製造業向け安否確認システムおすすめ3選|工場・現場ならではの課題と選び方
遠藤 香大(えんどう こうだい)
製造業の安否確認は、オフィス中心の企業と同じ発想では回りません。工場勤務者に社用端末やメールアドレスが行き渡っていない、派遣・パートを含めた名簿の更新が重い、電話連絡網では集計に時間がかかる。平時は何とか回っていても、災害時にはその無理が一気に表面化します。
実際、連絡が一部の従業員に届かなかったり、安否確認の集計に丸一日かかったりしたケースもあります。
本記事では、製造業で安否確認体制を整えるうえで押さえたい課題を整理したうえで、システム選定のポイントとおすすめのサービスを紹介します。総務部門やBCP担当者が、自社に合う仕組みを考える際の判断材料として役立ててください。
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目次
製造業で安否確認システムが必要な理由
製造業では、地震や台風、豪雨の影響がそのまま事業継続の問題につながります。工場や事業所が被災すれば、従業員の安全確認だけでなく、操業停止や出荷遅延、取引先への影響まで広がりかねません。安否確認の遅れが、自社の中だけでは済まない業種です。
こうした背景から、安否確認は単なる連絡手段ではなく、BCPの初動を支える仕組みとして考える必要があります。とはいえ、現場では今も電話連絡網や手作業の集計に頼っている企業があります。平時は回っていても、災害時には連絡がつかない、集計に時間がかかる、情報が錯綜するといった運用上の詰まりが表面化します。
安否確認システムを導入すれば、災害発生時の一斉配信や回答集計を自動化できます。担当者の負担を抑えながら、必要な情報をより早く把握しやすくなります。製造業のBCP対策では、欠かせない備えの一つです。
製造業ならではの安否確認の課題3つ
工場勤務者に社用端末・メールアドレスが配布されていない
製造業でまず課題になりやすいのが、工場勤務者への連絡手段です。事務や管理部門と異なり、工場や現場で働く従業員には、社用のパソコンやメールアドレスが付与されていないことがあります。ビジネスチャットのアカウントを持っていないケースもあり、既存の仕組みで安否確認をしようとすると、製造部門だけ電話で個別対応するといった手間が残ります。
水回り製品の製造・販売を手がける株式会社タカギでは、安否確認システムの導入前はビジネスチャットツールを使っていました。ただ、製造部門の従業員の多くはアカウントを持っておらず、別途電話やメールで確認する必要があり、かなりの時間と手間がかかっていたといいます。
(参考:安否確認サービス2「製造業にもおすすめできる安否確認システム。社用デバイス・メールアドレスを配布していなくても活用できる」)
大雨や地震などの緊急時に、一部の従業員に連絡が届かない状態は、そのまま初動の遅れにつながります。工場勤務者を含めて、全員に同じ情報をどう届けるか。ここを曖昧にしたままでは、安否確認は機能しません。
派遣・パート比率が高く名簿のメンテナンスが重い
製造業では、季節要因や受注量に応じて人員が増減しやすく、派遣社員やパート従業員の比率も高くなります。そのため、安否確認システムに登録する名簿の更新頻度も自然と上がります。
この更新を手作業で回していると、担当者の負担が増します。しかも、更新が追いつかないまま災害時を迎えれば、退職済みの人に通知が届く、新しく入った従業員が登録されていない、といったズレも起きます。
菓子メーカーの春日井製菓株式会社では、500名を超える従業員の人事情報を手作業でメンテナンスしていたため、運用負荷が大きかったといいます。この負担を減らしたいということが、安否確認サービス2へ乗り換えた大きな理由の一つでした。
(参考:安否確認サービス2「他社システムから乗り換え。メンテナンス業務を0に、大災害での稼働も実証」)
名簿管理は、災害時のための準備であると同時に、日常的に発生する運用業務でもあります。だからこそ、API連携やCSV取込に対応し、更新をできるだけ手間なく回せるかが重要です。
電話連絡網では情報伝達に時間がかかり、伝言ミスも起きやすい
電話連絡網は、一見するとシンプルですが、実際には不安定です。全員に伝わるまでに時間がかかるうえ、伝言を重ねるなかで内容が変わることもあります。製造業では、工場勤務者への個別連絡が発生しやすいため、連絡の遅れや伝達ミスが起きやすくなります。
食品製造・販売を手がける株式会社鹿鳥食品では、令和2年7月豪雨の際、社長の「雨が強いから無理して出社しなくていい」という指示が、連絡網を通るなかで「全従業員が9時に出社しなければいけない」という内容に変わって伝わってしまいました。結果として、大雨のなか無理に出社した従業員がいたといいます。
(参考:安否確認サービス2「電話による緊急連絡網で情報伝達ミスが発生 安否確認サービス2の導入で、的確に指示を伝えられる体制を構築」)
災害時は、早く伝わることも大事ですが、正確に伝わることも同じくらい重要です。安否確認システムが必要になるのは、一斉送信できるからだけではありません。情報を途中で変えずに届けやすいからです。
製造業が安否確認システムを選ぶ際の5つのポイント
工場員など端末・メアドを持たない従業員にも届く連絡手段の多様性
製造業でまず見ておきたいのは、どの手段で通知を届けられるかです。メール、スマートフォン向けアプリ、LINEなど、複数の連絡手段に対応していれば、社用端末を持たない工場勤務者にも通知を届けやすくなります。
災害時は、パスワードを忘れてログインできないことも起こります。そのため、URLをクリックするだけで回答できる仕組みがあるかどうかも見ておきたいところです。スマートフォンを持っていない従業員がいる場合は、ガラケー対応の有無も確認が必要です。
名簿管理の効率化(外部システム連携・CSV取込)
派遣社員やパート従業員が多い製造業では、名簿の更新をどれだけ無理なく回せるかが重要です。まず見ておきたいのは、SmartHR、freee人事労務、kintoneなど、すでに使っている人事システムと連携できるかどうかです。
連携が難しい場合でも、CSVをそのまま取り込めるかどうかで運用負荷は変わります。専用フォーマットへの変換が必要なシステムだと、更新のたびに手間が増えます。休職中や育休中の従業員を一時停止できる機能があれば、不要な通知を防ぎやすく、契約ユーザー数の管理にも使えます。
自動配信・自動集計で管理者の負担を減らせるか
災害は、担当者が操作できる時間に起きるとは限りません。気象庁の情報と連動し、設定した震度や地域に応じて自動で配信できるかは外せないポイントです。夜間や休日でも、手動操作なしで一斉送信できれば、担当者が不在でも回しやすくなります。
未回答者への自動再送信ができれば、回答率を上げやすくなります。回答結果がリアルタイムで自動集計されるかどうかも、あわせて確認しておきたいところです。初動時に状況をどれだけ早く把握できるかに関わるためです。
いざというときに確実に動くか(安定稼働)
安否確認システムは、最もアクセスが集中する場面で止まらないことが求められます。大規模災害の発生直後に多くのユーザーが一斉に利用しても、安定して動くかどうか。ここは機能面と並んで重視したい点です。
その判断材料として、AWSなどのクラウドインフラを採用しているか、データセンターが分散されているか、オートスケールに対応しているかを見ておきたいところです。過去の大規模災害で安定稼働した実績があるかどうかも、軽く見ないほうがいい点です。
コスト(初期費用・ランニングコスト)
安否確認システムは、導入して終わりではなく、継続して使う仕組みです。初期費用の有無に加え、月額料金が利用人数に応じて変動するかどうかも見ておく必要があります。
製造業では、繁閑や生産体制の変化によって従業員数が動くことがあります。そうした変動に合わせて費用を調整しやすい料金体系か。ここも、導入後の運用を考えると見逃せないポイントです。
製造業向け安否確認システムおすすめ3選
安否確認サービス2(トヨクモ株式会社)
導入社数4,000社以上、サービス利用継続率99.8パーセントを掲げる安否確認システムです。製造業の導入事例も多く、工場や現場を含む運用を前提に検討しやすいサービスと言えます。
製造業でまず問題になりやすいのが、工場勤務者への連絡手段です。安否確認サービス2は、メール、スマートフォン向けアプリ、LINE連携に対応し、ガラケーでも利用できます。メールに記載されたURLから、パスワードなしで回答できる仕組みがあるため、端末の操作に慣れていない従業員にも展開しやすい設計です。
名簿管理の面では、SmartHR、freee人事労務、kintone、Google Workspace、Microsoft Entra IDとのAPI連携に対応しています。CSV取込も、専用フォーマットに合わせて作り直すのではなく、画面上で列を対応づけながら取り込めます。休職者や育休中の従業員を一時停止でき、その間は契約ユーザー数に含まれません。
災害発生時は、気象庁の情報と連動して24時間365日自動で配信できます。未回答者への自動再送や、回答結果のリアルタイム集計にも対応。インフラ面では、AWS、世界分散データセンター、オートスケールを採用しています。
初期費用は0円。管理者数に制限がなく、多拠点やグループ会社をまたいだ運用にも対応しやすいサービスです。
オクレンジャー(株式会社パスカル)
2006年から提供されている安否確認システムです。導入実績や利用者数の大きさに加え、通知手段やオプション機能の幅広さが特徴です。
製造業の観点で見ると、外国籍従業員がいる現場で使いやすい自動翻訳オプションは注目しやすい機能です。掲示板機能では、写真や動画を含めた情報共有もできます。災害時の安否確認だけでなく、設備や施設の被害状況を現場から本部へ伝える用途も考えやすい構成です。
料金はプランと利用人数で変わります。公式サイトの料金例では、エントリープランが50ユーザーで年額60,000円、100ユーザーで年額115,200円です。オプション利用料と初期設定費は別途かかります。なお、地震・津波自動配信は標準機能として案内されています。
通知手段やオプションの組み合わせを細かく調整したい企業、安否確認に加えて現場からの情報共有も重視したい製造業で検討しやすいサービスです。
公式サイト: https://www.ocrenger.jp/
ANPIC(株式会社アバンセシステム)
ANPICは、静岡大学・静岡県立大学と共同開発された安否確認システムです。費用を抑えて導入しやすく、中小規模の製造業でも検討しやすいサービスです。
料金は、50名プランで月額5,130円から。2026年4月30日までのキャンペーンでは、初期導入費0円、年額61,560円で利用できます。まずは小さく始めたい工場や拠点でも候補に入れやすい価格帯です。
名簿管理の面では、CSVを使った「マスタ連携」機能を用意しています。既存の人事データをもとにユーザー情報を更新できるため、派遣社員やパート従業員を含め、人の入れ替わりがある現場でもメンテナンスの負担を抑えやすくなります。
ガラケーでの利用や代理報告にも対応しており、デジタルツールに不慣れな従業員がいる職場でも運用しやすい設計です。通知手段はメールに加えてアプリやLINEにも対応しているため、連絡手段を複数持っておきたい製造業とも相性があります。
公式サイト: https://www.anpic.jp/
製造業の導入事例
事例①:株式会社タカギ(水回り製品メーカー・1,001〜5,000名)
蛇口一体型浄水器などの製造・販売を行う株式会社タカギでは、以前はビジネスチャットツールを使って手動で安否確認を行っていました。ところが、製造部門の従業員の多くはチャットツールのアカウントを持っておらず、別途電話やメールで確認する必要があり、対応開始までにかなりの時間と手間がかかっていたといいます。
安否確認サービス2の導入時には、個人情報の暗号化や、管理者でも連絡先を確認できない仕組みを丁寧に説明し、従業員の理解を得ながら登録を進めました。導入時点で登録率は80パーセントを超え、現在は94パーセントに達しています。従業員一人ひとりの防災意識が高まったことも、導入効果の一つとして挙げられています。
(参考:安否確認サービス2「製造業にもおすすめできる安否確認システム。社用デバイス・メールアドレスを配布していなくても活用できる」)
事例②:春日井製菓株式会社(菓子メーカー・301〜1,000名)
「つぶグミ」などで知られる春日井製菓株式会社は、東日本大震災をきっかけにBCPを策定し、安否確認システムを導入しました。ただ、500名を超える従業員の人事情報を手作業でメンテナンスしていたため、運用負荷が大きかったといいます。そこで安否確認サービス2へ切り替え、メンテナンス業務をなくしました。
パスワードなしで回答できる機能や、管理者数に制限がない点も評価されています。大規模災害時でも安定して利用できたことから、緊急時の運用面でも安心感を持てたようです。
(参考:安否確認サービス2「他社システムから乗り換え。メンテナンス業務を0に、大災害での稼働も実証」)
事例③:みちのくミルク株式会社(乳製品製造・51〜300名)
雪印メグミルクグループの東北地域の製造拠点として乳製品の製造するみちのくミルク株式会社では、導入前は従業員への連絡から回答の集計まで、すべてを手作業で行っていました。安否確認訓練では、連絡開始から集計完了まで丸1日かかっていたといいます。
安否確認サービス2の導入後は、一斉連絡と集計が完全に自動化され、現在は約3時間で安否確認が完了するようになりました。回答率も100パーセントを達成しています。操作のしやすさと価格面のバランスが、導入の決め手になったとのことです。
(参考:安否確認サービス2「丸一日かかっていた安否確認が、システム導入後は3時間で完了 自動送信・連絡ツールの統一が迅速化のポイント」)
よくある質問(FAQ)
工場勤務者にスマートフォンがない場合でも使えますか?
はい、使えます。安否確認サービス2はスマートフォン向けアプリだけでなく、メールやガラケーにも対応しています。メールに記載されたURLをクリックするだけで、パスワードなしで回答できるため、デジタルツールに慣れていない従業員でも回答しやすい仕組みです。社用端末を配布していない工場や現場でも使いやすい仕組みです。
派遣社員や期間従業員も登録できますか?
登録できます。安否確認サービス2はCSVでの一括登録に対応しているため、派遣社員や期間従業員を含む名簿もまとめて管理できます。契約期間が終了した従業員は、「ユーザー一時停止機能」を使えば契約ユーザー数に含めずに管理できます。SmartHRやfreee人事労務などの人事システムとAPI連携しておけば、人員の増減も反映しやすくなります。
夜間・休日に地震が発生した場合も自動で送信されますか?
はい、24時間365日自動で配信されます。気象庁の「地震・津波・特別警報」情報と連動しており、あらかじめ設定した地域や震度の条件を満たした場合に一斉送信されます。夜間や休日に、管理者が手動で操作する必要はありません。なお、誤報を防ぐため、災害発生後10分間は静観する仕様です。
複数拠点・工場を一括管理できますか?
できます。安否確認サービス2は多階層の部署構造に対応しており、拠点・工場・部署ごとに管理できます。「部門限定管理者」を設定すれば、各拠点の総務担当者に、その拠点だけの管理権限を持たせることも可能です。管理者数にも制限がないため、複数工場やグループ会社をまたぐ運用にも向いています。
既存の人事システムと連携できますか?
はい。SmartHR・freee人事労務・kintone・Google Workspace・Microsoft Entra IDなど主要な人事システムとのAPI連携に対応しています。連携していないシステムでも、人事データをCSVで出力できれば取り込みは可能です。専用フォーマットに合わせて作り直さずに取り込めるため、名簿更新の負担を抑えやすくなります。
訓練はどのくらいの頻度で実施するのが適切ですか?
目安は年2回程度です。実際、安否確認サービス2を導入している製造業でも、半年に1回の訓練を行っている企業があります。予約送信機能を使えば、訓練の配信をあらかじめ設定しておけるため、その都度手動で送る必要はありません。訓練を継続することで、従業員の防災意識も保ちやすくなります。
まとめ
製造業の安否確認でまず外せないのは、工場勤務者を含む全員に連絡を届けられることです。あわせて、人の入れ替わりがあっても名簿を無理なく更新できること。この2つがそろっていないと、災害時の安否確認は機能しません。
電話連絡網や既存のチャットツールで回しているケースもありますが、製造業ではそれだけでは足りない場面が出てきます。連絡手段、名簿管理、自動配信、安定稼働、コストまで含めて、自社の運用に合うシステムを見ていくことが大切です。
今回紹介した3つのシステムにも、それぞれ強みがあります。現場の連絡網をどう整えるか、人員変動にどう対応するかを軸に見ていくと、自社に合う選択肢が見えやすくなります。なお、安否確認サービス2は30日間の無料お試しが可能です。まずは実際に使い勝手を確かめてみることをおすすめします。
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編集者:遠藤 香大(えんどう こうだい)
トヨクモ防災タイムズ 編集長 RMCA BCPアドバイザー トヨクモ株式会社で災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案や情報発信に携わる。トヨクモ防災タイムズではBCPや災害対策に関する記事の企画・執筆・編集を担当。専門家との連携や現場視点を取り入れながら、読者に寄り添う防災情報の発信を目指している。