避難三原則とは?各原則の概要や企業向けの自然災害対策を事例を交えて紹介

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トヨクモ防災タイムズ編集部

避難三原則とは地震や津波など、自然災害が起きた際に自身の命を守るために実践すべき行動原則です。群馬大学大学院の片田敏孝教授によって提唱されました。学校での防災教育にも取り入れられており、多くの方の命を救った実績もあります。

この記事では、避難三原則の概要や企業向けの自然災害対策などに関して紹介しています。自然災害が多い地域に拠点を置いている企業は、最後までご覧ください。

避難三原則とは

避難三原則とは地震や津波が起きた際、自身の命を守るためにどのような行動を取るべきか、実行すべき内容をまとめた行動原則です。群馬大学大学院の片田敏孝教授が提唱しました。

避難三原則は、以下3つの原則から構成されています。

  • 第一の原則:想定にとらわれるな
  • 第二の原則:最善を尽くせ
  • 第三の原則:率先避難者たれ

避難三原則は学校の津波防災教育でも取り入れられています。避難三原則を忠実に守って行動した結果、東日本大震災が起きた際、岩手県釜石市内の生徒は多くが無事でした。避難三原則に忠実に従い、無事だった小中学生の行動は、「釜石の奇跡」とも呼ばれています。

また、避難三原則は学校教育にとどまらず、企業の災害対策強化や従業員の防災意識向上にも役立ちます。各原則の内容を見ていきましょう。

第一の原則:想定にとらわれるな

「海から何キロも離れている」や「浸水想定区域の対象外まで津波が来る可能性は低い」など、自分の想定にとらわれない重要性を説いた原則です。

地震や津波、土砂災害など、自然災害は次に何が起きるのか、予想がつきません。場合によっては、人間の想像をはるかに超える被害をもたらすケースがあります。

また、災害発生時に柔軟な対応ができるよう、ハザードマップは参考情報として捉えましょう。ハザードマップは、拠点を置く地域の地理的な特徴や自然災害のリスクを把握できる地図です。

ただし、ハザードマップの内容通りに、津波や地震、土砂災害などが起きるとは限りません。従業員の防災意識向上や災害対策を強化する手段の1つとして、ハザードマップを活用しましょう。

第二の原則:最善を尽くせ

一時的に避難した場所が最も安全な場所と考えず、より安全な場所に避難するよう、状況に応じて行動する重要性を説いた原則です。東日本大震災の際、釜石東中学校と鵜住居小学校の生徒が取った行動から、安全確保の重要性がわかります。

地震発生後、鵜住居小学校の生徒は校舎内にとどまっていました。しかし、中学校の生徒が周囲に避難の必要性を大声で叫びながら逃げていくのを見て、小学生たちも危険を感じて校舎を出ました。

小学生と中学生は日頃から一緒に避難訓練をしており、小学生が手本にしやすい状況を作っていた点も重要なポイントです。小学生は中学生の後を追い、避難先のグループホームに一時避難しました。

しかし、津波の様子を見ていた生徒が危険を感じ、先生と相談してさらに高台の介護施設に移動します。柔軟かつ冷静な対応によって、生徒たちは命を確保できました。

避難してからわずか30秒後、介護施設の目の前まで津波が迫っており、グループホームにいた場合は命を落としていた可能性があります。

上記の例のように、目の前の状況で全力を出し切る姿勢が、災害時には重要だといえます。

第三の原則:率先避難者たれ

緊急事態が起きた際は周囲の様子を伺うのではなく、自分が先頭に立って避難する重要性を説く原則です。人間は危険が迫っている場合でも、「ここまでは来ない」や「何とかなる」など、都合のいい解釈をするケースも少なくありません。

しかし、自然災害は人間の想像をはるかに超える被害をもたらすケースがあり、判断が遅れると命を落とす可能性が高まります。自身の安全を確保するには、災害発生後に率先して逃げる意識をもつことが重要です。

また、自身が率先避難者としての姿勢を見せると、周囲の方も同調して避難するようになり、結果的に周囲の方を助ける行動につながります。

避難三原則に加えて自然災害対策で意識すべき6つのポイント【企業編】

災害対策の強化には避難三原則に加えて、以下6つの点を意識することが重要です。

  1. 危険を感じたらすぐに避難する
  2. レスキュー3原則も意識する
  3. 防災備蓄品を用意しておく
  4. BCPを策定しておく
  5. 緊急事態に備えて連絡手段を確保する
  6. 大規模災害の際もインターネット回線はつながりやすい

内容を一つひとつ見ていきましょう。

危険を感じたらすぐに避難する

外出先で危険を感じた場合は災害の大小を問わず、素早く安全な場所まで避難するよう、従業員へ徹底することが重要です。安全な場所に避難すれば、救急や消防、自治体から救助される確率が高まるためです。

ただし、避難が遅れると、津波や地震によって建物や土砂などの下敷きになる可能性が高まり、救助隊が見つけにくくなります。

実際、大地震の発生から24時間以内に救出された場合、被災者の生存率は約90%でした。48時間以内の場合は生存率が約50%、72時間以内だと20〜30%まで下がります。72時間以上が経過すると、1%の方しか助かりません。

また、避難原則の1つに「率先避難者たれ」とあるように、定期的な訓練を積んでいない限り、人は危険が迫っていてもなかなか決断できません。

周囲の方が行動する様子を見て続く傾向にあるため、1人でも多くの方がすぐに避難する姿勢を見せることが重要です。

レスキュー3原則も意識する

レスキュー3原則とは、地震が発生した際に意識すべき行動指針です。地震の発生時は、以下3つの内容を意識しましょう。

  1. 打たない
  2. 切らない
  3. 挟まれない

「打たない」は、振動による落下物や机の角で頭を負傷しないようにする原則です。地震が発生した際に素早く頭を保護できるよう、ヘルメットを用意しておきましょう。

「切らない」は、窓ガラスやカッターなど、鋭利なモノで飛散しないように注意する原則です。地震の衝撃で窓やキャビネットのガラスが飛散しないよう、ガラス飛散防止フィルムや粘着シートなどを活用します。

看板や外壁、照明の落下によって怪我をする可能性もあるため、地震の発生直後に事業所の外に出るのも避けましょう。

「挟まれない」は、コピー機やキャビネット、パーテーションなど、オフィス備品に挟まれないように注意する原則です。

地震の影響で事業所内の備品が転倒してケガをしないよう、ネジ止めやポール式器具、L型金具などを活用し、各備品の固定力を強化しておきます。

防災備蓄品を用意しておく

自然災害によっては事業所内で一定期間過ごす可能性もあるため、防災備蓄品を用意しておきましょう。災害によっては、水道や電気、交通機関などのインフラが機能不全に陥る可能性があります。

また、労働契約法にもとづき、企業は従業員の安全確保が義務付けられています。被災状況を正確に掴めない中、従業員に帰宅を命じるのは危険で法律違反に該当する行為です。

従業員がバラバラに帰宅すると、救助活動や被災状況の障壁となる可能性もあるため、一定期間事業所で過ごせる環境を整備しておく必要があります。

事前に用意しておくべき主な防災備蓄品を以下に記載しました。

  • 飲料水と生活用水
  • 非常食
  • 衛生用品
  • 防寒具
  • 電池式のラジオ
  • 乾電池やモバイルバッテリー
  • 救護用品

日数や人数を想定して防災備蓄品を管理すると、実際に被害が起きても物資不足のリスクを軽減できます。

緊急時でも安心!BCP備蓄品リストと準備やBCP対策のポイントを解説

BCPを策定しておく

BCP(Business Continuity Plan)とは、自然災害や感染症の発生など、緊急事態の際に最短で事業復旧を目指すための事業継続計画です。2024年から介護事業所にはBCPの策定が義務付けられたものの、一般企業にはまだ義務化されていません。

BCPには初動対応の流れや重要業務の優先順位、備蓄品の確保など、さまざまな内容を記載しておきます。被災後にどのような流れで復旧作業を進めるのかがわかるため、最短での復旧につなげられます。

自然災害と感染症用、別々にBCPを策定しておくと、従業員の迷いや不安を軽減できるでしょう。

また、BCPの策定によって、「リスクマネジメントの強化に余念がない企業」との印象を与えられ、取引先や顧客に安心感を与えられます。

BCP対策とは?目的やメリット、策定手順をわかりやすく解説

緊急事態に備えて連絡手段を確保する

自然災害や台風の発生など、緊急時に従業員と素早く連絡が取れるよう、メールや電話以外の連絡手段を確保しておく必要があります。大規模災害が発生した場合、多くの方が電話を使って家族や友人の安否を確認するため、連絡が取りにくいです。

東日本大震災の際は、通常時と比べて50〜60倍のトラフィック量が発生しました。トラフィック量とは、通信回線上で交わされるデータ量のことです。実際、ドコモ・au・ソフトバンクの音声通信は、最低70%以上が規制されていました。

一方、メールのパケット通信は音声通信と比べると、つながりやすい状況でした。しかし、データ処理の量がサーバーのスペックを大幅に超えていたため、メールの受信速度低下や位置情報の乱れなど、通信障害が頻繁に発生していました。

上記の点を踏まえて、SNSやIP無線機、安否確認システムなど、緊急時に備えて複数の連絡手段を確保しておくことが重要です。

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大規模災害の際もインターネット回線はつながりやすい

大規模災害が起きても、電話回線と比べてインターネット回線は利用しやすいです。東日本大震災の際も、津波や地震の被害が極端に大きかった地域を除き、インターネット回線は機能していました。

当時はXやLINEを利用しての情報発信が頻繁に行われており、警報や避難状況などが共有されていました。また、ドコモ・au・ソフトバンクの3大キャリアは、東日本大震災の発生後、停電対策を強化しています。

津波被害の影響が大きかった地域では、電力設備へのダメージや機能不全によって電力供給が停止したためです。停電対策として、予備電源や移動電源車の導入、大ゾーン基地局の整備が進められています。

さらに、インターネット回線が利用できなくなった場合の対策として、ファイブゼロジャパン(00000JAPAN)と呼ばれるサービスが開発されました。

ファイブゼロジャパンは大規模災害が発生した際、回線契約の有無を問わず誰でもWi-Fi回線が利用できるサービスです。

緊急時の連絡手段に安否確認システムが最適な4つの理由

緊急時の連絡手段に安否確認システムを導入すべき理由には、以下4つの内容があげられます。

  1. 気象庁との連携によって災害発生時に安否確認を自動でできる
  2. 緊急時でも従業員とのやり取りが望める
  3. 事業復旧へ素早く移行できる
  4. 管理者への負担が小さい

安否確認を効率化できる点、複数の連絡手段に対応している点などが、理由にあげられます。

安否確認システムの必要性とは?導入メリット・失敗しないための選定のポイントを紹介!

気象庁との連携によって災害発生時に安否確認を自動でできる

気象庁と連携した安否確認システムの導入によって、一定規模以上の自然災害が発生すると、安否確認メールと災害情報が自動で送信されます。地震や津波、土砂災害など、災害情報が通知されるため、従業員に避難と安全確保を素早く促せます。

避難三原則のひとつに「率先避難者たれ!」とあるように、自然災害が発生した際の最優先事項は安全な場所への避難です。素早く避難できると、命が助かる確率が高まります。

緊急時でも従業員とのやり取りが望める

専用アプリやLINE、SMSなど、複数の連絡手段に対応した安否確認システムが多く、従業員との連絡手段を確保しやすいです。大規模災害の際は、トラフィック量が通常の50倍以上に増えるため、電話やメールは利用できない可能性が高まります。

複数の連絡手段に対応した安否確認システムを導入すると、従業員や家族の安否を素早く確認できるでしょう。

また、安否確認システムを提供している企業は、ネットワーク環境の冗長化やデータセンターの分散など、強固な災害対策を講じており、緊急時も安定稼働が期待できます。

事業復旧へ素早く移行できる

事業再開には、実務を担う従業員を一定数以上確保しなければなりません。掲示板機能を実装した安否確認システムを導入すると、BCPマニュアルを掲載でき、事業再開に向けての動きを従業員とスムーズに共有できます。

また、メッセージ機能も実装している場合、システム上に動画や画像の投稿も可能です。管理者は従業員の避難場所や被災状況を正確に把握でき、事業再開に向けてのスケジュールを立てやすくなります。

管理者への負担が小さい

事前にBCPを策定していた場合、管理者が緊急時の安否確認に関して中心的な役割を担います。ただし、災害の大きさや被害状況によっては、管理者が対応できないケースもあります。自然災害が起きた際、管理者が安全を確実に確保できる保証はありません。

安否確認システムを導入すると、安否確認メールの送信や回答結果の集計、未回答者への再送信など、一連の作業を自動化できます。安否確認の自動化によって、管理者の状況を問わず、安否確認を効率的に進められる体制が整います。

災害発生時は避難三原則を忠実に守ろう

自身と周囲の命を守るためにも、地震や津波が発生した際は避難三原則にしたがって行動することが重要です。被災の影響を軽減するため、複数の連絡手段確保や備蓄品の用意など、事前に災害対策を強化しておく必要もあります。

従業員との連絡手段には、安否確認システムを導入するのがおすすめです。LINEや専用アプリなど、複数の連絡手段に対応しています。強固な災害対策も講じており、災害時の安定稼働も期待できます。

トヨクモの『安否確認サービス2』は、システムの安定性への評価が高く、4,000社以上の企業が導入している安否確認システムです。シンガポールでメインサーバーを運営しており、日本国内で大規模災害が起きても影響を受ける心配は少ないです。

シンガポールは過去100年の間に、地震や津波による大規模な被害が発生していません。電力供給も安定しており、停電の心配も少ないです。

また、アクセスが集中した際はサーバーを拡張するため、トラフィック量が増えても安定稼働が望めます。

さらに、中小企業が利用しやすいよう、月額料金も比較的リーズナブルな価格に設定されています。初期費用や最低利用期間は発生しません。

緊急時の連絡手段をお探しの方は、『安否確認サービス2』の導入をご検討ください。

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