エレベーターに閉じ込められた場合の対処法は?ポイントや日頃からの備えについて解説

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遠藤 香大(えんどう こうだい)

エレベーターが稼働しているときに地震が発生すると、利用している人がエレベーター内に閉じ込められることがあります。

この記事では、エレベーター内で地震に遭遇したときの対処法や、やってはいけない行動について解説します。

エレベーターに閉じ込められたら?

地震が発生したとき、エレベーターに閉じ込められる可能性はどの程度なのでしょうか。ここでは、過去に地震が発生した際にエレベーターが停止した割合や、地震時にエレベーターが止まる仕組みについて紹介します。

地震でエレベーターへの閉じ込めが発生する割合

2018年6月に発生した地震においては、震度6弱を記録した大阪府においては55.8%、京都府や奈良県でも半数近くのエレベーターが止まったとされています。近畿地方全体では、346台のエレベーターにおいて閉じ込めが発生しました。国土交通省によると、このときに人身事故は起きていません。

このときの数値を参考にすると、大きな地震が発生した場合、稼働しているエレベーターのうち半分近くが停止し、閉じ込めが発生する可能性があると言えるでしょう。

(参考:国土交通省|エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)

地震時のエレベーターの挙動の仕組み

地震発生時、エレベーターはどのような動きをするのでしょうか。地震の波には「P波」と「S波」があり、基本的には先に発生するのはP波です。地震発生時においてエレベーターは、P波感知器の作動と同時に最寄り階に向かいます。

その後、S波感知器が作動しなければ通常運転へ移行しますが、作動した場合は運転が休止されます。

閉じ込めが発生する可能性があるのはS波感知器が高ガル(強い揺れ)を検知した場合です。このときエレベーターはその場で停止します。

エレベーターで地震に遭遇したら

エレベーターの稼働中に地震が発生した場合、どのように行動すればいいのでしょうか。

ここからは、エレベーター内で地震があったときにするべき行動を5つ紹介します。

もしもの事態にも、慌てずに済むように心がけましょう。

行先階ボタンをすべて押す

地震の揺れを感知したときに最寄り階で停止する機能である「地震時管制運転装置」は、すべてのエレベーターに搭載されているわけではありません。エレベーターによっては地震があっても止まらないものもあります。

エレベーター内で地震が発生したらどこかの階で停止させるために、すべての階数ボタンを押しておきましょう。到着した階でエレベーターが停止し、ドアが開いても慌てず、落ち着いて行動することが重要です。

インターフォンなどで外部に知らせる

停止したままドアが開かなくなってエレベーター内に閉じ込められたときは、自分がエレベーターの中にいることを外部に知らせることが重要です。エレベーターの非常用ボタンを押すか、電波が届いていれば携帯電話で管理会社や家族に知らせましょう。

電波が届かない場合に外に異常を知らせるためには、ホイッスルを持っておくと役立ちます。大声で叫んで知らせるよりも体力を温存できるため、もしもの事態に備えて持っておくといいでしょう。

非常用ボックスの確認

エレベーター内の角に、小さなボックスが設置されていることがあります。これは、エレベーターが停止して閉じ込めにあったときに備えて、水や簡易トイレなどの非常用グッズを収納したボックスです。

もし閉じ込められてしまったときは確認してみましょう。なお、非常用ボックスはすべてのエレベーターに設置されているわけではありません。緊急事態に備えて、自分でも必要最低限の非常用グッズを持ち歩くようにするといいでしょう。

救助を待つ

安全の観点から、エレベーターのドアは内部から開けられないようになっています。非常用ボタンや携帯電話、ホイッスルなどを使って自分がエレベーターに閉じ込められていることを外部に知らせたら、あとは救助を待つしかありません。

体力を消耗しないように、なるべく楽な姿勢で待ちましょう。小さな子どもがいる場合は、玩具や手遊び、スマートフォンなどを使ってなるべく閉じ込められていることから気をそらしてあげるといいでしょう。

停電が発生したとき

エレベーターに閉じ込められているときに、地震に伴う停電が発生する可能性もあります。停電になると、エレベーターでは非常用のバッテリーが作動して非常用照明が点灯するため、突然真っ暗になるということは基本的にはありません。ただし、電力不足によって外部にいるオペレーターと通話ができなくなる場合があります。

その場合は、携帯電話を使って外部と連絡を取り、エレベーター内に閉じ込められていることを伝えましょう。

やってはいけないNG行動

エレベーターに閉じ込められると、パニックになってとにかく出ようとしてしまう人もいるでしょう。

ここからは、エレベーターに閉じ込められたときにやらないほうがいい行動について解説します。やってはいけないことを把握し、冷静に対処しましょう。

ドアを無理やり開ける

エレベーターが停止して中に閉じ込められても、無理やりドアを開けて脱出しようとしてはいけません。無理やりドアを開けた場合、隙間から転落する可能性があるほか、突然エレベーターが動き出した場合は重いドアに挟まれてしまう危険性もあります。

身の安全を守るためにも、エレベーター内で救助を待つことが望ましいと言えます。非常用ボタンがある場合は押し、ない場合は携帯電話やホイッスルなどを使って外部に状況を伝えましょう。

エレベーターの天井から脱出しようとする

エレベーターの天井には外側から鍵がかかっているため、そこから脱出することは不可能です。

また、日本のエレベーターにはそもそも点検口がついていない場合もあります。エレベーターに閉じ込められた場合はすべての階数ボタンを押し、ドアが開いて出られるようになるまで体力を消耗しないように待ちます。

ドラマや映画などで見られるエレベーターの天井から脱出する方法は、あくまでもフィクションということを理解しておきましょう。

閉じ込めに遭遇した場合の情報収集方法

エレベーターに閉じ込められたときは、脱出しようとせず周辺状況を確認しましょう。情報を集めておくと、脱出後の避難経路確保に役立ちます。

ここからは、エレベーター内で利用できる情報収集方法について紹介します。

動画配信サイトのニュース

災害発生時におけるリアルタイムの情報収集に欠かせないものが、動画配信サイトのニュースです。BSC24やYouTubeなど配信サイトのニュースはスマートフォンからも閲覧できるため、災害状況を逐一確認できます。

とくにBSC24はニコニコ生放送やYouTube、Ustreamなどのさまざまなライブ配信サービスで情報を配信しているため、利用しやすいと言えます。災害が発生する前からニュースが見られるサイトを調べておき、すぐアクセスできるようにしておくといいでしょう。

XなどのSNS

X(旧Twitter)やLINEなどのSNSも情報収集先としておすすめです。平時から災害時に情報を配信するアカウントをフォローしておくと、災害発生時に調べなくてもタイムラインから情報が閲覧できるため便利です。

また、電話が混線して救助を求められないときには、SNSから救助を要請することもできます。ただし、救助要請の方法や内容が適切でなければ助けが来ない可能性もあるため、災害が発生する前に適切な救助要請の方法を確認しておきましょう。

日頃からできるエレベーターでの防災

エレベーターに閉じ込められたときを想定して、日頃からやっておけることはあるでしょうか。

ここからは、エレベーターの停止や閉じ込めに備えた防災方法について紹介します。災害が起きる前から気を付けておきましょう。

なるべく階段を使う

地震が発生すると、エレベーターが止まって閉じ込められる可能性は避けられません。どうしてもエレベーターでないと難しい、という場合でなければ、できるだけ階段を使うといいでしょう。

日頃から階段を使って移動できるようにしておけば、定期点検日に階段を使う苦痛も、軽く感じられます。

また、地震発生時はエレベーターよりも階段で避難する可能性が高くなります。避難経路となる階段に通路を妨害するものがないか確認しておくという意味でも、ときどき階段を使うといいでしょう。

エレベーターの中に非常用ボックスがあるか確認する

エレベーター内の非常用ボックスには、携帯トイレや救急セット、飲料水などが入っています。閉じ込めが起こった場合に備えて、普段使うエレベーターにボックスがあるか確認しておきましょう。

防災訓練の際には中身を確認できることがあるため、機会があれば何が入っているのかを把握しておきます。普段利用するエレベーターに非常用ボックスがない場合は、飲料水やホイッスルなど、必要最低限の非常用グッズを持ち歩いておくと非常時にも対応できます。

緊急連絡手段を確保する

災害時に備えて、緊急連絡手段を確保しておきましょう。SNSやスカイプなどは緊急連絡手段になる場合があります。X(旧Twitter)やLINEなどは情報収集の手段にもなるため、いざというときのためにスマートフォンにインストールしておくと非常時に役立ちます。

また、非常事態を伝えるためには安否確認システムを活用することもおすすめです。会社の安否確認システムを利用すれば閉じ込めを知らせ、対処を求めることもできます。

エレベーターの閉じ込めでよくある質問

エレベーターに閉じ込められると、どうしても不安になります。ここからは、エレベーターの閉じ込めについて疑問を持たれやすいことを解説します。

正しい知識を身に着け、落ち着いてエレベーターが動くのを待ちましょう。

Q:落下しない?

エレベーターは、設定された耐荷重容量の約10倍程度の重量に耐えられるよう、複数本のワイヤーロープで支えられています。このほか、安全装置によって落下が防止されるように設計されているため、停止したエレベーターが落下する危険性はほぼありません。

万が一落下した場合は、エレベーターの中央で両手両足を広げ仰向けになりましょう。

地震が発生したらどうなる?

2009年9月以降に設置されたエレベーターには、揺れを検知する地震時管制運転装置の設置が義務付けられています。

この装置が設置されているエレベーターは、揺れが一定の基準を超えると最寄りの階に停止します。

Q:ドアを開けて脱出を試みても大丈夫?

エレベーターが止まったとき、無理やりドアを開けて脱出しようとすることは危険です。

突然エレベーターが動き出す場合もあるため、自然にエレベーターが動いてドアがあくまで、体力を消耗しないように待ちましょう。

Q:天井は開く?

エレベーターの天井は通常、開けることができません。無理に開けようとすることは、危険を伴うため試してはいけません。エレベーターが停止したら、閉じ込められていることを外部に知らせて助けを待ちましょう。

Q:酸欠にならない?

エレベーターは完全に密閉されているということはなく、ある程度の空気の流れがあります。そのため、閉じ込められても酸欠にはなりません。

閉じ込められてもパニックにならないようにし、落ち着いて助けを待ちましょう。

Q:救助されるまでの時間は?

エレベーターが止まってから救助されるまでの時間は、通常は数分~数十分ほどです。ただし、大災害では平均80分かかると言われており、最大で5時間以上かかった場合もあります。閉じ込めに備えて、飲料水やホイッスルを持ち歩いておくといいでしょう。

危険な目に合っても慌てずに冷静に対応をしましょう!

エレベーターに閉じ込められたら、外部に知らせて助けを待ちましょう。

緊急時用の連絡手段としては、安否確認システムの利用がおすすめです。事故を未然に防ぎ、いざというときスムーズに対応するためには、BCP(事業継続計画)を策定しておくと効果的です。

災害時の脱出方法を含めたBCPを策定しておくと、エレベーターに閉じ込められるという事態の発生を減らせる可能性があります。

BCPの策定方法については、以下でも解説しているため、是非参考にしてください。

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