動にはつながりません。リスクコミュニケーションを効果的にするために、従業員に自分自身も被災する可能性があることを認識してもらいましょう。

従業員に災害を自分ごととして捉えてもらうためには、「もしいま大地震が起きたら、あなたはどう行動しますか?」といった、具体的なシナリオを提示して考えてもらうことが効果的です。災害時を模擬した安否確認訓練を行うことにより、自分自身や同僚の状況がどうなるかをリアルにイメージさせられて、当事者意識を高められます。また、過去の災害事例を写真や映像とともに紹介したり、会社の建物や周辺地域のハザードマップを見せたりすると、より災害の危険性を実感してもらえるでしょう。

専門用語を多用しない

リスクコミュニケーションを行う際、防災や災害に関する専門用語を多用すると、従業員の理解を妨げる恐れがあります。普段から防災に馴染みのない従業員は内容を理解できず、関心が薄れてしまいます。

どうしても専門用語を使用する必要がある場合は、その言葉の意味を簡単に説明し、日常生活での具体例を添えると理解が深まります。また、図や写真などの視覚資料を使うことにより、言葉だけでは伝わりにくい内容もわかりやすくなります。

たとえば、液状化現象という言葉を使うなら、「地震で地面がぬかるみのようになる現象」と言い換えたり、実際の写真を見せたりするとよいでしょう。

信頼性の高い情報を発信する

リスクコミュニケーションを成功させるには、従業員からの信頼を得ることが何よりも大切です。もし不確かな情報や根拠のない情報を伝えてしまうと、信用を失ってしまいます。信頼関係を構築できるように、正確で信頼できる情報を必ず発信しましょう。

情報を発信する際は、気象庁や内閣府、地元自治体などの公的機関が発表している情報の使用がおすすめです。また、防災の専門家や研究者の見解を引用するのも、情報の信頼性を高めるのに役立ちます。

情報の出どころを明確に伝えることも重要です。たとえば「〇〇市の防災マップによると」「気象庁の発表では」と情報源を示すことにより、従業員はその情報がどれだけ信頼できるものかを判断できます。

災害リスクコミュニケーション以外で従業員の防災意識を高める方法

正常性バイアスや災害を他人事と捉える心理を克服するためには、リスクコミュニケーションだけでなく、さまざまな角度から従業員の防災意識を高める取り組みが必要です。ここでは、防災教育や訓練など、日常的に実施できる効果的な方法を紹介します。

防災教育を実施する

防災教育は、従業員が災害のメカニズムや対処法を学び、いざというときに適切な行動がとれるようになるための重要な取り組みです。座学形式での研修だけでなく、ゲームやワークショップ形式の参加型学習を取り入れれば、楽しみながら防災知識を身につけられます。

ここでは、防災教育に取り入れられるゲームを2つ紹介します。

クロスロードゲーム

クロスロードゲームは、阪神・淡路大震災で実際に災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作成されたカードゲームです。災害時の難しい判断を迫られる場面を想定し、YES・NOで回答することにより、災害時の意思決定について考えるきっかけとなります。

【必要なもの】

  • クロスロードゲーム用の問題カード
  • YES・NOカード
  • 金座布団カード、青座布団カード
  • 参加者の人数分の筆記用具

【実施手順】

  1. 5人程度のグループに分かれる
  2. 各参加者にYES・NOカードを配布する
  3. 問題カードを1枚引き、全員に読み上げる
  4. 参加者は自分の考えに基づき、YESまたはNOのカードを裏返してテーブルに置く
  5. 全員が選んだカードを同時に提示し、多数派の意見の人には青座布団、少数意見(1人だけ)の人には金座布団が与えられる
  6. なぜそのように判断したのか、グループで意見交換を行う
  7. 複数の問題について繰り返し、座布団の数を競う

クロスロードゲームの回答には正解がありません。状況によって最適な判断は変わるため、カードを提示した後はなぜそのように判断したのか、グループで意見交換を行いましょう。それにより、災害を自分ごととして捉えられるだけではなく、多様な価値観の存在を知ることができます。

災害図上訓練DIG

災害図上訓練 DIG(Disaster Imagination Game)は、地図を使って災害時の対応を考えるワークショップ形式の防災教育です。参加者が地図を囲んで災害時の被害や対応策を具体的に書き込むことにより、自分たちのオフィスや地域の災害リスクを視覚的に理解できます。

【必要なもの】

  • 会社周辺の地図(住宅地図など、詳細なもの)
  • 地図の上に敷く透明シート
  • 色付きのマーカーペン(複数色)
  • 付箋紙
  • 筆記用具

【実施手順】

  1. 5〜10人程度のグループに分かれる
  2. 地図の上に透明シートを敷く
  3. 危険と思われる場所や避難経路など、気づいたことを複数の色に分けて書き込む
  4. 進行役が災害シナリオを提示する
  5. 各グループで災害時の対応策を話し合い、地図に書き込む
  6. 各グループの検討結果を全体で共有し、意見交換を行う

災害図上訓練 DIGを通じて、参加者はオフィスの周辺にはどんな危険があるのか、災害時にはどのような行動をとるべきかを具体的に考えられます。また、地図上に情報を書き込むことにより、災害リスクの見える化が図られ、日常的な防災意識の向上にもつながります。

防災教育に活用できるゲームは、以下の記事でより多く紹介しています。

関連記事:大人が防災を学べるゲーム5選!訓練や研修におすすめ

防災訓練を実施する

防災教育で得た知識を実践に移すためには、定期的な防災訓練が欠かせません。実際に体を動かして避難経路を確認したり、消火器の使い方を練習したりすることにより、災害時にも慌てずに行動できる力が身につきます。

防災訓練を効果的に実施するためのポイントとして、以下が挙げられます。

  • 訓練の目的と想定シナリオを明確にする
  • 形骸化を防ぐため、訓練内容を定期的に変更する
  • 抜き打ち訓練を取り入れ、実際の災害に近い状況を作る
  • 訓練後に振り返りを行い、改善点を次回に活かす
  • 消防署や地域の防災組織と連携した訓練を実施する

同じ訓練を繰り返すだけでは効果が薄くなるため、火災・地震・水害などシナリオに変化をつけることがおすすめです。また、避難訓練だけでなく、社内の安否確認訓練や帰宅困難者対応訓練、応急救護訓練なども取り入れると、より実践的な防災対応力が身につきます。

とくに重要なのは、訓練を「やらされ感」のある行事ではなく、自分と仲間の命、そして事業を守るための実践的な学びの機会として位置づけることです。訓練の中で見つかった課題や改善点は、しっかりと次回の訓練や実際の防災対策に反映させましょう。

災害対策には安否確認システムの導入が有効

災害発生時、企業にとって最優先すべきは従業員の安否確認です。従業員の安否情報は、その後の救助活動、事業継続計画(BCP)の発動、初動対応体制の構築など、あらゆる企業活動の基礎となる最重要情報です。

災害時のスムーズな安否確認には、安否確認システムの導入が有効です。安否確認システムとは、安否確認メッセージの通知や回答結果の集計を自動化できるシステムです。防災担当者が手動でメッセージを送信したり、一人ずつに電話をかけたりする必要はありません。

これにより安否確認の時間が大幅に短縮され、管理者の負担も軽減できます。また、従業員の現在地や家族の状況、出社の可否といった情報も収集できて、二次災害防止や事業継続判断にも役立ちます。

 安否確認システムを導入するなら『安否確認サービス2』がおすすめ

▲出典:安否確認サービス2

トヨクモの『安否確認サービス2』は、導入社数が4,000社以上でさまざまな業界の企業・団体で導入されている安否確認システムです。サービス利用継続率は99.8%を誇ります。

緊急時に備えて従業員の連絡先を登録する必要がありますが、登録作業は非常に簡単です。SmartHRやkintone、cybozu.comなどで人事情報を管理している場合は、外部システム連携のボタンひとつで従業員情報の登録が完了します。

災害発生時に自動で安否確認メールが一斉送信され、従業員は状況を回答するだけで安否確認が完了します。回答結果は自動集計され、リアルタイムで確認できるため、管理者の手間を省きながら迅速な初動対応にあたれるのが魅力です。

料金プランは全部で4つです。企業規模や予算、必要な機能に応じて、最適なプランを選べます。

【安否確認サービス2の料金プラン】

プランライトプレミアファミリーエンタープライズ
料金(税込)※7,480円9,680円11,880円16,280円
主な機能・手動一斉送信
・自動集計
・掲示板
・メッセージ
・LINE連携(オプション)
・手動一斉送信
・災害連動の自動一斉送信
・自動集計
・掲示板
・メッセージ
・LINE連携(オプション)
・ファイル添付
・SmartHR人事情報連携
・freee人事情報連携
・kintoneアプリ連携
・手動一斉送信
・災害連動の自動一斉送信
・自動集計
・掲示板
・メッセージ
・LINE連携(オプション)
・ファイル添付
・SmartHR人事情報連携
・freee人事情報連携
・kintoneアプリ連携
・家族の安否確認
・手動一斉送信
・災害連動の自動一斉送信
・自動集計
・掲示板
・メッセージ
・LINE連携(オプション)
・ファイル添付
・SmartHR人事情報連携
・freee人事情報連携
・kintoneアプリ連携
・家族の安否確認
・API人事情報連携
・グループ会社との利用

※50ユーザーまで利用する場合

初期費用は無料で、最低利用期間も設定されていません。30日間の無料お試しが用意されているため、興味がある方はぜひお問合わせください。

まとめ:効果的なリスクコミュニケーションで災害に強い企業へ

災害リスクコミュニケーションは、災害発生時に従業員が適切な判断と行動をとるための基盤を作る、企業防災の重要な柱です。正常性バイアスへの理解や自分ごと化の促進、わかりやすい言葉での伝達、信頼できる情報の発信といった注意点を踏まえ、平時から従業員との双方向の対話を進めましょう。

また、リスクコミュニケーションの効果を最大限に引き出し、従業員の防災意識を具体的な行動へとつなげるためには、参加型の防災教育や実践的な防災訓練の実施が不可欠です。

災害は予測できませんが、適切なリスクコミュニケーションと具体的な備え(教育、訓練、安否確認システム導入など)によって、被害を最小限に抑え、事業を守ることは可能です。平時からの地道な取り組みを通じて、災害に強く、しなやかに回復できる企業づくりを目指しましょう。

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