安否確認システムの発動基準を徹底解説!発動時の注意点も紹介

遠藤 香大(えんどう こうだい)
安否確認システムの発動基準は、企業によって異なります。拠点を置く地域の気象や自然災害の発生頻度に応じて、発動条件を設定する必要があるためです。
この記事では、安否確認システムの発動基準や発動する際の注意点、おすすめのシステムなどを紹介します。安否確認システムの導入をご検討中の方は、最後までご覧ください。
目次
安否確認システムの発動基準はケースバイケース
安否確認システムの運用基準は企業ごとに異なっています。その理由は拠点を置く地域の災害リスクに応じて、企業ごとに発動条件が異なるためです。
耐震設計のオフィスビルに入居している企業では、震度5弱以上の地震を基準に安否確認メールを配信する例が多く見られます。
安否確認システムの発動基準は、気象条件や業種・企業規模をもとに設定することが重要です。
安否確認システムの対象者は従業員全員
安否確認システムを発動する際の対象者は、自社の企業活動に携わる従業員全員です。正従業員だけではなく、派遣従業員も含みます。
労働安全衛生法にもとづき、派遣先が派遣社員の安全衛生を確保するよう、定められています。
実際に災害が発生した際は、正社員やパート、派遣社員など、雇用形態を問わず安否確認を行う必要があることに注意しましょう。
安否確認システムを発動するメリット
地震や津波などの自然災害が発生した際、安否確認システムを発動するメリットは、以下6点です。
- 安否確認通知の自動化
- 災害時の迅速な状況把握
- 連絡手段の確保
- 管理者の負担軽減
- 事業復旧への素早い移行
- 従業員の状況に合わせた細やかな設定
災害発生時に安否確認メッセージを自動で送信し、回答結果も自動で集計されるため、災害時の迅速な状況判断に役立ちます。
メールやLINE、専用アプリなど、複数の連絡手段に対応しているシステムが多く、災害時に従業員と連絡が取れる確率が高まります。
また、高性能サーバーの運用や複数拠点でのデータセンター稼働によって、連絡手段を確保しやすい点も魅力です。
さらに、外国人従業者に合わせてメッセージを翻訳するなど、従業員の状況に合わせた細やかな設定を行えるため、メールや電話よりも効率的に安否確認を実施できます。
安否確認システムの使い方・流れを4ステップで解説
安否確認システムを発動する際は、以下の手順で事業復旧に向けた準備を進めます。
- 安否確認システムの発動
- 従業員からの状況報告
- 回答内容の集計・共有
- 管理者から従業員へ指示
運用までのフローを知っておくことにより、システム発動後の対応をより深く理解し、企業の規模にあわせて運用を進められるでしょう。さらに、従業員も安否確認の流れを知っておくと、緊急時に迷うことなく行動できます。
以下では、各プロセスの詳細を紹介します。
1.安否確認システムの発動
一定水準以上の地震や津波などが発生した際、安否確認システムが発動し、従業員に安否確認メールが自動配信されます。
システムの発動基準は「一定震度以上の地震」や「台風、そのほかの災害の発生」など、任意で設定可能です。
また、安否確認メールの内容は、事前に作成できるのが一般的です。多くの安否確認システムにはテンプレートが用意されているため、メッセージを一から作成する手間を省けます。
2.従業員からの状況報告
安否確認メールを受け取った従業員は、自身が置かれた状況を報告します。回答方法は空メールの送信やプルダウンメニューから回答を選択するなど、システムによって異なります。
従業員が操作に迷わないよう、簡単に回答できる安否確認システムを導入しましょう。
また、従業員全員から迅速に回答を得る必要がある一方で、被害状況によっては未回答の従業員が出てくるおそれもあります。
安否確認システムによっては、未回答の従業員のみに安否回答メールを再送する機能が用意されています。一定期間内に回答が得られない場合、自動的に安否確認メールを再送する機能です。
安否確認メールの再送機能が利用できるシステムを選ぶと、従業員全員の安否を素早く確認できるでしょう。
3.回答内容の集計・共有
従業員の回答内容は、即座に自動集計してシステムに反映されます。集計された内容は、円グラフや折れ線グラフなど視覚的に表示されるため、一目で回答結果を把握できます。
また、安否確認では誰の回答が返ってきているか、誰がどのような状況にいるのかなどを素早く把握することが重要です。
PCに加えて、スマートフォンや携帯電話からも集計結果が確認・共有できるよう、マルチデバイス対応のシステムを選びましょう。
4.管理者から従業員へ指示
集計された回答結果をもとに、管理者は出社指示や自宅待機などの指示を出します。誰にどのような指示をするべきかを決定し、個人やグループなどのターゲットに対して指示しましょう。
たとえば、「出社可能」と回答した従業員に対しては、出社させるかどうか、出社させるとしたら場所と時間をどうするか決めて指示します。
「出社不可」と回答した従業員には、その理由と状況を把握したあと、従業員自身や家族のケアを優先させるために自宅待機や在宅勤務などを指示するのが適切でしょう。
回答結果をもとに、管理者は出社可否の確認や今後の対応の説明など、事業再開に向けての準備に移行します。
安否確認システムを発動する際の注意点
安否確認システムを発動する際は、以下の2点に注意が必要です。
- 回答の義務付けはできない
- 業務時間外の訓練は賃金が発生する
業務時間外のメールへの回答や訓練参加を義務付けると、労働とみなされます。割増賃金を支払わない限り実施は認められないため、注意しましょう。
回答の義務付けはできない
災害が業務時間外や休日に発生した場合、安否確認メールが従業員に自動配信されますが、メールへの回答を義務付けることはできません。
メールへの回答を義務付けた場合は労働とみなされ、割増賃金を支払う必要があります。
業務時間外の訓練は賃金が発生する
災害は業務時間外に発生する可能性があります。そのような場合に備え、災害対策の強化として休日に防災訓練を実施したい企業もあるでしょう。
業務時間外の防災訓練に違法性はありませんが、強制できない点には注意が必要です。
企業側に認められているのは、業務時間外での防災訓練に参加するように、従業員に要請することです。
業務時間外におこなう訓練へ強制参加を命じる場合は、従業員へ割増賃金を支払わなければなりません。
そのため、安否確認システムを使って休日に防災訓練を実施する場合は、防災訓練の重要性を説明したうえで、従業員に訓練参加を要請しましょう。
なお、業務時間外の安否確認訓練については、下記記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
業務時間外の従業員に安否確認訓練に強制参加させることは可能か
発動基準を設定可能な安否確認システム5選
自社の組織体制に応じて発動基準を柔軟に設定しやすい安否確認システムは、以下の5つがあげられます。
- 安否確認サービス2
- オクレンジャー
- エマージェンシーコール
- レスキューナウ 安否確認サービス
- 安否LifeMail
以下では、各システムの発動基準や特徴などを紹介します。
安否確認サービス2
安否確認サービス2は、トヨクモ株式会社が提供する安否確認システムです。
大規模災害が起きても安定した稼働が期待できるため、多くのユーザーから高評価を得ています。リピート率は99.8%の高水準を誇り、導入企業数も4,000社を突破しました。
安否確認サービス2の発動条件は、事前に設定した条件以上の災害が発生したタイミングです。
気象庁の「地震/津波/特別警報」と連動しており、設定した震度以上の地震が該当地域で発生した際、安否確認のメールが自動送信されます。
回答結果の閲覧者を事前に設定できるため、従業員の個人情報が第三者に流出する心配はありません。
また、毎年9/1にすべての契約企業を対象とした防災訓練を実施しています。訓練の目的は災害発生時と同レベルの負荷をかけ、安定してシステムを稼働するかを確認することです。
訓練結果が、サービス品質保証制度(SLA)の基準を下回ったことはありません。大規模災害に強い安否確認システムを求める企業に、適した選択肢でしょう。
オクレンジャー
▲出典:オクレンジャー公式サイト
オクレンジャーは、株式会社パスカルが提供する安否確認システムです。一般企業に加えて、学校や病院などにも利用されており、導入実績数は4,000社を突破しました。
オクレンジャーの特徴は、取得できる災害情報や気象情報が多い点です。
気象庁の地震情報や津波情報と連動しており、事前に設定した震度や地域などの条件を満たした地震が発生した場合、安否確認のメールが自動で配信されます。
安否確認の回答結果や回答人数、メールの既読数などは自動で集計されるため、管理者の負担も減らせるでしょう。
また、以下の情報を取得したあと、安否確認メールが自動で配信されるオプションも利用可能です。
- 気象庁の注意報や警報(特別警報)
- 記録的短時間大雨情報
- 土砂災害警戒情報
- 指定河川洪水予報
自社の拠点を置く地域の災害頻度や気象傾向に応じて、オプションの利用可否を判断しましょう。
オクレンジャーは、自然災害が多く発生する地域に拠点を持つ企業向けの安否確認システムです。
エマージェンシーコール
▲出典:エマージェンシーコール公式サイト
エマージェンシーコールは、インフォコム株式会社が提供する安否確認システムです。企業規模や業界を問わず利用されており、導入実績数は5,200社を突破しました。
エマージェンシーコールの特徴は、拠点を置く地域や組織体制に応じた運用が期待できる点です。
地震発生時の発動条件は震度や地域など、設定内容に応じて最大32パターンまで設定できます。設定する地域は、気象庁の定める区分に従って選択できます。
そのため、たとえば工場や支社など、全国に拠点を複数展開する企業も運用しやすいでしょう。
また、安否確認のメールには最大10個まで設問を設定できるため、回答結果から多くの情報を集められます。
出社可否や避難場所に関する設問を設けておくと、従業員に何度も確認を取る手間が省けるでしょう。
レスキューナウ 安否確認サービス
レスキューナウ 安否確認サービスは、株式会社レスキューナウが提供する安否確認システムです。
レスキューナウ 安否確認サービスの発動条件は、地震発生時と気象特別警報を受信したタイミングです。
市区町村単位で対象地域を絞り込んだあと、該当地域で働く従業員にしか安否確認のメールが配信されない仕様になっています。メール配信対象者を限定することで、通常業務へ支障が出るリスクを避けられるでしょう。
また、安否確認メールを配信するうえで、自社独自の発動基準を設定できます。メンバーや勤務地、職種など、自社の運用体制に応じてグループの作成が可能です。
レスキューナウ 安否確認サービスは全国に拠点を展開する企業、従業員数が多い企業におすすめの選択肢です。
安否LifeMail
安否LifeMailは、株式会社コム・アンド・コムが提供する安否確認システムです。
安否LifeMailの発動基準は、設定した震度以上の地震や津波が発生したタイミングです。発動基準を満たした災害が発生すると、気象庁との連動によって安否確認のメールが自動配信されます。
また、SNS連携を活用するとLINE上でも安否確認のメールを受信できるため、従業員からの回答率が高まるでしょう。
さらに、安否LifeMaiでは、地震や津波の発生を想定した訓練の実施も可能です。訓練メールを使うと、被害が起きた時にどのような手順で安否確認を進めるべきか、実践を想定しながら流れを学べます。
安否LifeMailは、地震や津波が頻繁に発生しやすい地域に拠点を展開している場合に、おすすめの安否確認システムです。
なお、下記記事では、安否確認システム14製品についてより詳細に比較しています。上記5製品以外の選択肢から比較したい方は、あわせてご覧ください。
【2024年】安否確認システム14製品を徹底比較!導入に失敗しない選び方も解説
安否確認システムを導入する際のポイント・注意点
おすすめの安否確認システムを紹介しましたが、以下2点を導入前に理解する必要があります。
- 導入・運用コストがかかる
- 訓練を実施する必要がある
安否確認システムの導入する際は、初期費用や月額費用が発生します。災害が発生していない期間も継続的に月額費用を払う必要があるため、無理なく継続的に利用できる安否確認システムを選びましょう。
また、従業員の安全確保やリスクマネジメントの強化は、安否確認システムの導入だけでは不十分です。従業員が緊急時にスムーズに操作できるよう、定期的に訓練を実施する必要があります。
システムの使い方を忘れないよう、最低でも1年に1〜2回は安否確認の訓練を実施するようにしましょう。
安否確認システムの発動基準は事前に把握しよう
安否確認システムの発信基準は任意で設定できるため、自社の耐震性などを考慮して、発信基準を決めておきましょう。拠点を置く地域の気象傾向や自然災害の発生頻度によって、安否確認システムを発動すべきタイミングは異なります。
また、安否確認システムの使い方を覚えるべきなのは、管理者だけではありません。安否確認の流れやシステムの操作方法を理解しておけば、緊急事態が発生しても落ち着いて対応できるでしょう。
定期的に防災訓練を実施し、管理者・従業員ともに安否確認のやり方を理解しておきましょう。
トヨクモの『安否確認サービス2』ではすべての契約企業を対象に、毎年1回防災訓練を実施しています。訓練の情報は日時と時間帯以外、公開されていません。
開始時刻は管理者にも通知されないため、実際に被害が起きた時と近い状況で、安否確認の訓練を実施できます。
訓練終了後は回答率時間推移や訓練全体の平均回答時間などのレポートが送付され、今後の防災対策に役立てられます。
また、30日間の無料トライアルが設けられており、費用をかけずに操作性を確認できる点も魅力です。
安否確認システムをお求めの方は、安否確認サービス2の導入をご検討ください。

執筆者:遠藤 香大(えんどう こうだい)
トヨクモ株式会社 マーケティング本部に所属。RMCA認定BCPアドバイザー。2024年、トヨクモ株式会社に入社。『kintone連携サービス』のサポート業務を経て、現在はトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営メンバーとして編集・校正業務に携わる。海外での資源開発による災害・健康リスクや、企業のレピュテーションリスクに関する研究経験がある。本メディアでは労働安全衛生法の記事を中心に、BCPに関するさまざまな分野を担当。