首都直下型地震に備えた帰宅困難者の対策6つ!企業ができる準備とは?

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

あなたの会社では、震災への備えはできていますか?

首都直下型地震はいつ起きてもおかしくなく、多くの帰宅困難者が予想されています。実際に2011年の東日本大震災では、鉄道やバスなど交通機関の麻痺や道路の通行停止によって首都圏で約515万人の帰宅困難者が発生しました。そのため、これから起こる震災で従業員の帰宅が困難となった際にも、社内で待機できるように備えておくことが重要です。

この記事では、平常時に企業が準備できる帰宅困難者対策を紹介します。帰宅困難者対応マニュアルについても説明するため、経営者や役員、経営企画、総務の方は参考にしてください。

首都直下型地震が発生した際に想定される帰宅困難者の数

東京都の発表した「首都直下地震等による東京の被害想定―概要版―」によると、首都直下型地震では、東日本大震災当時の帰宅困難者数と近い、517万人の帰宅困難者が発生すると想定されています。この517万人という数値は、以下の2つを合計したものです。

  • 東京都内に住んでいる人や、東京都市圏内から東京都内に通勤・通学している人のうち、自宅までの距離が遠いために帰宅困難となる人数:約471万人
  • 観光やビジネスの目的で東京都市圏外から東京都内に流入していた人の数:約46万人

つまりこの数値は、地震発生時に東京都内で帰宅困難となる都内居住者・通勤通学者の数に、たまたま東京都内に滞在していた東京都市圏外からの訪問者の数を加えたものなのです。

また、エリア別の予想帰宅困難者数の内訳は、以下のとおりです。

帰宅困難者数
区部3,790,824人
多摩923,490人
(合計)東京都4,714,314人

(参考:首都直下地震等による東京の被害想定―概要版―

当時の様子から学び、帰宅困難者対策マニュアルを製作し、自社の従業員はもちろん、来社中の顧客などを守りましょう。

*滞留者とは、通勤・通学している人々や商用・観光をしている人々のこと

平常時に準備できる6つの帰宅困難者対策

震災時に帰宅困難者の安全を守るには、平常時から帰宅困難者対応マニュアルを作成しておくことが効果的です。といっても、どんなことを想定し、マニュアルを作成したらいいのでしょうか。

平成24年9月10日、首都直下地震 帰宅困難者等対策協議会の最終報告が発表されました。この報告書によると、下記の6つの取り組みを行うことが求められています。

(1)施設内待機方針の策定と従業員への周知


事業所防災計画を参考に、施設内待機に関する計画を定めておきます。その際、他社や行政機関との連携や、地域における帰宅困難者対策の取組への参加なども明記しておきましょう。また、複合ビルの場合は、ビルの管理施設者やほかの入居者と、役割分担を確認します。

行動計画を策定したとしても、いざというときに実践できなければ、意味がありません。被災したときにきちんと行動できるように、行動計画を冊子にまとめて配布するなどして、従業員に周知することも重要です。

(2) 施設内待機のための備蓄について

従業員が社内に一定期間待機する必要が出てきた場合に備えて、施設内に備蓄を用意します。オフィスが複数階にまたがる場合は、エレベーターが停止した場合に備え、備蓄品を分散させておきましょう。また、避難通路を塞ぐと消防法令に違反するため、保管場所に注意が必要です。


一般的に、備蓄量の目安は3日分とされます。共に助け合うことで、まちに訪れた人たちをまもるという、共助の観点から、外部の帰宅困難者(来社中の顧客など)のため、10%程度余分に備蓄することを推奨します。

具体的な量の目安は下記のとおりです。

物資1人あたりに必要な量
1日3リットル
主食1日3食
毛布1枚

水はペットボトル入りの飲料水など、主食はアルファ化米やクラッカー、乾パン、カップ麺など水や湯が使える場合と使えない場合どちらにも備えて用意しておきましょう。停電の可能性もあるため、冬場は毛布など寒さを凌ぐためのグッズも欠かせません。

そのほかにも、簡易トイレや衛生用品、敷物、救急医療薬品類などを用意しておく必要があります。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

女性特有の備蓄品


東日本大震災の被災地では、女性専用のトイレや更衣室設置など、女性特有のニーズに対応していた避難所もありました。男性が中心となって策定する帰宅困難者対策では、女性特有の備えが抜け落ちる可能性もあるため、過去の被災地の事例などを参考に対策をしましょう。。事業所の女性従業員だけではなく、来訪者や受け入れた帰宅困難者の女性への配慮も必要です。

女性特有の備蓄品目や環境の例として下記が挙げられます。緊急時において入手しづらいものもあるため、事前に用意しておきましょう。

  • 生理用品
  • 暖を取れるものを多めに(毛布・ブランケット、靴下等)
  • ウエットティッシュ
  • メイク落とし(ふき取りシートタイプ等)
  • 保湿するもの(化粧水、オールインワンクリーム等)
  • 女性専用の部屋

マニュアル策定段階で女性も参画し積極的に声をあげることにより、女性視点での意見や要望を取り入れることも重要です。

(3)施設の安全確保

東日本大震災では、都内のオフィスの20%で家具の転倒・落下・移動があったといわれます。そのような状況では社内に留まることが難しくなるため、家具の転倒防止対策やガラス飛散防止対策に努めましょう。


災害発生時の建物内の点検個所をあらかじめ定め、自社の環境に合わせたチェックリストを作成しておくことも大切です。また、停電時の対応もマニュアルに盛り込みましょう。高層ビルについては揺れの大きい地震への対策を講じておかなければいけません。

(4)従業員等との安否確認手段の確保と情報周知

従業員との連絡の手段をあらかじめ定めておくとともに、その家族との安否確認手段を周知する必要があります。安否確認をするには、下記のような災害伝言板サービスを複数用いることをおすすめします。

災害伝言板サービスとは、通信の混雑の影響を避けながら、家族や知人との間で安否確認や避難場所の連絡などをスムーズに行えるサービスのことです。災害時に、固定電話、携帯電話、PHSなどの電話番号宛に安否確認(伝言)を音声で録音することで、全国どこでもその音声を確認できます。

  • 首都直下型地震が発生した際に想定される帰宅困難者の数
  • 災害用伝言板、SNS、web171(パケット通信ネットワークを利用)
  • 安否確認システムの導入

毎月1日・15日は災害用伝言板サービスの体験利用が可能です。いざというときに使い方が分からないという事態を防ぐためにも、事前に使い方を確認しておきましょう。

(5) 帰宅ルールの設定

あらかじめ従業員の居住地や家庭事業などを把握し、帰宅者の順序を定めておきます。これは、帰宅時間が集中するのを防ぐための対策です。

また、従業員が無事に帰宅できたかどうかを確認するために、帰宅したことをメールなどで確認することも重要です。従業員を班編成にして、班ごとに決められた連絡要員が定期的に所在確認を実施することも検討しましょう。

(6) 訓練等による定期的な手順の確認

企業は、地震を想定して、年1回以上は避難訓練を実施する必要があります。ただ訓練を行うだけではなく、結果について検証することも重要です。改善点が見つかった場合には、施設内待機に関する計画に反映させましょう。

発災時の帰宅困難者対応


では、実際に地震が発生したとき、どのような行動を取ればよいのでしょうか。災害発生時の支援活動の範囲は、自助と共助の観点から下記のように分けられます。

対象主体災害時の対応
自社従業員など事業者【自助の徹底】
事業所内での待機、宿泊
東京都帰宅困難者対策ハンドブックを活用した対応
滞留者駅周辺滞留者対策推進協議会【共助による支援】
・地域における一時滞在施設の案内/誘導
・情報提供・支援物資の搬送、提供
・一時滞在施設への運営協力 等
■各地域の「滞留者支援ルール」に基づく対応
滞留者事業所保施設【共助による支援】
・滞留者の事業所内への受入、案内
・施設滞在者への飲食料や情報の提供 等
「一時滞在施設運営マニュアル」を活用した対応

(1)自助:自社の従業員を守る

自社にいる従業員を守るためのチェック方法と帰宅困難者の対応例は以下の通りです。

1.安全点検のためのチェックリストに基づき、施設の安全を確認しましょう

  • 周辺の火災状況等を確認し、安全な場所に従業員および来社者を待機させます。安全でない場合は、行政機関からの一時滞在施設や避難場所の情報を基に、案内または誘導。その際、エレベーターに閉じ込められてしまう事故などを防ぐため、危険な場所についても周知しましょう
  • 備蓄場所から備蓄品を運び出し、従業員等に配布します
  • 帰宅しなければならない従業員(要介護者が在宅している・乳幼児を抱える家族など)に対しては、帰宅経路の被害状況や代替輸送手段についての情報提供を行います
  • 事業継続のための要員を除き、可能な範囲の人員で、被災者支援・復旧活動に努めます。これは共助の意味を持ちます。特に災害時要援護者*の保護等は重要です

*災害時要援護者とは、高齢者、障害者、乳幼児、妊婦、外国人及び通学の小中学生など

上で紹介したのはあくまで対応の基本の手順ですので、自社の状況に合わせて考えましょう。外部から災害時要援護者を受け入れる場合は、可能な限り優先的に待機スペースへ誘導するといった配慮を心がける必要があります。また、障害者が必要な支援や配慮を受けるためのヘルプカードを使用する場合があることを知っておきましょう。

(2)共助:顧客・取引先などの滞留者を守る

勤務先にいるときに大地震に遭った場合は、その施設で安全にとどまることが基本です。移動中など屋外で被災した帰宅困難者は、帰宅が可能になるまで待機できる一時滞在施設(最終更新日:平成27年12月1日)を利用することになります。

東京都では、都立施設のほかにも、民間事業者等の協力により、一時滞在施設の確保を進めています。都内で想定される事業者従業員を除く帰宅困難者*の数を92万人と試算していますが、現状は施設が不足しています。

*事業者従業員を除く帰宅困難者とは、通勤・通学している人々や商用・観光をしている人々のこと。「滞留者」と定義

施設の不足により、民間事業者の協力が不可欠な状況となっています。企業が東京都と帰宅困難者の受入の締結をする事で、補助金が交付される制度があります。チェックしてみてはいかがでしょうか。

滞留者の受入で必要な支援活動は以下の6つです。

  1. 滞留者を事業所内へ受け入れ、該当するスペースに誘導する。(受付、誘導)
  2. 施設滞在者へ施設使用時のルールを説明する。(説明)
  3. 施設滞在者へ物資(水・食料・毛布等)を提供する。(物資提供)
  4. 電話やトイレ等のインフラ施設を開放する。(インフラ提供)
  5. 運行情報やリスク情報等、継続的に施設滞在者へ情報を提供する。(情報提供)
  6. 社外状況に応じて施設滞在者の帰宅支援を行う。(帰宅支援)

社内マニュアル作成と参考資料

これまで、帰宅困難者対応マニュアルにはどんな準備が必要で、発災後はどのような支援が必要になるのかを説明してきました。この項目では、実際に帰宅困難者対応マニュアルの制作のポイントをご紹介します。

自助の観点から社内マニュアルを作成する場合

東京都総務局による防災ホームページからダウンロード可能な、帰宅困難者対策ハンドブックを参照するとよいでしょう。30項目からなる帰宅対応者対策チェックリストも用意されているので、マニュアル制作後の確認に活用しましょう。

共助の観点から社内マニュアルを作成する場合

自社が一時滞在施設に該当している場合、港区が発表している、民間事業者向け一時滞在施設運営マニュアルを参照することがおすすめです。。

なお、一時滞在施設に該当していない企業の場合でも、上記東京都帰宅困難者対策ハンドブックに記載されている以下の項目を重視しましょう。

  • 備蓄の10%ルール等、共助の推進
  • 地域の防災活動への参加

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