企業の安否確認、電話連絡はもう古い? BCP担当者が知るべき代替手段と安否確認システムの選び方

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

自然災害や予期せぬ緊急事態が発生したとき、従業員の安全を確保し事業を継続するためには、迅速かつ確実な安否確認が不可欠です。多くの企業で用いられてきた電話による安否確認ですが、災害時には「つながらない」「時間がかかる」といった課題があります。

この記事では、電話による安否確認の有効性を再検証し、メール、SNS、そして安否確認システムといった多様な代替手段を紹介します。そして、企業の防災・BCP担当者が自社に最適な安否確認体制を構築するための具体的な情報を提供します。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

電話で安否確認をする方法

電話で安否確認をする方法は、主に以下の2種類です。

緊急連絡網

緊急連絡網とは誰が、誰に、どういう順番で、どういう方法で連絡するかを定めた表のことです。ツリー状の図で掲載されているものが一般的で、状況把握及び判断と指示をする役職の高い順に名前と電話番号が記載されています。

緊急連絡網を活用する際は、個人情報の保護が重要です。適切に管理して外部への漏洩や内部の悪用がないように注意しなければなりません。

災害伝言ダイヤル(171)

災害伝言ダイヤルは、NTT東日本と西日本が提供する伝言サービスです

震度6以上の地震などの大規模な災害が発生した際に、電話がつながりにくい状況下でも安否確認ができるように設定されています。

災害伝言ダイヤルの利用方法は以下の通りです。

  • 被災地にいる人が「171」へ電話をかける
  • 自分の電話番号をキーとして伝言を録音する
  • 被災地以外にいる人が「171」へ電話をかける
  • 安否を知りたい人の番号をキーとして伝言を再生する

企業が災害伝言ダイヤルを活用したい場合は、従業員に災害伝言ダイヤルの概要と使い方を周知しておく必要があります。また、従業員全員に電話をかける手間がかかるので、社員全員の安否確認には膨大な時間がかかります。

そのため、災害伝言ダイヤルは、不特定多数の方が個人的にそれぞれの安否を知らせることにはとても有効ですが、企業が全従業員の安否を迅速に集計する目的には適していないといえるでしょう。

電話で安否確認をするのは有効か?

電話のみに依存した安否確認は、BCP(事業継続計画)の観点からはあまり有効とはいえません。

緊急時における電話での安否確認は、多くの企業にとって馴染み深い方法かもしれません。しかし、その有効性については、企業の規模や状況、そして何よりも災害の規模によって大きく左右されるのが現実です。

電話で安否確認をするメリット

それでも、電話には以下のようなメリットがあります。

  • 研修不要で誰でも利用できる
  • ツールを購入する費用がかからない
  • 音声から相手の状況や心理状態を把握できる

まず、普段から使っている人が多いため、誰でも使えるツールだということは、電話で安否確認をするメリットです。電話は、プライベートでもビジネスシーンでも使います。電話を使ったことがないという人はほぼおらず、使い方をレクチャーする必要がありません。

また、現在では、ほとんどの人が携帯電話を持っているため、ツールを従業員分購入するコストも省けます。

そして、声や環境音から相手の状態を直接確認できるという点もメリットといえるでしょう。画面の文字では相手の感情はわからないため、これは声で話せる電話ならではのメリットです。

電話で安否確認をするデメリット

一方で、とくに災害時においては以下のようなデメリットが発生します。

  • 連絡・集計に膨大な時間と労力がかかる
  • 回線の輻輳(ふくそう)により繋がりにくくなることがある
  • 相手が電話に応答できない場合がある

まず、人数が多い企業・組織での利用は現実的ではありません。電話で安否確認をするということは一人ひとり連絡しなければならず、連絡の時間と手間がかかるためです。人数が多い企業になると、集計にも多くの労力を要します。

また、災害時は電話がつながりにくくなったり、発信が集中して回線の許容量を越えるリスクもあります。実際、東日本大地震発生時は発信制限が設けられ、電話での連絡が取りづらい状況になりました。

さらに、相手が不在の場合に確認できなかったり、バッテリーが消耗して連絡できなかったりするという場合も起こり得ます。被災や避難をしていると連絡ができない可能性も否定できません。

これらのデメリットを考慮すると、電話連絡は補助的な手段と位置づけ、より確実な安否確認方法を主体とすることが、事業継続においては重要だといえます。

電話以外で安否確認をする方法

ここからは、電話回線が使えないときでも利用可能な安否確認の方法をご紹介します。それぞれ特徴が異なるため、自社にあった適切な方法を選択しましょう。

災害伝言板(web171)

まずご紹介するのは、災害伝言板です。災害伝言板は、記事冒頭で紹介した災害伝言ダイヤル(171)のWebサイト版であり、電話番号をキーとして伝言の登録または閲覧ができます。

震度6弱以上など、大規模な災害が発生した際にアクセスできるようになります。NTT東日本と西日本で、それぞれ利用できる機能が若干異なるため、事前に機能を確認しておきましょう。共通して、上限はあるものの同じ電話番号で複数の伝言を登録できます。

関連記事:災害時に早期に企業の業務再開をはかるには災害用伝言板を利用しよう!

メール

メールも、電話以外に有効な安否確認方法です。メールは、一度に多くの社員へ伝達ができるため連絡の遅れが生じる心配がなく、一人ひとりに連絡をする手間もかかりません。

また、リアルタイムでなくても内容を確認できる点も特徴です。電話は口頭でしか伝えられないため、再度確認することができませんが、メールなら内容を後から確認することもできます。

安否確認の内容のみを簡潔に書く程度なら、文字を打ち込む時間もさほどかからないでしょう。

関連記事:安否確認メールを作成する際のポイント|例文や注意点を解説

SNS

SNSを活用して、安否確認をする方法もあります。近年、SNSは急速に普及して多くの人が何かしらのSNSを利用しています。

SNSで安否確認をするためには、個人のSNSアカウントを企業で把握する必要があります。SNSアカウントはプライベートのものであることから、企業に把握されたくないという従業員もいるでしょう。この場合、安否確認の重要性などを伝えて理解を得なければなりません。

LINE

LINEを安否確認に活用するという方法もあります。LINEも多くの人が利用しているツールのため、新たにアカウントを作ったり操作方法をレクチャーする必要はほぼありません。

LINEでの安否確認は、通常のトーク機能を利用する方法もありますが、「LINE安否確認」機能を活用する方法もあります。

LINEでは、震度6弱以上の大規模な災害が発生した際に、ホームタブに赤枠の「LINE安否確認」が出現します。「LINE安否確認」をタップすることで、友達に状況を共有できるのです。企業でLINEを導入していたり、連絡先を交換していたりする際はおすすめです。

関連記事:企業の安否確認はLINEが有効?他のツールも合わせて紹介!

チャットツール

ChatworkやSlackなどのチャットツールを、安否確認に活用する方法もあります。

平常時の業務でチャットツールを使用しているなら、そのまま利用可能です。普段から使い慣れているため、特に操作性に困ることもないでしょう。

ただし、スレッドの運用や解答ルールを決めておくなどの工夫が必要です。特に、安否確認の連絡が他のメッセージに埋もれてしまわないようにご注意ください。

関連記事:Slackで安否確認を行う方法は?メリットやデメリットを解説

安否確認システム

専用の安否確認システムを活用する方法もあります。安否確認システムとは、事業継続計画(BCP)のために必要なツールで、安否確認をもとに状況の把握・検討ができます。

従業員への適切な指示・情報共有をスムーズにできたり、無事であることや業務に従事できる否かを確認できます。収集した情報は自動で集計されるため、集計の手間もかかりません。

安否確認システムは、経営資源の一つである「ヒト」を守ることをサポートしてくれます。

関連記事:安否確認システムのおすすめ20選!システムの選び方や導入すべき理由も解説

安否確認システムの基本機能

安否確認システムは、ツールごとにさまざま機能が搭載されています。基本的な機能としては、手動一斉送信・自動一斉送信・自動集計・掲示板などです。

ここからは、安否確認システムの基本機能についてそれぞれ詳しくご紹介します。

手動一斉送信

安否確認システムのほとんどに、手動での一斉送信機能が搭載されています。この機能は、緊急事態が発生した際に、担当者の操作で全社員に安否確認や連絡事項を一斉に送信できる機能です。

自動一斉送信

安否確認システムには、自動一斉送信機能も搭載されていることが多い傾向にあります。この機能は、夜間のように手動での送信が難しい状況で災害が発生した場合でも、気象庁の災害情報と連動して自動的に一斉送信できる機能で、安否確認を速やかに行えます。

災害はいつ、どこで発生するかわかりません。責任者が被災したり、不在の際に災害が発生した場合でも、自動一斉送信機能があれば従業員へのスピーディーな対応が可能です。

自動集計

自動集計機能も、ほとんどの安否確認システムに搭載されています。この機能は、一斉送信に対する回答をシステムが集計する機能です。

電話やメールなどで安否確認をする場合、自分たちで情報を集計しなければなりません。従業員数が多くなるほど集計の負担が大きくなり、かなりの労力になります。しかし、安否確認システムを使えば安否情報が自動で集計され、表形式で従業員の安否を可視化できるため状況の把握が容易になります。

掲示板

掲示板機能も、多くの安否確認システムに搭載されています。この機能は、全従業員への支持や情報共有に活用できる機能です。

平常時の連絡ツールとしても利用可能で、全従業員に知らせたい情報を掲載することで、それぞれ個別に連絡をする手間が省けます。

電話利用が可能な安否確認システム3選

安否確認システムは、現在さまざまな企業が提供しています。そのため、いざ導入しようと思ってもどれがよいかわからないと悩む場合もあるでしょう。

そこでここからは、電話利用できる安否確認システム3選をご紹介します。

エマージェンシーコール

▲出典:インフォコム株式会社HP

エマージェンシーコール』は、インフォコムが提供している安否確認システムです。音声通話でのメッセージ送信機能が大きな特徴で、音声ガイダンスの内容を自由に作成することができます。従業員はガイダンスに従って操作するため、緊急事態発生時も迷うことなく利用できます。

メールやスマートフォンアプリなど複数の連絡手段にも対応しているほか、有料オプションとしてLINEとの連携や気象庁との地震情報システムとの連携も可能です。

料金は月額40,000円〜で、別途入会金200,000円が必要です。

Biz安否確認/一斉通報

▲出典:NTTコミュニケーションズ株式会社HP

Biz安否確認/一斉通報』は、NTTコミュニケーションズが提供している安否確認システムです。電話の音声による安否確認が可能で、メールやスマートフォンにも対応しています。その他の主な機能としては、以下の通りです。

  • 自動配信・再配信
  • リアルタイム自動集計
  • 組織階層単位の権限
  • 個人情報非表示
  • 健康管理情報の収集

月額費用は10,400円(10IDまで)ですが、2週間の無料トライアルを試してから導入するとよいでしょう。

安否確認サービス2

安否確認サービス2』は、トヨクモが提供している安否確認システムです。シンプルな操作性やLINE連携など多くの魅力がありますが、他システムとは異なる最大の特徴として、全ユーザーを対象とした一斉訓練を開催しています。この一斉訓練は実施日と時間帯のみを公開し、詳細な開始時刻は管理者にも通知していません。実際の災害と同じように訓練を重ねることで、より適切な行動が可能になります。

初期費用は無料で、月額6,800円から利用できます。リーズナブルでありながら、BCPに必要な機能が多数搭載されているためおすすめです。

安否確認システムを選ぶポイント

安否確認システムは数多くあり、どれがよいのかと迷う方もいるでしょう。最適な安否確認システムを選ぶために、安否確認システム選びの際は以下のポイントを確認しましょう。

  • 対応できる災害の種類
  • 利用可能な連絡手段の種類・数
  • 使いやすさ・操作性
  • 人事システムとの連携可否
  • データセンターの場所(災害時に安定して稼働するか)
  • セキュリティ対策
  • 災害時アクセス急増への対策
  • 導入サポート
  • 無料お試しの有無

選び方のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しております。

安否確認システムを導入して企業の防災対策を始めよう

電話での安否確認も一つの手段ですが、従業員数が多い場合は一人ひとりへの連絡や集計が手間になります。加えて災害時は通信障害のリスクがあり、連絡できなくなる可能性もあります。

そのため、企業の防災対策には、災害時に確実に機能する安否確認システムを導入することがおすすめです。

トヨクモでは『安否確認サービス2』というシステムを提供しています。直感的な操作で従業員の安否確認をできるツールで、災害時にも遅延が起こらず、スムーズな連絡が可能です。

また、30日間の無料お試しは何度でも利用可能です。

企業防災を始めようと考えているときには、是非ともご検討ください。

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編集者:坂田健太(さかた けんた)

トヨクモ株式会社 マーケティング本部 プロモーショングループに所属。防災士。
2021年、トヨクモ株式会社に入社し、災害時の安否確認を自動化する『安否確認サービス2』の導入提案やサポートに従事。現在は、BCP関連のセミナー講師やトヨクモが運営するメディア『みんなのBCP』運営を通して、BCPの重要性や災害対策、企業防災を啓蒙する。

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